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蝶ヶ岳 - バタフライエフェクト / 0629

今日の良

・今日は絶対に山に行きたかったが、梅雨真っ只中、正直無理なんだろうなと思っていた。でも、これを逃すと7月中旬までジュンとの登山はないから、絶対行きたくて。毎日毎日、平日必死に働いて、土曜日に山に行くことで、やっと全身で息ができるような。そんな日々なので、そういう意味でもやっぱり今週は山に行きたくて。天気は微妙かもだったけど、結局決行することにした。片道4時間、夜のうちにでて、登山口で車中泊。どうしても思い出される2年前の鳥海山の記憶。夜のうちに車を長距離走らせて、静かな道を爆音カラオケしながら走る。そんなふうにしたかったはずなのに、ジュンと会うのが2週間空いてしまったもんだから、2週間分の話が溜まっていて、けっこう悪口に花が咲いてしまって、2時間ぐらい、誰にも聞かせられないような話を話していた。
たった2週間で、けっこういろんなことが身の回りで起こるものだ、と思った。毎日毎週新しい出会いとか気づきの連続で生きられているんだなと思うし、その分成長しているんだと思える。その短い期間での身の回りの出来事を振り返り、一旦アウトプットすることでメタ認知する。近況報告で、日常にしおりが挟まれる。ジュンと話すと、同じ日常の繰り返しでは決してないということが改めて分かって、辛いことがあってもそこは嬉しいなと思う。

・今日は車の中で、ディズニーの音楽を流しながら走った。ポカホンタスの曲の歌詞に「風の絵の具は何色」と歌っているものがあって、山の景色を思い出した。

・登山口に着いたら、駐車場はけっこう広くて静かに車中泊している車がたくさんいた。山は眠っていた。トイレに行ったら、たくさん蛾がいて、かなり嫌だった。

・眠る時、車の天井に当たる雨の音を聞きながら眠った。雨の音は落ち着くものだと思っていたけど、案外気になって入眠しづらいものだな、と思っているうちに気づいたら寝ていた。全部の雨音が聞こえるわけじゃなくて、たまに落ちる大粒の雫だけが鮮明に聞こえているように感じた。誰かが屋根の上にのぼって、コツコツと天井を叩いていても気づかないな、と思うと怖くなって、ドアの鍵を閉め忘れていたことを思い出し、慌てて閉めた。

・朝4時半にアラームがなった時には、まだかなり雨が降っていたので、もう少し待とうかと大義名分を得て、また少し寝た。

・5時には空が明るくなっていて、雨も上がっていたので眠かったが起きた。車中泊の皆さん同じタイミングで起きたようで、トイレに列ができていた。トイレに並んでいる間は、朝になっても蛾がたくさん飛んでいて、嫌だった。今回歯磨きを忘れてしまってとても後悔。次は忘れないぞ…

・この時期の北アルプスの気温の相場が分からず、半袖短パンで来てしまっていたので、ジュンが長袖長ズボンを貸してくれた。ズボンのウエストが緩くてうなっていたら、ジュンが紐で縛ってぴったりなサイズにしてくれて、創意工夫が素晴らしく、はき心地もよくなりテンションが上がった。おかげで快適だった。

・隣の車に大阪から来ているらしい若者グループがいて、朝からとても元気にはしゃいでいた。同じタイミングで登り始めたから何度か会ったけど、パーティの1人が片手に大きなスイカを持っており、上まで運ぶのはかなり大変そうだった。上で食べたらさぞかし美味しいだろうな。

・川が増水して最大出力って感じの水量だった。雨水で水が増えているはずなのに、ものすごく透き通っていてとても綺麗だった。耳元で大声じゃないと会話できないくらいの力強い水音、あの音が、登山口近くのあの場所が、日常と山の世界を分断しているしているように感じて、ここから先は平日に邪魔されない、私たちの週末なんだ、って思うことができた。

