『華氏451°』

『華氏451°』

レイ=ブラッドベリ著

未来社会。この時代、一般大衆には本を読むことが禁じられていた。言論統制、思想統制のためである。典型的な愚民政策と言えた。近隣住民間の密告が奨励されている。この作品では、独裁者もコンピュータもロボットも出てこないが、かわりに大衆から力(=知識)が奪われるということがおこなわれている。支配層を強大化、強力化するのではなく、被支配層を低弱化、弱力化する、という政策がとられているのである。そういう意味で、『1984年』、『すばらしい新世界』、『わたしはロボット』とは一線を画する内容となっている。秘密警察も存在しないが、かわりに“焚書官”が存在する。“焚書官”(または“昇火士”)は、秘密警察よろしく人々の禁書(一般大衆は、書物を読むことも、それを持つことも禁止されている。)を督戦する役割を帯びている。ファイヤーマン(焚書官)の側にもドラマが存在する。(主人公も焚書官。)一般大衆の側にもドラマが存在する。作中では、焚書士側の同僚、部下、上司、そして、大衆側の学生、職業人、知識人、教会士らの悲喜交々の愛憎劇が展開する。

名匠の手によって何度も映画化もされている。派生作品多数。後世に語り継がれる名作である。

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