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真摯なけーぶんに感じた「敗者の美学」と「勝負師の品格」

 悲願のМリーガーの座にほんのわずかの差で届きませんでした。

 最高位戦日本プロ麻雀協会・新井啓文プロです。2023年6月17日(土)に行われたBEAST Japanext(ビーストジャパネクスト)のドラフト会議指名オーディションのファイナルで惜しくも2位でした。

 「ゴキゲンな攻め」で波に乗り、戦いを優位に進めました。

 けれども、最終戦(4回戦)でシャンポン待ちに変えた選択が痛恨の裏目となり、決定打を逃して逆転されました。

 オーラスの聴牌・ノーテンで逆転する手も懸命な粘りを受けて3回連続実らず、逆にとどめの一撃を決められました。

 それでもひるまず、奇跡の大逆転を信じて執念のリーチ。裏ドラが乗れば優勝でしたが、麻雀の神様はほほ笑みませんでした。

 プロ22年目で訪れたプロ雀士として大きく飛躍する最高のチャンス。夢にあと一歩まで近づきましたが、手中目前で届きませんでした。

 優勝者とはわずか700点差。新井プロは悔しくて悔しくて仕方なかったはずです。

 それでも、真摯に潔く勝者をたたえ、笑顔を絶やさずインタビューなどに応じたけーぶん。「敗者の美学」と「勝負師の品格」を感じました。

 ファイナルに魅せられたたくさんの麻雀ファンが「いつかМリーガーになってほしい」と、新井プロの今後の活躍を願っています。

◎麻雀ファン魅了する大熱戦

 ファイナルは麻雀ファンを魅了する大熱戦でした。

 予選A組、B組で1位の最高位戦日本プロ麻雀協会・新井啓文プロと日本プロ麻雀連盟・菅原千瑛プロ、セミファイナルを2位、3位で勝ち上がった日本プロ麻雀連盟・内田みこプロ、日本プロ麻雀協会・浅井堂岐プロの4選手が対戦しました。

