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略すことが苦手だがこれ自体がもう省略

省略することが得意ではない。なんだか馴れ馴れしい感じがするし、得意気な感じもする。言葉としても汚い、とまでは言わないまでも、綺麗ではないと思うし、何となく、正面から向き合っているようにも思えない。

他人が省略する分には、問題ない。その方が言いやすいのだろうし、早いのだろう。理にかなっているし、真っ当だと思う。我が子でもない限り、言葉遣いを注意することはないし、残念ながらまだ我が子ができる予定はない。

とは言っても、ぼくも全く省略しないわけでもないはずで、知らず知らずの内にカタカナ語を使っているように、気が付いたら省略の世界に浸かっているのだろう。これを機に、少し整理してみる。

省略できないもの。
タクシーをタク。警察をポリ。ゲームセンターをゲーセン。ガソリンスタンドをスタンド。(ガソスタか?)前付き合っていた方を元カノ、元カレ。田園都市線をでんと。ロングバケーションをロンバケ。世界の中心で愛を叫ぶをせかちゅう。ありがとうございますをあざーす。

まだまだありそうな気がするが、ひとまず思い浮かんだのはこの程度。

では、省略できるもの。
ファミレス。UFJ。USJ。キムタク。マクド。

これぐらいか。

省略できるものを仔細に確認しても、共通項は見当たらない。一体何が違うのだろうか。一体何がぼくを省略から遠ざけているのだろうか。

おそらくではあるが、見当はついている。理由は、省略できるものの背後に潜む、ドヤ感である。少し、記してみる。

タク。これはタクシーに頻繁に乗っているから省略するわけで、いかにも富裕層、もしくは1秒でも時間が惜しい忙しい自分が表現されている。あと、何となく「呼びつけている」という偉そうな雰囲気がつきまとう。はい、ドヤ。

ポリ。これは明らかに昔お世話になったことがあるという意味だろう。「昔はヤンチャしてたからな」とほぼ同義。タクと同じで、これもちょっと上から目線を感じる。真面目に生活していたら、ポリと呼ぶことはまずありえないと思うのだがどうだろう。たとえ警察のお世話になったとしても、警察は警察。これもドヤ。

ゲーセン。ほぼ同上。真面目ではなかった自分へ。ドヤ。

元カノ。元カレ。これは、こう言う話が出る時のシチュエーションにマウント感を強く感じる。おそらく、過去の人を褒めるような話で登場する訳ではないことから、自分は悪くない、相手が問題だった、というメッセージが込められがちではないか。つまり自分は上。自分は可愛い。ドヤドヤ。

でんと。田園都市線が東京でどのようなイメージを持つか、分かりきったことだ。これも富裕層ドヤ。金持ちドヤ。リッチドヤ。

ロンバケ。一世を風靡した国民的ラブストーリーだし、良いのでは?いやいやよくない。何となく、自分たちをロンバケ出演者に投影していそうである。きっとスーパーボール、投げたんだろうな。トレンディドヤ。ドラマではなく、長期休暇をロンバケと言うのならそれは逆に面白いが。

せかちゅう。これもほぼ同上。さらに言うと、これは、小説やドラマとしては、やや長く、そして小っ恥ずかしいほど熱い、正式なタイトルこそ、この作品の魅力のはず。だから、それを省略することは、その魅力を半減どころか、一掃してしまう。何ともったいないことか。世界のドヤ。

あざーす。感謝の気持ちを丁寧に表現するのであれば、省略する訳がない。これも年下や格下相手へに限った配慮のない言葉だ。音にしても文字にしてもどうしても気に食わない。品がないなと思う。下品ドヤ。

と、思うままに書いてはみたが、冒頭に記してように、他人が省略することをとやかく言うつもりは毛頭ない。あくまで個人的に、上記理由で省略ができないということだ。

ただし、

ファミレス。UFJ。USJ。キムタク。マクド。

そして、「略す」という省略は除く。

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