松本プロの逆転敗退は防げなかったのか
渋谷ABEMASの松本吉弘プロが2022年7月17日(日)の「麻雀最強戦2022 男子プロ因縁の抗争」のA卓で決勝進出を逃しました。
2人勝ち上がりの2着目につけていたオーラスで3着目の原佑典プロに逆転されました。
逆転敗退を防ぐことはできなかったのでしょうか。2つのターニングポイントがありました。
◎7筒を勝負していれば
1つ目は南3局1本場です。A卓は古本和宏プロ、原佑典プロ、白鳥翔プロ、松本吉弘プロの並び順。持ち点は東家・白鳥33700、南家・松本31500、北家・原22100、西家・古本12700です。
トップ目で親の白鳥プロが7巡目に9索をポンしてイーシャンテンです。
ダメ押しのあがりを目指したジュンチャン・ドラ1の5800点の手です。
松本プロも7巡目に4萬を暗刻にしてイーシャンテンです。
今のところ役もドラもない手です。けれども、あがって白鳥プロの親を流せば、自身がラス親の残り1局になるので、逃げきりには大きいです。
白鳥プロは8巡目に3索をツモり、中を切りました。
松本プロはこの中をすかさず鳴いて、5筒を切って役の付いたイーシャンテンです。
萬子の一色手を進めていた古本プロは白鳥プロと松本プロの鳴き仕掛けに対応し、9巡目に7萬をチーします。
古本プロの鳴きは遠い仕掛けです。それでも白鳥プロと松本プロにプレッシャーを掛けようと動きました。
白鳥プロは11巡目に東をツモり、1索を切りました。
松本プロはこの1索をチーして5索を切り、カンチャンの2筒待ちで聴牌しました。
白鳥プロは13巡目にドラそばの2萬をツモりました。
白鳥プロは慎重に2萬を切らず、3索を切ってオリに回ります。
松本プロは13巡目にドラの1萬をツモります。下家の古本プロが萬子の一色手なのは明白です。それでも思いきって、カンチャンの2筒待ちの聴牌を維持してツモ切りしました。
一方、原プロが15巡目に5索を暗刻にして追いつき、ペンチャンの3萬待ちでリーチしました。
その直後、松本プロが一発でつかんだのは原プロに危険牌の7筒です。
松本プロは考えた末、3着目のリーチに危険牌を勝負することはできず、聴牌を崩してワンチャンスの4索を1枚外しました。
ここが勝敗を分ける1つ目のターニングポイントでした。松本プロが踏み込んで7筒を切っていれば2巡後に2筒をツモっていました。
松本プロは400、700(+1300)でした。持ち点は松本34300、白鳥32900、原20600、古本12200になっていました。
オーラスを迎え、松本プロはトップ目に立ち、3着目の原プロとは13700点差、ラス目の古本プロとは22100点差でした。おそらく決勝進出していたと思います。
決勝進出を争う当面のライバルからのリーチです。松本プロが一発での放銃を避ける気持ちはよく分かります。
けれども、最強戦では、このような局面で勝負にいくほうが良い結果につながる場面を何度も見ています。これまでも取り上げたことがあります。まさに「虎穴に入らずんば虎子を得ず」です。
松本プロは原プロへの完全な安全牌がなく、ドラの1萬を切るなどあがりに向かっていたので、この一局を勝負どころとして7筒を勝負してほしかったです。
◎早めに5萬を切っていれば
2つ目はオーラスです。南3局1本場は原プロの1人聴牌で流局。南4局2本場(供託1)を迎え、持ち点は北家・白鳥32700、東家・松本30500、西家・原24100、南家・古本11700です。
原プロは1000、2000、古本プロは跳満ツモで松本プロを逆転して決勝に勝ち上がれます。
トップ目の白鳥プロは配牌からオリに回っていました。
3着目と6400点差で2着目の松本プロはこの局を伏せて終わらせることに懸けるか、大きく加点を狙うか難しいところです。
松本プロのツモが効いていました。7巡目にイーシャンテンです。
「234」の三色が狙える手です。
松本プロは9巡目に東をツモりました。安全牌として抱えず、ツモ切りします。6萬引きにも対応できるよう5萬を引っ張ります。
原プロには逆転を狙える絶好の手が入っていました。9巡目にイーシャンテンです。
原プロはドラの6筒を引き入れられるかが鍵を握っていました。
松本プロは10巡目に8索をツモ切りし、5萬を残します。この9巡目と10巡目に5萬を引っ張ったことが2つ目のターニングポイントとなりました。
松本プロがこの一局では「234」の三色になったときだけあがりに向かい、その他の場合はオリに回って流局を目指す方針で5萬を早めに切っていたら、原プロへの放銃はなかったと思います。
10巡目が5萬を処理する最後のチャンスでした。
原プロは10巡目に待望のドラの6筒をツモって8索を切り、5萬・8萬待ちで黙聴に構えます。
原プロは8萬であがればタンヤオ・ピンフ・三色・ドラ1の8000点(+1600)です。誰からあがっても決勝に勝ち上がれます。5萬ならばタンヤオ・ピンフ・ドラ1の3900点(+1600)で、松本プロからの直撃でなければ勝ち上がれません。
5萬は松本プロの手に残っていました。
原プロは11巡目にドラの6筒をさらに1枚引き入れました。
5萬を切れば、3筒・6筒・9筒待ちに取れます。
原プロは6筒であがればタンヤオ・ピンフ・ドラ3の8000点(+1600)、3筒であがればタンヤオ・ドラ2の5200点(+1600)です。誰からあがっても決勝に勝ち上がれます。
9筒ならばピンフ・ドラ2の3900点(+1600)で、松本プロからの直撃でなければ勝ち上がれません。
原プロはしばらく考えた後、3筒を切って、引き続き5萬・8萬待ちに取りました。
この待ちならば高めの8萬であがればタンヤオ・ピンフ・三色・ドラ2の12000点(+1600)です。安目の5萬でもタンヤオ・ピンフ・ドラ2の8000点(+1600)で、いずれも誰からあがっても決勝に勝ち上がれます。
原プロは12巡目に5筒をツモりました。三色はもう不要なので8筒を切って5萬・8萬待ちのまま入れ替えました。
松本プロが13巡目にツモったのが8筒です。
松本プロはここから5萬を切って原プロに放銃しました。
原プロはタンヤオ・ピンフ・ドラ2の8000点(+1600)のあがりです。逆転で白鳥プロとともに決勝に勝ち上がりました。
解説の多井隆晴プロが指摘していたように、松本プロは原プロが少考を重ねていたのでイーシャンテンと読んだのかもしれません。手痛い直撃を受けてしまいました。
松本プロは5萬を残したまま捨て牌が3段目に達したので、ここではもうオリに回ったほうが良かったです。
松本プロには悔いの残る半荘だったと思います。麻雀最強戦で来年以降の巻き返しを期待したいです。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?