オランダと二重国籍と国籍の自動喪失|
日本では二重国籍を認めない規定が憲法に違反するかの裁判が行われたとニュースがあった。
残念ながらインターネット上では、二重国籍を国籍の取得を自由意志で行なったか、二重国籍として生まれたかの違い、また、市民権、永住権、帰化、納税などがごちゃ混ぜの話題となった上に右翼的な罵詈荘厳まで混ざっているが、子供がオランダと日本の二重国籍として生まれてきた親としても今後の行方に注目している。
経緯はこちらが分かりやすい。
「日本国民は、自己の志望によつて外国の国籍を取得したときは、日本の国籍を失う」と定める国籍法11条1項が、憲法に違反するかどうかの裁判となっている。
多くのことが自由なオランダであっても、多重国籍に関しては、特定の条件を除き、基本的に多重国籍を認めない方針で、最近でも知らぬうちにオランダの国籍を失っていた二重国籍のオランダ人達の裁判もあり、日本とオランダどちらの裁判の行方にも注目している。
ちなみに、外国の永住権の取得と、国籍の取得を混同している言動もあるが、日本人がオランダで永住権を取得しても国籍は日本のままだ。
永住権も無条件で永遠に保持できる訳ではなく、オランダ/EUに住み続け、十分な収入があり、オランダに納税するのであればビザの更新なしに滞在できるというもので、もしも12ヶ月以上オランダ外、6年以上EU外に住めば、永住権は取り消される。オランダでは永住権があっても、国政への選挙権は無い。何年住んでも、あくまで外国人居住者である。
納税に関しては、国籍がどこにあるのか関わらず、二重課税を防ぐために、租税条約を結んでいる国同士では主たる居住地に納税することになるので、二重国籍の問題とは完全に切り離して考えてよい。
日本に帰化する場合、重国籍防止条件(国籍法第5条第1項第5号)により、無国籍であるか、それまでの国籍を喪失する必要があることになっており、外国人が日本に帰化した場合無条件で二重国籍になる訳ではない(ただし国によって国籍を喪失ができない場合もあるため、本人の意思によってその国の国籍を喪失できない場合には、重国籍防止条件が免除される)。
オランダの二重国籍についての情報はこちらの公式サイトに書かれている。
「もしも複数の国籍を持つ場合、権利が何か明確にわからないため、オランダ政府はできる限り、多重国籍を制限したい。一つの国籍の場合は権利が明確である。帰化によりオランダの国籍を取得した場合、原則として他の国籍を放棄することを求められる。」
自動的に喪失するオランダ国籍
もしもあなたが、成人であり、以下の項目に当てはまる場合自動的にオランダ国籍を喪失する。
自発的に他国の国籍を取得した場合、以下の例外を除き国籍を失う
1. 国籍を取得した国で生まれ、国籍を取得した時の主な居住国であった場合
2. 未成年として5年以上暮らしていた国が国籍を取得している国の場合
3. 配偶者の国籍を取得した場合。離婚や死別がオランダ国籍に影響することはなく、オランダ国民になる。他国の国籍を維持できるかどうかは個別の判断となる。
上の例外はオーストリア国籍の場合適用されない。この国との条約によりオランダ国籍は常に喪失する。
オランダまたはEU外に二重国籍者として住んだ場合、自動的にオランダ国籍を失う
1. 18歳後にオランダ、EU外に10年以上住んだ場合。
2. この10年に渡って他の国の国籍を保持した場合。
オランダでも、成人が自発的に他国の国籍を取得した場合は、例外条件を除き、自動的にオランダの国籍が失うとなっている。
例外条件では、国籍を取得している国で生まれていたり、未成年の相当の期間を過ごしていたり、配偶者の国籍を取得した場合となっており、基本的には成人の他国の国籍の取得は、元の国籍を失うことになる。
オランダの二重国籍でニュースになっていたのは、二重国籍を持つオランダ人が10年以上国外移住者してるうちに、知らないうちにオランダ国籍を失っていたという訴訟。
オランダ/EU外に二重国籍者として10年以上居住した場合、自動的にオランダ国籍を失うのは、欧州法と矛盾するとの判決となり、変更が必要となる。
国籍唯一の原則となってはいるが、ヨーロッパ国籍条約(1997年)は、出生と婚姻により得た国籍をハーグ条約締約国は奪ってはならないと定めた。
二重国籍が問題になるのは、二重国籍を持つ人々は両方の国からの社会的利益を享受することができ、一つしかない他の市民よりも個人的な特権を倍にすることになるということも指摘されている。
こちらのマップでは国籍の自動喪失が国ごとに分けられていてEUでも国ごとに違うことがよくわかる。
日本の国籍法は明治時代に作られたものらしい。これだけ国際的な社会へと変わった中で、現状に合わせて例外規定などの追加が必要になってきてるのだと思う。
子供が成人するまでに、日本でも一定の条件で二重国籍が認められるようになっていれば良い。引き続き裁判の行方を注目したい。