ねつせた!が取材 使うことで地域応援になる「せたがやPay」ってどんなもの?
2021年2月に提供が開始された、世田谷を応援するキャッシュレス決済、「せたがやPay」をご存知ですか?
若者の間でも急速に広がりつつあるキャッシュレス決済ですが、様々なキャッシュレスの決済という手段の中で、世田谷区に限ったデジタル地域通貨「せたがやPay」はどのような意図で開発されたのでしょう。また、どのような進化を遂げていくのでしょう。2021年6月15日、ねつせた!メンバーは、開発・運営に携わっている4名の方々にお話をお聞きしました。
導入の目的・立ち上げの背景
すず はじめに「せたがやPay」導入の背景について教えてください。
S.Mさん 新型コロナウイルスの感染症拡大で、政府が非接触の決済を進めていこうとしていることを背景に、世田谷区でも紙の商品券のデジタル化の話が出始めていました。コロナ禍で商店街に影響もありましたし、どう救っていくか、ということから議論が始まりました。地域のなかでお金を回していくような経済効果を出せたらいいなと思い、世田谷区商店街連合会が中心となって区内で利用できるキャッシュレス決済の導入を進めていくことに。システムの提供については、飛騨高山の「さるぼぼコイン」や木更津の「アクアコイン」の開発で既に実績をお持ちだったフィノバレーさんにお願いしました。「さるぼぼコイン」は、デジタル地域通貨のなかでは成功モデルとなっていますし。
K.Dさん そこでフィノバレーのシステムを提供させてもらいました。デジタルの地域通貨はサスティナブルなまちづくりには欠かせないものだと考えています。
すず 今年の2月に開始されたばかりですが、現在の加盟店数はどのくらいですか?また、どのような店舗が加盟されているのでしょうか?
F.Fさん 現在加盟店数は約1,000店舗で、リリース時は430店舗前後でしたから半年かけて倍以上になりました。飲食店さんがやはり一番多く、内訳としては「食べる」というカテゴリに含まれるお店が3割、「買う」のお店が3割くらいです。
すず 半年かけて倍というのはすごいですね。
S.Mさん 加盟店さんの数が増えるのは嬉しいですね。この仕組みが世田谷に根ざしていくためには、世田谷を応援したいという想いを持って加盟してもらうことのほうが重要だと考えています。
F.Fさん まだまだ加盟店を増やすという課題はもちろんありますが実際に使ってもらえているかも重要ですね。現在約8割が1回以上の決済利用があるアクティブな利用店舗。「せたがやPayを導入した結果、実際に利用してもらっているのか」という意味では順調だと捉えています。
せたがやPayの経済の仕組み
すず 私は大学で経済学を学んでいるのですが、「せたがやPay」の経済モデルの仕組みについて教えてください。
S.Mさん 立ち上げ時は世田谷区の助成金をポイント還元キャンペーンの原資として活用し、参加加盟店と利用者を増やすことで、区内でお金が流動するようにと設計しました。次のフェーズでは大型店から手数料を頂き、それをキャッシュバックの原資にしていく予定です。
K.Dさん 区内でお金を流動させようとするとき、地域の商品券であれば世田谷区内で確実に消費してもらえます。また、クレジットカードなどの決済手段だと、手数料などが域外へお金を流出させる機会となってしまいますがそれを防ぐこともできます。この商品券の特性に加えて、「せたがやPay」には「有効期限」という概念があります。期限があることで貯蓄に回すのではなく、早く使ってもらえるようになります。これが、地域のなかでお金を早く流動させる仕組みです。
F.Fさん 次のフェーズとして、まだ機能は実装できていませんが、事業者間の送金も可能になればいいなと考えています。例えば地元のお店が地元の八百屋さんで食材を仕入れた金額を「せたがやPay」の機能を使って送金するといった活用ができるように世田谷の中で経済を回していければと考えています。
すず なるほど。地域でお金を流動させていくためには、これからどんな店舗を増やしていきたいとお考えですか。
S.Mさん メジャーなデジタル決済は、チェーン店で多く採用されていると思いますが、「せたがやPay」はむしろ地域の小さな商店で使えるようにしていきたいと考えています。楽しみながら使ってもらえるように、レアなところを中心に開拓を進めていきたいです。
「せたがやPay」の特長・メリット・今後の展望
さや 「せたがやPay」は一言でいうとどのような特長がありますか?
S.Mさん まず、「お店の導入コストがゼロで手続きが簡単」なことがあります。QRコードを置いてもらうだけなので、オーナーさんが高齢であっても参加しやすいのはメリットです。また、世田谷区内でしか使えない地域のデジタル通貨なので、応援したいお店で活用できるという特長もあります。
さや 「せたがやPay」を使うと、地域にはどのようなメリットが生まれますか?
