【漫才台本】引越しの手伝いを断る
「あのいきなりなんですけど、実は僕今度引越しすることになりまして」
<あ、そうなんや>
「いまその準備をしてたりするんですけど」
<なるほど>
「ちょっとあなたにお願いがあって」
<え、なに?>
「引越し当日さ、荷物運んだりすんの、ちょっと手伝ってくれへん?」
<イヤ>
「あ、イヤ?」
<うん>
「即答やね」
<うん。イヤやな>
「あ、そっか。...OK、了解。」
<ごめんな>
「"ごめんな"...?いや全然いいねんけど。頼んでんのこっちやし」
<申し訳ない>
「全然全然。え、ちなみになんでイヤなん?」
<ん、いやな理由?>
「うん。あまりに即答やったから」
<いや、別に理由はないけど、イヤやねんなぁ>
「例えば"予定ある"とか、"力仕事苦手"とか」
<いや別にそういうわけじゃないな>
「なんならおれのこと嫌いとか」
<好き>
「ありがとう。いやありがとうじゃなくて。なんかあるやん普通、断る理由が」
<あ、理由がないと断ったらアカン?」
「そうじゃないけど、なんか"こういう事情で"みたいな理由があったらこっちも気持ちよく受け止められるやん」
<あーなるほどな、それはそうやわ。...あ、じゃあ一緒に考えよ>
「え?」
<確かにお前の言う通り、理由があった方がおれも断りやすい>
「それはそうやろうな」
<だから一緒に考えよう>
「ん?おれの頼み事が断られる理由を、おれが考えんの?」
<そう>
「変やて」
<いやでもそうでもせんとこの話終わらんから>
「それを考えたとて、その理由は嘘やん」
<そうやで。でもこの際事実はもうどうでもいいねん。今大事なんはお互いの納得感や>
「そこまでするぐらいやったら引越し手伝ってくれたらいいんじゃない?」
<いや手伝うはもうないから。そこは諦めて>
「なにそれ」
<確定してるからそれは。覆らん>
「じゃあ別に理由要らんわ。他の人に頼むから。もうこの話は終わり」
<待って待って待って>
「何?」
<いや、このままやとおれに罪悪感が生まれただけになってまうから>
「罪悪感?」
<お前の頼み事を理由もなく断ってしまったっていう罪悪感>
「それは知らんやん」
<いやいや、お前が頼み事してきてなかったら、この罪悪感はこの世に存在しなかってん。必要のない罪悪感を生み出してしまった責任はとれよ>
「いや責任て言われたって、そういうもんやん」
<あのさ、お前はお願いしてきた側、俺はお願いされてる側、俺の方が立場上やねん>
「いやいやいや…」
<今やったらお前の頼み事をOKして、当日行かへんなんてこともできるからな?>
「なんでそんなことすんねん。絶対やめろよ」
<じゃあ考えろよ、お前の頼み事を断る理由を>
「ずっと変なこと言うてるで?」
<早く>
「断る理由なんて、そんなもん"他の予定入ってる"とかやろ」
<いやそれはアカンねん>
「何が?一番オーソドックスな断り方やん」
<そうかもしれへんけど、お前が最初引越し手伝ってくれへんって頼んだ時、お前は日程は言ってないねん。だからスケジュールNGは成立せえへんねん。アウト>
「…。じゃあ最近腰痛めてるとか」
<アカンね。ジムで鍛えまくってるから。アウト>
「じゃあ、"昔友達の引越し手伝った時に、壁に傷つけてしまったことがあって、それ以来引越しの手伝いは断ってる"とか」
<長い長い長い…>
「長いってなんやねん。それは別にええやろ」
<ただでさえ嘘の理由やのに、そんな長文喋ったら絶対噛む>
「それは頑張れよ」
<怪しまれるから。アウト>
「アウトってやめろさっきから腹立つ」
<他は?>
「他はじゃなくて、お前もなんか案出せよ」
<何が?>
「いや一緒に考えよって言ってたのに俺ばっかり考えてるやん」
<ああ。あ、いいよじゃあ頼んできて>
「あんのかいな。もっと早よ言えよ」
<今思いついた>
「お互いに納得感のある断り方」
<そう>
「いける?」
<もう完全に降りて来た>
「あ、そう」
<きて>
「わかった。"あのさ"」
<なに?>
「"今度おれ引越しがあんねんけど、当日ちょっと手伝ってく...?"」
<あーーー(耳をたたきながら)>
「絶対やめろよお前。めちゃくちゃ腹立つわ」
<いやー、いいのが出来たねー>
「何がやねん。理由にもなってへんやないか」
<これでお互いに納得感のある断り方ができたと思うわ>
「なに言うてんねん」
<ホンマにありがとうな。ちょっと、一緒に考えてもらったお礼に引越し手伝うわ>
「今まで何の時間やってん。もうええわ。」
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改善案
・一般的な断り方だけでなく、個人の性格や価値観からくる断る理由がある方がいい。
「お前っておれのこういうところ苦手やん?だから〜みたいなんは?」
「俺ってこういうところあるやん?だから〜」
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