『受験脳の作り方』 読書感想文+内容まとめ

こんにちは。ネット英語塾エンリッチ塾長の江口と申します。ネット英語塾エンリッチは中学生向けに英語の授業を行うオンライン塾です。

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私が塾講師として働いてくるうちに、「どうやったらもっと上手く教えられるんだろう?」とか、「どうやったらもっと効率的に学習効果を上げることができるんだろう」などと考える中で、無数の本や論文を参照してきました。

その経験を踏まえ、これから子育てをする親御さんや教育関係者、お子さま本人、及び何かを学んで習得したい全ての人に役に立つような書籍や論文を紹介していきたいと思います。

さて、最初に紹介するのは、私が全国の学ぶ人・教える人の全員に参照していただきたいと思えるくらいおすすめな本です。

池谷裕二,『受験脳の作り方ー脳科学で考える効率的学習法』, 新潮社, 2011年

東京大学大学院薬学系研究科教授であり、現役の脳科学者である池谷裕二先生が書かれた本です。池谷先生は東大の大学院の入試に主席で合格された勉強のプロでありながら、脳科学の権威でもあるという、まさに「勉強のことを聞くならこの人が日本で一番!」と言ってもいいくらいの方です。

本の中から私が大切に覚えておきたいフレーズを引用してきて、それに対して感想を述べていくというスタイルで書いていきます。

脳は「必要な情報」と「必要でない情報」の仕分けをします。(p.29〜p.30)

「海馬」は、脳内にある場所で、この海馬が「必要な情報」と「不必要な情報」を仕分けしています。この「海馬」に「この情報は生きていくために必要だ」と認められた情報は、晴れて長い間留めておくことができる記憶(長期記憶)になることができるわけです。

つまり、何かを記憶するためには、その情報が生きていくのに不可欠な情報だと認識させなければいけない、ということになります。そのための技術が説かれているのが、本書『受験脳の作り方』ということです。

脳はそもそも、覚えることよりも、覚えないことをずっと得意としているのですから。(p.37)

脳は全てのことを記憶することはできません。そもそも覚えることよりも、覚えないことを得意としている、と日本で一番勉強について詳しい池谷先生がおっしゃっているのですから、英単語を覚えられなくてもいちいち落ち込む必要はありません。忘れるのは当然だと思っていれば、無駄に落ち込む必要もないですし、復習をするのが自然だと思えてきます。

古来「学習とは反復の訓練である」と言われてきたのは、脳科学の立場からもまったくその通りだと言えます。(p.38)

脳は記憶を忘れるのが自然なので、忘れさせないように「反復の訓練」、つまり復習するのが大切だということです。よく、「学習で大事なのは予習、授業、復習のどれですか?」と聞かれますが、「復習が一番大事」です。私の個人的な見解ではなく、池谷先生(東大教授で脳科学の権威)がおっしゃっているのですから、異論はないでしょう。

一度に覚えられる量には限界があります。(p.53)

一度に覚えられる量には限界があるということは、テスト前に頑張って詰め込もうとしても限界以上には詰め込めないということです。ですから、テストまでにコツコツ何度かに分けて学習していかなければなりません。

一日のうちに、新しい知識をあまりにもたくさん詰め込むのは避けましょう。そもそも勉強は「復習」に主眼を置くべきです。(p.55)

ここで池谷先生も「復習が大事」と明確におっしゃいましたね。

勉強の仕方しだいで結果は大きく変わります。(p.55)

だからこの本を書かれているわけですね。私がnoteで最初にこの本をご紹介するのも、皆さんに「勉強のポイント」をご理解いただきたいからです。

学習を繰り返した場合には、無意識の痕跡が気づかないうちに暗記を助けて、テストの成績を上昇させるのです。(p.63)

復習すれば、自分で覚えていないように思っても、ふと思い出すことができる確率が高まるということです。

復習すれば忘れる速さが遅くなるのです。(p.63)

本来、脳は忘れることを得意としているので、どうしたって忘れる運命にあるのですが、復習することで忘れる速さを遅くすることができるわけです。

潜在的な記憶の保存期間は一ヶ月のようです。(p.67)

記憶の保存期間は1ヶ月なので、1ヶ月以内には復習しておきたいところです。

つまり復習のときも、(中略)できるかぎり多くの五感を使うべきです。(p.68)

五感をできる限り使って学習した方が海馬を刺激できる、とのことです。つまり記憶しやすくなります。

復習の効果は同じ内容のものに対して生じます。(中略)覚える内容が変わると、効果が出ないのです。(p.70)

だからこそ、池谷先生は本書の中で、参考書をあれこれ取り換えることの無意味を説きます。どんな参考書や教科書でも、これと決めたら繰り返しその本で復習することが、復習効果を高めるのです。

実験結果の意味しているこは、記憶するには出力(テスト)を、手を抜かずにやったほうがよいということです。(p.77)