K.Dさん 「せたがやPay」のアプリを使うと、近くのお店を探す機能があるので、位置情報で「自分が今まで知らなかった地元のお店を発掘すること」ができるようになります。お店では、プッシュ通知(アプリからのお知らせ機能)を使って情報発信もでき宣伝のツールとしても活用できます。
F.Fさん 実際に「せたがやpay」を利用したくてやってきた人が常連さんになってくれたというエピソードもありました。新しいお客さんの来店はお店にとっても嬉しい効果ですよね。
千歳烏山のレストランでは「今日のお客さん、全部せたがやPayでした!」という報告も。キャンペーンをきっかけにお店の集客につながり、収益にもつながる。そういった支援になることもあります。
さや 地元のお店にも、利用者にもメリットがあるのですね。ところで「せたがやPay」の決済音には子どもの声が使われていますよね。
F.Fさん そうなんです!せたがやPayのプラットフォームには自由に決済音を入れることができます。、世田谷区のまちのイメージとして子育てしやすいイメージがあったので、小さなお子さんの声がよいのではないかと。子育て中の人たちにも使ってもらいたいという願いやせたがやPayへの親近感を持ってもらいたいという想いも込めて、実際にお子さんたちに協力してもらって「が~やん!」という声を録音しました。「が~やん」というのは、「せたがやPay」のアイコンのもとになった、世田谷区商店街連合会のてんとう虫のキャラクターです。
さや 癒される決済音だと思いました!世田谷区らしい感じがしてとてもよいですね。
F.Fさん アンケートでも「決済音がかわいいですね!」というコメントが返ってきています。
さや メリットも多い「せたがやPay」ですが、普及していく上での課題もあるのではないかと思いますがどうですか?
K.Dさん そうですね。こうした決済方法に慣れていない方にどう使ってもらうかは1番の課題です。QRコード決済は普及してきていますが、抵抗がある人も多いです。そうした人にどう理解を広めていったらよいか今も試行錯誤中です。
S.Mさん 年代別でみると、70代と20代でアプリの導入割合が同じくらいだったんです。若い人には「せたがやPay」と大手キャッシュレスとの違いはまだ理解されていないと思いました。「せたがやPay」を使うこと自体が地元の応援になっているということをどのように伝えていくか、これは課題ですね。最初は「キャッシュバックがあってお得だから使ってみよう!」でよいのですが、単なる決済手段というだけでなく、意識的に地域で使ってもらえるようにしていきたいです。
さや 今後は「せたがやPay」のどんなところを強みにして拡大していこうとお考えですか?
T.Yさん 区の事業でいうと、ボランティアに参加した人に紙の商品券をプレゼントすることがありますが、これを「せたがやPay」でのポイント付与に変えていきたい。そうすることで活用のきっかけを広げることができると考えています。
S.Mさん ボランティアポイントを付与し、それを寄付に回すなどができれば公助の循環もおきてきますね。
K.Dさん ちなみに、木更津の「アクアコイン」には歩数計の機能があり、健康推進課の方と木更津に住まう方への健康推進を支援しています。具体的には1日8000歩、歩いた人には、1ポイント進呈しています。1日8,000歩の指標は健康促進に良いとされている歩数で、ポイントが付与されることで、自身の運動への気づきや目標達成への成果として根付いて欲しいという想いがあります。今年の始めには、ウォーキングチャレンジと言って、みんなで3億8千万歩まで到達したら、子ども食堂に寄付しようというチャレンジ企画を実施しました。。キャッシュレス決済だとお金の流れしかないけれど、こういう機能と企画を合わせることができるのも強みです。歩数計の機能は「せたがやPay」にも入っていく予定ですので楽しみにしてください。
若者から見た、せたがやPay
れいり 「せたがやPay」のターゲット層について教えてください。
F.Fさん もちろんすべての世代の人に使って欲しいですが、とりわけ子育て層につかってもらいたいという思いはあります。
S.Mさん 1.5万人くらいのユーザーのうちの10%の回答率の中のスコアを見ると、メインの利用者層は30代〜50代の方です。想定より20代の利用が少ないのですが、高齢の方の利用が多かったことは嬉しい驚きでした。高齢の方も頑張って使って下さっています。
れいり 20代の利用が少ないのにはどのような理由が考えられますか?