・YAMAPで山の形を見ると、ずっと一定ののぼりって感じだったので覚悟していたけど、実際にはけっこうこまめに5段ずつくらいの階段があって大変歩きやすかったと思う。ガシガシずっと足を上げなきゃいけない感じじゃないから、距離と傾斜の割に楽に歩けたと思う。ジュンが、「思っていたより登山道が綺麗だ」と言っていた。確かに、道も広いし歩きやすかったと思う。

・ゴジラの木、SNSで見ていた通りのゴジラの形だった。見た通りすぎて、シンガポールでマーライオン見た時と同じ気持ちになった。登りの時は人がたくさんいてゆっくり写真も撮れなかったので、割とあっさり通り過ぎることにした。
ゴジラみたいな木だけ「ゴジラみたいな木」って名前つけられてて他の木がかわいそうなので、⚪︎⚪︎っぽい木を見つける選手権したが、私は掲げた割に全然例えがでてこなくて、ジュンの圧勝だった。選手権始まった直後に「見て!うんちみたいな木…」って言ったのが最後だった。最低。その後うんちみたいな木の実落ちてるのを「うんちみたいだな…」と思いながら見つめてたら、ジュンに「うんちみたいだなって思ってるでしょ」と当てられて恥ずかしくなった。

・今日はガブリチュウを買ってみたのだけど、とても美味しくてハマりそうだった。ガブリチュウって一本だから、口の中がガブリチュウでいっぱいになるところがいい。ハイチュウと味は一緒だけど、大人だからハイチュウを一気に5個とか食べられないので、公式的にハイチュウ一気食いできる大人に優しいおやつだった。
ジュンはこの時、カリカリ梅を耐えて「うめぇ〜」って言ってニヤリとドヤ顔をしていた。動画撮って欲しかったらしく何回か言っていたが、結局撮らなかったな。

・登りが長いので、黙々と登る時間が長く、また思考がぐるぐる巡った。何を考えていたか、覚えていないけど、実はこういう時間が自分と向き合う時間になっていて、無意識的に心の成長を助けてるんじゃないか、とか思ったりして。これがバタフライエフェクト、だったりして。(おしゃれなこと言いたくて無理やり言ってるだけかも)

・ジュンが高山植物を調べてくれているから、1個ずつ1個ずつ着実にわかる名前が増えてきていて、説明してくれるので、私も追いかけるように勝手に花の名前を覚えていっている。イワカガミとサンカヨウは完全にわかるようになって、楽しい。
今日透き通ったサンカヨウを初めてみたけれど、想像以上にガラスのようで可愛かった。まだ咲きたての、丸っこいやつが特にガラス細工みがある。長崎で作った、ポッペン的な。サンカヨウって、ガラスみたいな繊細な花だから、チングルマみたいに葉や茎も細く小さいのかと思っていたら、めちゃくちゃデカくて、意外と肉食系の花なんだ…と驚いた。ひとかぶのサンカヨウがとるスペースがなかなか大きく、なんか図々しかった。
登山客、特に女性がみんなサンカヨウに夢中になっていて、ジュンが話しているのを聞いて「サンカヨウっていうんですね!!」と名前を知れて喜んでいた方がいたんだけど、うちらがその場を後にした後、後続の登山客に「サンカヨウって言うらしいですよ!!」と情報を伝言ゲームしている声が聞こえてきて、大勢の役に立ててよかったなと思った。

・雨が降ったり止んだり、なかなか晴れないご機嫌斜めな空だった。天気予報を信じ、山頂で晴れることを信じて登った。

・最近山でポテチを一袋食べるのがマイブーム。今日は韓国海苔のポテチを持って行ったが、やはりピザポテトに敵うポテチはこの世にないかもしれないという気持ちが濃厚になった。

