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先生おしえて! F1ドライバーはレースゲームが好き?
Netflixで作品を観ていて、ちょっとした疑問が浮かんだことはありませんか? そんな疑問をその道のプロに聞く「先生おしえて!」。今回はF1のドキュメンタリー『Formula 1: 栄光のグランプリ』を観て気になった疑問について聞いてみました。(ネトフリ編集部)
脇阪寿一
現在監督を務めている国内最高峰カテゴリーであるSUPER GTでは、選手として02年にシリーズチャンピオンを獲得し、06年・09年ドライバー&チームのダブルタイトルを獲得。更に2019年には監督としてもシリーズタイトルを獲得し、Mr.GTの異名を持つトップレーシングドライバー。
(Twitterアカウント: @JuichiWakisaka)
「F1ドライバーはゲームで練習してる?」
— Netflix Japan | ネットフリックス (@NetflixJP) March 22, 2022
人気のF1ドキュメンタリー #Formula1栄光のグランプリ では、ドライバーたちがレースゲームをしているような場面がたびたび出てきます。日本を代表するレーシングドライバー脇阪寿一さん @JuichiWakisaka に一体どういうことなのかを教えてもらいました。 pic.twitter.com/4vo39by7LK
F1ドライバーに「練習」はない
−−『Formula 1: 栄光のグランプリ』では、F1ドライバーがレースゲームをしているようなシーンが多々見られます。彼らはゲームを遊んでいるのでしょうか?
いや、レースゲームとシミュレーターを一緒にされると困ります(笑)。今のプロの世界では、ドライバーの練習なんてものはなくて、次のレースがバルセロナですと言われたら、シミュレーターで延々とバルセロナを走るんですよ。
−−そうなんですか!?
リアルな車を走らせるのにはお金もかかるし、目的地に行くための時間もかかりますよね。しかも、天気は自然まかせ。でも、今のレーシングシミュレーターってとてつもない技術で、天候から何から全て再現できるようになっているんですよ。
そもそも車の開発もシミュレーター上で行いますし、試したいパーツがあればそれもシミュレーター上で行います。そこで得た知見を組み込んで実車を作り、最後の最後にようやく現地で走ります。
F1チームが使っているシミュレーターは、莫大なお金をかけて独自のハードウェアとソフトを作っているものが多いと思いますが、プレイステーションで出ているドライビングシミュレーター『グランツーリスモ』で世界チャンピオンになって、そのままリアルのモータースポーツで活躍している選手も珍しくありません。
−−『グランツーリスモ』ってそんなレベルのシミュレーターだったんですね…!
他にもプロドライバーに人気のシミュレーターとして『iracing(アイレーシング』があります。これは実名登録してオンラインで対戦できるのですが、僕はこの前ルーベンス・バリチェロ(元F1ドライバー)に会いました。彼は今ブラジルにいると思うんですけど、日本にいながら彼と勝負することもできました。今、シミュレーターってそこまで来ているんです。
−−お話を伺っていて、シミュレーターに興味が出てきました。
ハンドルにペダル、そしてシートが必要なので、導入するハードルは高いですが、レーシングシミュレーターがあればF1にもF3にも乗れますし、何よりぶつかってもタダですから(笑)。僕らはリアルのレースで接触やクラッシュを見ると、職業病として「あっ、7000万円かかるな」とか修理額が頭の中で浮かぶんですよ。でも最近はシュミレーターを活用する機会が増えているので、実際にサーキットでクラッシュが起こっても、もしリセットできるような感覚になってしまったら、これはマズイですね。
まあ、それはともかく、シミュレーターさえあれば、リアルでとてもは乗れないような車に乗れるので、ぜひ乗ってみてください。実車の動きがとても忠実に再現されていますよ。
「F1」は何が特別なのか?
−−ところで、モータースポーツにはスーパーGTやWRC(世界ラリー選手権)などたくさんのカテゴリがありますが、その中でもF1は特別な印象があります。F1は何がすごいのでしょうか?
モータースポーツってどうしてもお金と切り離せないスポーツなのですが、そのお金が一番集まるのがF1なんですね。世界中のあらゆる国で頂点だと思われてるレースは異なるのですが、F1が一番華やかで人とお金が集まるレースだというのは間違いないでしょう。そこには自ずと競争原理が働き、優秀なエンジニア、優秀なドライバーが集まって熾烈な戦いが繰り広げられます。
−−F1の現役ドライバーはわずか20人しかいないため、椅子取りゲームと呼ばれることもあります。F1ドライバーにはどんな人がなれるのでしょうか?
大体のドライバーはF1を夢見るので、あのポジションにたどり着くのは至難の業です。しかし、チャンピオンになるのはともかく、F1ドライバーになるだけならば、そこそこ車の運転が上手くてスポンサーマネーさえ持っていればシートを買うことができるのも事実です。業界はお金が欲しいので、それを目的にライセンスが発給されるんですよ。
−−そうなんですね。
「金持ちじゃないとF1ドライバーになれない」というイメージを持っている人もいるかもしれませんが、それはそこから来ています。そういう意味では、F1ドライバーのすごさの一つは、お金を集め、たくさんの人に応援される魅力にあると言えるでしょう。とはいえ、最近は少額のスポンサーを沢山集めてF1にたどり着く人はほぼ居ません。。日本人の感覚ではわからないかもしれないけど、世界中には途轍もないお金持ちがいて、その“パパ”が息子のためにF1チームを買収したりするんですよ。
その一方で、スピードを追求してたくさんの人に支えられてあそこに立っているドライバーもいるので、ありとあらゆる境遇の猛者が集まって世界一を争っているモータースポーツ=F1といえます。何千億円、何兆円というお金が動くわけですから、ドライバーにはたくさんの人間を魅了する能力が求められます。
−−最後に車についても伺いたいのですが、F1のフォーミュラカーと、スーパーGTなどのレーシングカーでは、運転の仕方などに違いはあるのでしょうか?
いや、実は一緒なんですよ。視界から来る情報を処理しながら、ハンドルで左と右を動かして、アクセルとブレーキでスピードをコントロールする。それはフォーミュラだろうが、GTだろうが、一般車だろうが、何も変わりません。僕は全盛期の頃、フォーミュラ日本とスーパーGT、スーパー耐久という3カテゴリーのドライバーとして活躍していましたが、感性を研ぎ澄ませながら乗れば、全く一緒です。