K.Dさん 若い人が行きたいお店で導入されていなかったこと、コロナ禍で外に出る機会が減ったため、街頭や鉄道の掲示物など周知のための施策が目にとまらなかったことが考えられます。チラシのポストインなども若い方の目にはとまりづらかったと思われます。一方、高齢の方にとっては、身近な商品券がデジタル化することが「せたがやPay」の認知促進につながったのだと思います。高齢の方は地元の商店から聞く機会もあったと思います。
S.Mさん 皆さんはプレミアム商品券があることをご存知でしたか?
れいり 私は家で上限額の10万円分の商品券を購入していて、「せたがやPay」のことも区報を読んで知っていました。最初は30%還元だったので家族全員でアプリを入れました。
れいり 商品券と「せたがやPay」の違いはありますか?また、併用して使えますか?
K.Dさん 紙の商品券は500円単位ですが、「せたがやPay」を使えば1円単位で使えます。印刷費がかからない上、アプリから便利でお得な情報がもらえるため利点が多いです。
S.Mさん 商品券と「せたがやPay」の併用は、お店によっては対応できないところもありますが、同時に使えるようになっています。
れいり 若い世代の人にも使ってもらうために、「せたがやPay」のおすすめの活用方法などはありますか?
F.Fさん 私は、せたPayアプリのGPS機能をつかって、近くのまだ行ったことのないお店探しをしています。また、キャンペーンで貯めたポイントで好きなものを買っています。飲食店の30%還元キャンペーンのときは、3万円の飲食の決済をすると9000円分のポイントがもらえるので、高い化粧品を買いました(笑)。キャンペーンのときに大きな金額を入れておいて、お得にお買い物をするとよいと思います。
れいり 私も今度やってみようと思います!
れいり 「せたがやPay」のSNSはとても見やすいですが、心がけていることはありますか。
F.Fさん ありがとうございます!Twitterは、キャラ付けを考えたとき、親近感があり、加盟店やユーザーとのつながりや温かみを感じられるもの、世田谷を応援する想いが伝わるものにしようと思いました。
2021年、年明けにSNSをスタートさせて、キャンペーンの内容、30%の還元なども説明を丁寧に行ない、実際に返信できそうなものにはリプライしていきました。Instagramは加盟店の紹介をメインに、写真が並ぶのでマガジンぽい使い方ができると考えました。世田谷区にはおしゃれなお店がたくさんあるので、ちょっと行ってみたいなと思ってもらえるような発信を心がけています。
また、実際にお店に行って、おすすめや、「せたがやPay」を導入してみてどうですか?と話をしながら記事をあげています。現在はお店ができるまでのこだわりや、なぜここにお店をだしたのかなど深掘りもしています。
れいり 福島さんのSNSに対するお話を伺い、私たちも参考にしながら、SNSでの発信をより一層頑張っていこうと思いました。
れいり 今回の取材にあたり、ねつせた!メンバーの意見を聞いてきたのでご紹介します。
S.Mさん ありがとうございます。ユーザー同士の送金は今検討しているところです。また、クーポンはどうやって実施しようかと検討している段階です。現在、チャージ方法はセブン銀行のATMでチャージする形ですので、チャージ金額を少額にするのは制約があり、現状は難しいところがありますが、銀行口座との連携は他のところで事例もあり、これから考えていきたいです。
れいり 最後に、ねつせた!で協力できることはありますか。
F.Fさん まず使ってみていただいて、よかったらお友だちや周囲の人に紹介してもらえると嬉しいです。若者目線の記事を発信されているのは魅力的なので、お店の取材にも一緒に行けたらいいなと思いました。記事作りなど何かしら一緒にできたらいいですね。
取材後記
すず 現在大学のゼミでも世田谷について絡めたテーマで研究をしているのですが、今回の取材で世田谷のために、という想いの強さに触れ、そういった方々の思いがあって良い地域が出来ていくことを感慨深く思いました。また、経済の仕組みについても、より具体的に想像することができたため、これからの経済学の学習に活かせると思いますし、何よりも知識を身につけることができて嬉しいです。ありがとうございました。
さや 今回取材させていただき、「せたがやPay」は地域にとても密着していて、地域でのお金の循環だけでなく、お店と住民の方々とを繋いで新たな関係性を生み出す大きな存在になっているということをとても感じました。今後の「せたがやPay」のさらなる取り組みが楽しみです!
れいり 普段世田谷区商品券を使っている為、なぜ「せたがやPay」が必要なのかずっと不思議に思っていました。今回の取材で制作した方々からその答えを聞けて、とても勉強になりました。これから「せたがやPay」を使って世田谷区の小さなお店を応援しようと思いました。
せたがやPay 公式サイト
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