・10時過ぎに、山頂手前でやっと青空が見えた時には、嬉しかった!!!!ずっと真っ白だったから、青空が懐かしかった。完全に、ここまで登ってきたご褒美だった。
稜線らしい稜線は、山頂まではほとんどなく、登りきったところでやっとハイマツが現れ森林限界を抜けて赤い屋根の小屋が見えた。小屋が見えたところで、真っ白の隙間からちょうど、奥の緑色の山肌が一筋、雲が裂けたみたいに見え初めて、その穴がだんだん広がって、少しずつ見える範囲が広がっていった。その景色が。その景色が私はすごくすごく嬉しくて。頭の中にそのときの映像がこびりついている。
ずーっと白い中森を歩いてきたけど、私がいたのはこんな場所だったんだ、って思い出したのと、なんかずっと、ずっと何も見えなかったから、見えた景色はたった一部でも、それが私にとってはすごく特別だった。スパイダーバースとか、ドクターストレンジが、次元を移動する時のあれ。今まで登ってきた場所と、山頂でついた場所は、別の場所なんだっていうふうに思えたんだ。
泣きそうだ、って言ったら、ジュンは「このくらいで泣いたらダメなんだよ」って言ってて、もっとすごい景色を見せたいよって心からのギブの気持ちで言ってくれたのだけど、それは違うんだ、そうじゃないんだ、と思っていた。
私は私の登山のその瞬間にストーリーを、物語を感じていて、だから感動するんだよ、私がどこで1番感動するかは、私の心が決めるんだよ、と思った。(が、その時はうまく言葉にできなくて今に至る)
私はジュンと、ここまで曇りの中登ってきたことがすごく特別で、大事なことだとで、だからこんな曇りの3ミリの隙間に感動できるんだよ。ヘリコプターで運ばれて、絶景を見るのでは得られない体験が、登山にはあるよね。ジュンは私よりもたくさん山に行っていて、忘れられない景色をたくさんみてきていると思うけど、過去の山行とか関係なく、でも今この瞬間私と、ただここに山があって、私たちがここに存在しているだけの瞬間を、噛み締めたい、噛み締めてほしいと思った。だから北アルプスだろうが地元の山だろうが、ここに来るまでにどんな思いをしているかとか、最近日常で悩んでいることがあって、そのアンサーがこの景色だったとか、そういう体験が、山にはあるから。だから、だからどの景色で感動するかは、その時の私の心が決めたいんだよ。
だから私は、日常もやめたくないし、山もやめたくない。日々も山も、歩き続けて、日常の小さなモヤモヤを、山ですべて吹き飛ばしたい。全部週末の山につながっている。あれ、これってバタフライエフェクト?(言いたいだけ)

・小屋に行って、憧れの蝶の形のピンバッチを買った。思えば山を始めた時に、このピンバッチをSNSでみて、「これが欲しい!蝶ヶ岳登ってみたい!」ってジュンに言ったっけ。でもまだ早い的な感じでチェ、と思ったと記憶がある。改めて、ここに来られて、このバッチをゲットできたことが嬉しくなった。ジムリーダー倒したみたいな気持ち。手ぬぐいが売っていて、可愛かったし、今日の記憶はなんだか特別に残る気がしたから、買っておいた。

・カップラーメンを食べた。今日お湯を沸かす機械は小ぶりなやつだったので、1人分ずつしかお湯が沸かせなかった。ジュンは当たり前のようにいつも私のからお湯を入れてくれるので、もはや遠慮することもなく、私のやつからお湯を入れてもらった。いつもありがとう。
朝ごはん用に、おにぎりに煮卵が入っている豪華なやつを買っていたのに朝食べられなかったんだけど、登りながら「ラーメンの締めにあれを入れたら美味しそうだぞ、しめしめ」と企んでいたが、カップラーメンの味がトムヤムクンだったので合うわけがなく、口の中でトムヤムクンラーメンと煮卵おにぎりの別々の味がした。ラーメンの残り汁におにぎりを入れるという行為自体に満足感を得ていた。

・ジュンが「今日は嬉しいものがあるよ」と、食後のデザートにキウイをむいてくれた。そういえば、昨日の夜集合した時に「ちょっと待ってて」とジュンがスーパーに急いで行っていたことを思い出した。黄色のキウイと緑のキウイを一つずつむいてくれて、半分ずつ食べたが、ものすごく美味しかった。今まで食べたキウイの中で間違いなく1番美味しかった。あのとき、自分が死ぬ時の走馬灯に入れ込みたいくらい、尊く幸せな時間だった。