 4試合の総合ポイントを競いました。

 最終戦に逆転でトップを飾って優勝し、Мリーガーの座に輝いたのは菅原プロです。

 オーラスの菅原プロと新井プロの優勝争いはすごかったです。

◎「ゴキゲンな攻め」で猛ラッシュ

 2回戦に「ゴキゲンな攻め」の猛ラッシュで大きなトップを取り、抜け出しのは新井プロです。

 ホップ、ステップ、ジャンプとばかり、満貫、跳満、親の倍満と3連続のあがりを決めました。

 2回戦は内田プロ、浅井プロ、新井プロ、菅原プロの並び順。

 東1局4本場を迎えました。持ち点は東家・内田45300、南家・浅井22500、西家・新井19600、北家・菅原12600です。

 この一局から新井プロのゴキゲンな攻めが次々と炸裂します。

 新井プロは10巡目に二萬・五萬待ちでリーチ。

 索子のホンイツで跳満の手を聴牌していた菅原プロから14巡目に五萬を打ち取りました。

 新井プロは裏ドラが1枚乗り、リーチ・ピンフ・赤ドラ1・裏ドラ1の8000点(+1200)です。

 続く東2局。新井プロはまたも10巡目に二萬・五萬待ちで力強くリーチしました。

 内田プロ、浅井プロから追っかけリーチが入ったものの、新井プロはハイテイで二萬をツモ。

 新井プロはリーチ・ピンフ・ハイテイ・ツモ・赤ドラ2の3000、6000(+2000)です。

 さらに、新井プロは東3局の親でこの試合の決定打となるリャンペーコーの一撃を決めます。

 新井プロは8巡目にペンチャンの7索待ちでリーチしました。

 リャンペーコー・赤ドラ1の親満確定の手です。狙い目の単騎待ちの牌をツモればチートイツの手変わりもできます。

 この手を黙聴に構える打ち手は多いと思います。

 けれども、強気な新井プロはリーチを選択。出あがりを期待せず、ツモあがりを目指しました。

 これこそ「あがり出したら止まらない」とライバルから恐れられているけーぶんのゴキゲンな攻めです。

 新井プロは10巡目に7索をツモ。裏ドラが2枚乗り、リーチ・リャンペーコー・ツモ・赤ドラ1・裏ドラ2の8000オールです。

 豪快なあがりで新井プロの持ち点は66800点になりました。

 この試合で大きなトップを取った新井プロは折り返しの2回戦を終え、総合ポイントで抜け出しました。

 2回戦を終えた時点での総合ポイントです。

 新井93.8、菅原-5.2、浅井-44.0、内田-44.6

 3回戦は浅井プロがトップを取りました。菅原プロが2位を確保。新井プロは3位にとどまり、優勝争いは三つどもえの様相となりました。

 最終戦を迎えました。総合ポイントは新井60.1、浅井39.1、菅原3.2、内田-102.4です。

 浅井プロ、新井プロ、内田プロ、菅原プロの並び順。 

 菅原プロが東場にあがりを重ね、総合ポイントで1位に浮上しました。

 しかし、新井プロは南2局1本場の親でリーチ・一発・ツモ・赤ドラ1の4000オール(+1300)をあがりました。新井プロが再び1位です。

◎待ち変えが痛恨の裏目で決定打逃す

 南2局2本場で、持ち点は西家・菅原45200、東家・新井35200、北家・浅井19800、南家・内田-200。

 総合ポイントは新井75.3、菅原68.4、浅井18.9、内田-162.6です。

 新井プロは両面待ちからシャンポン待ちへの変更が痛恨の裏目となりました。決定打となる親満のあがりを逃したほか、優勝を争う菅原プロに放銃する悪夢の一局となりました。

 新井プロは12巡目にドラの二萬を暗刻にして3索・6索待ちで聴牌。

 13巡目に5索をツもって4索を外し、五萬・5索のシャンポン待ちに変えました。山には6索がすでに3枚出ていました。

 菅原プロが15巡目に追いつき、5筒・8筒待ちで聴牌しました。

 親番のない浅井プロが15巡目に3索をツモ切りました。

 新井プロが待ちを変えていなければ3索を打ち取り、タンヤオ・ドラ3の12000点(+600)を加点していたと思います。

 新井プロは菅原プロをまくってこの試合のトップ目に立ち、総合ポイントで大きく差をつける決定打を逃しました。

 新井プロは17巡目に5筒をつかんで放銃。菅原プロはタンヤオ・赤ドラ2の3900点(+600)です。

 南3局を迎え、持ち点は南家・菅原49700、北家・新井30700、西家・浅井19800、東家・内田-200。

 総合ポイントは菅原72.9、新井70.8、浅井18.9、内田-162.6。菅原プロが再び1位です。

◎奇跡の逆転狙ったリーチに裏ドラ乗らず

 南3局は新井プロが内田プロから1000点をあがり、南4局を迎えました。

 持ち点は東家・菅原49700、西家・新井31700、西家・浅井19800、東家・内田-1200。総合ポイントは菅原72.9、新井71.8、浅井18.9、内田-163.6。

 菅原プロと新井プロは1100点差です。聴牌・ノーテンで再びひっくり返ります。

 菅原プロは懸命な粘りで3局連続聴牌にこぎ着けて新井プロの逆転を阻止。南4局3本場にようやくタンヤオ・ドラ3の4000オール(+1900)をあがり、総合ポイントで大きくリードしました。

 南4局4本場となり、持ち点は東家・菅原68100、西家・新井30900、西家・浅井11000、東家・内田-10000。総合ポイントは菅原91.3、新井71.0、浅井10.1、内田-172.4です。

 逆転優勝に菅原プロから跳満を直撃するか、倍満ツモが必要な新井プロは8巡目にチートイツの3索単騎待ちでリーチしました。

 裏ドラが乗れば、リーチ・チートイツ・ツモ・ドラ2・赤ドラ1・裏ドラ2の4000、8000(+1200)で条件を満たします。奇跡の大逆転を狙った渾身の勝負手です。

 新井プロは15巡目に3索をツモ。裏ドラが乗らず、リーチ・チートイツ・ツモ・ドラ2・赤ドラ1の3000、6000(+1200)の跳満にとどまりました。

 ファイナルの最終結果は菅原84.9、新井84.2、浅井6.7、内田-175.8です。

 新井プロはわずか700点差で総合2位に終わりました。

 新井プロは試合終了後、菅原プロとがっちりと握手を交わし、優勝を祝福。いつも通りの明るく朗らかな笑顔を見せていました。

 その真摯な姿勢にSNSで麻雀ファンやプロ雀士から称賛の声が相次いでいます。

 けーぶん、お疲れさまでした。「あなたはМリーガーにふさわしいです」の言葉を贈呈したいです。


 

 

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