脳は入力(インプット)よりも、出力(アウトプット)を重視します。つまり、英単語を勉強するときも、最初はもちろん英単語帳を読んで勉強しなければなりませんが、次からは小テストや単語カードで脳内から情報を出力する形で復習した方が効果が高い、ということです。

教科書や参考書を何度も見直すよりも、問題集を何度も解くような復習法のほうが、効率的に学習できるはずです。(p.78)

したがって、教科書や参考書を見直すのではなく、問題集重視の勉強法が良い、となるわけです。

寝ることは、覚えたことをしっかりと保つための大切な行為なのです。(p.114)

勉強したことを脳は寝る間に復習しているので、しっかりと寝ることが大切ということが説かれています。睡眠時間をきちんと確保しないと、脳は知識を定着させることができない、とのことです。

就寝時間の一〜二時間前は、脳にとっては記憶のゴールデンアワーです。(p.135)

覚えた記憶を定着させるには、夜寝る前の1〜2時間前に勉強するのが一番効果が高い、ということです。暗記ものの勉強は夜寝る前にやりましょう。

記憶とは「失敗」と「繰り返し」によって形成され、強化されるものなのです。(p.147)

勉強における失敗の大切さを説いています。何度も間違えることで、記憶が正確になっていくので、間違えること自体は悪くないというお話です。間違えたらちゃんと間違えた理由を確認し、次からはできるようにすれば良いのです。

達成しやすい小さな目標を作って、少しずつ前に進んでいくのが、脳にとって効率のよい方法です。(p.162)

いきなり応用問題を解くのではなく、基礎的な問題から一歩ずつ進んでいった方が、結果として脳に記憶しやすいことが説かれています。いわゆる、「スモール・ステップ」法の話です。まずは基礎的な問題ができるようになり、徐々に応用問題にチャレンジしていくのが良い、ということです。

何かを学習しようとする場合には、まずは全体像をしっかりと理解しておくことが大切でしょう。はじめは細部を気にしなくてもいいですから、とにかく全体を大まかに把握しましょう。(p.181)

学習するときは、全体像から理解した方が覚えやすい、という話です。歴史を理解するときには全体の流れを漫画などで覚えてしまってから、細部の人名や制度名などを覚える方が効率的に覚えられる、ということにもなります。

脳は使えば使うほど性能が向上する不思議な学習装置なのです。(p.188)

したがって、勉強すればするほど賢くなるのです。よく英語ができるようになるとフランス語やスペイン語などの第二外国語も簡単に習得できるようになるとは言われますが、これは脳科学的にもわかっていることのようです。どんどん脳を使って賢くなりましょう。

まずは、何でもいいから得意科目をひとつ作ることです。誰にも負けない得意科目を作ってから、ほかの科目の習得に挑む方が脳科学的にははるかに効果的です(p.189)

先ほどの話と関連していますが、脳は使えば使うほど賢くなるというのは、前に覚えたことを「転移」させることができるので賢くなるのです。「転移」とは要するに応用のことです。覚えていることが多いほど応用が効くようになるので、もっと賢くなれるのです。

中学生くらいまでは、どちらかと言えば知識記憶がよく発達している年頃で、その年齢をすぎると、経験記憶が優勢になってきます。(p.224)

「知識記憶」は丸暗記する記憶(九九など)のことで、「経験記憶」は、記憶とその周辺情報を関連づけた記憶です。例えば、「先週の日曜日にあのレストランに行ったこと」や、「英単語succeedはsucceed inという形を取る」などの記憶です。小学校高学年くらいまでは丸暗記できるのですが、中学校くらいから経験記憶を脳が重視するようになるので、小学校までは勉強が得意だった子でも突然できなくなることがあったりします。その逆もしかりです。

中学・高校生になると、丸暗記よりも理論だった経験記憶がよく発達してきます。それは、ものごとをよく理解してその理屈を覚えるという能力です。(p.228)

したがって、中学・高校生になると、理屈を通して覚える暗記の仕方に転換していかなければならないのです。これが中学生以降で学習につまずく子と、そうでない子の違いです。

勉強量と成績の関係は、単純な比例関係ではなく、むしろ幾何級数的な急カーブを描いて上昇するというわけです。(p.250~p.251)

受験を何度も経験されている方はわかるかと思いますが、成績は受験直前に急激に伸びてきます。これは受験業界のセールストークでもありますが、脳科学者の池谷先生も認めている科学的論拠があることなんですね。勉強すればするほど賢くなるのですが、ある一定の境界を超えるまで爆発的に延びることはない。しかし、受験直前にぐんと伸びてくる。経験的に教育業界の方であればご存知かと思いますが、脳科学的な論拠もあるということなので、ぜひ自信を持って親御さんに「勉強と成績の関係」についてご説明してあげてください。

いかがでしたでしょうか。受験脳の作り方ー脳科学で考える効率的学習法は私たちが気になる「勉強と成績の関係」について、「痒いところに手が届く」ような本であることがお分かりいただけたのではないでしょうか。ほとんどの「勉強と成績の関係」についての疑問が本書で解決できますので、ご興味のある方はぜひ手にとってみてください。

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