・ご飯を食べている時もなかなか思うようには晴れず、見えそうで見えない、なんだか煮え切らない景色のまま風を浴びながらご飯を食べた。北アルプスの山頂(稜線)は寒いんだということがよくわかり、たくさん服を持ってきていたが全てを着たので、ちゃんと準備をさせてくれていたことがありがたかった。晴れが遠くに移動しているように見えたので、太陽の光が当たる場所へ移動しようと歩いたが、なかなか思うところに晴れが留まってくれず、その頃には私は景色など半ばどうでもよくなっていた。

・登ってくる人たちがみんな「あー、頑張った…!ちゃんとついてよかった」などと言っていたので、みんな同じ気持ちなんだなと思ってほっこりした。
テント泊をする人たちが続々集まってきて、そうか、テントがあると大変な山でも山行を2日に分けられるから挑戦しやすくなるのか、と言うことに気づいた。5日働いて、2日山にいることになり、そうするとまた日常の捉え方が変わりそうで面白いなと思った。このままここに止まる人たちが少し、羨ましかった。

・1人で山に来ている人もたくさんいた。今日は宿泊するのであろう人たちが、各々の過ごし方でのんびりとしていた。気持ちよさそうにビールを飲んだり、ゆっくりとソーセージを焼いたりしていた。みんな、山と自分しかこの世界にない、みたいな風に見えた。やっぱり山は、世界と分断されている。電波がなく、1人で、食べるとか寝るとか深呼吸するとか考えるとか、そういうことを楽しむ時間が与えられる。言葉にできることじゃないんだよね。動画発信者の端くれとして失格かもしれないけど、この、山の魅力を、みんなに伝えたい!っていうのは、私はやりたいこととは合わないなと改めて思った。伝えるもなにも、ここに来て、同じ日に同じ場所の同じ気温で同じ景色を見ないとわからないし、山はただそこにあるだけで、私はただここにいるだけなので、それをただ記録に残すだけ。私にとって、それだけがJPをやる意味だった。
下山するために歩きながらジュンが「下山したらなにを食べようかな」と言ってから、私が「ソーセージ」と言ったら、ジュンも「私もそれ思ってた」と言っていて、完全にソーセージ焼いてるおじさんの匂いに2人ともやられてて笑ってしまった。

・下山するときに、ちょうちょが現れて、最高に蝶ヶ岳だった。山頂の看板?に「Mt.Cho」と書いてあって、そりゃそうなんだけど、なんか良かった。

・登りの時、人が多くて立ち止まれなかった吊り橋から、水量の多い川を思う存分眺めた。眺めながら、家族との記憶を遡っていた。
小さい頃、夏、私たち家族のリゾートは秩父の川だった。旅行に行く時も、キャニオニングを中心にした旅行だったな。川の記憶が私の中に濃く残っていて、川を見るたびに少年時代に心が戻る。お父さんがいた時もあったはず。
山に来て、この景色がずっと変わらないでほしいと心から思ったのは、今回が初めてだった。ずっと、このままここに在ってほしい。いつ来ても、このままの景色で、タイムカプセルのように心を今のこの瞬間に戻してほしい。そんなことを考えながら、川を見つめていた。とにかく美しかった、今日の川も、少年時代の記憶も。

・今日はずっと曇っていたから、下山の時に晴れて市街地が見えてきた時に、なんだか不思議な感じがした。何も見えない山の中を登っていたから、完全に山の世界にのめり込むことができていて、街のある景色と同じ次元の世界なんだ、っていうことも忘れていたような気持ちだった。晴れてて街がくっきり見えるくらい展望があったらそりゃ嬉しいけど、見えないなら見えないで、霧と雲に守られた異世界に来られたような気分になれるんだなって、下山の時に気がついた。

・駐車場に帰ってきたら、朝にはいなかったのにたっくさん蝶々が舞っていた。いろんな車のいろんなところに止まって羽を休めていた。蝶ヶ岳、なかなか思い出作りにサービス精神の強い山だ。

・私は最近、ジュンと2人きりの登山が特別感があって特に好き。

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