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「ゼウスの選択」に「すずめ」の一撃

 日本プロ麻雀連盟の石川遼プロが2022年6月19日(日)の「麻雀最強戦2022 男子プロ理詰めの極致」で優勝しました。決勝で大逆転の決め手となったのはオーラスの跳満ツモです。

 石川プロにはもう一つ、きらりと光る巧みな鳴き仕掛けがありました。

 南2局の終盤にポンして、ドラの単騎待ちでリーチしていた山田独歩プロの最後のツモ番をなくすとともに、萬子のチンイツを聴牌していたトップ目の鈴木たろうプロに海底のツモ番を回し、独歩プロのあがり牌を送り込み、聴牌を崩させたことです。

 独歩プロの1人聴牌で流局となりました。もし、たろうプロが聴牌を維持していたら、独歩プロとの2人聴牌で流局。たろうプロには1500点の聴牌料が入り、ノーテンの石川プロは1500点の支払いです。石川プロはたろうプロにさらに3000点リードを広げられていました。

 石川プロの鳴きはトップ目との点差拡大を防ぎ、オーラスに跳満ツモの逆転条件を残した見事なファインプレーとなりました。

 決勝は山田独歩プロ、石川遼プロ、園田賢プロ、鈴木たろうプロの並び順。南2局を迎え、持ち点は西家・たろう40100、東家・石川24100、南家・園田23700、北家・独歩12100です。

 石川プロの配牌です。この親で連荘して、16000点差あるトップ目のたろうプロに迫りたいところですがバラバラで厳しいです。

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 トップ目のたろうプロはこの局で決めようと、萬子のチンイツを目指します。3巡目に2萬をポン、4巡目に9萬をチーし、10巡目に4萬をツモってドラの白を切り、イーシャンテンです。

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 一方、親番のなくなっていた独歩プロが11巡目にドラの白単騎待ちでリーチします。

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 山に白は1枚だけ残っていました。

 たろうプロも13巡目に1萬をツモって暗刻にし、9萬を切ってカンチャンの5萬待ちで聴牌です。

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 5萬は山に2枚残っていました。

 親の石川プロは2人の攻勢を受け、追い詰められていました。それでも聴牌を目指し、13巡目に独歩プロがツモ切りした7萬をチーしてイーシャンテンに取り、必死に粘ります。

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 ただし、配牌から切れずに浮いているドラの白が独歩プロのあがり牌です。白単騎待ちの形式聴牌を狙うしか連荘の可能性はありません。

 園田プロはあと1牌が入らず、聴牌できずにいました。

 石川プロが14巡目につかんだのが3萬です。

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 たろうプロにはもちろん、独歩プロにも切れず、石川プロはやむを得ず現物の5筒を切ってオリに回ります。

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 たろうプロが17巡目にツモったのは独歩プロに通っていない5索です。

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 たろうプロは現物の4萬を切り、イーシャンテンに戻します。

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 たろうプロは18巡目に「お帰り」で4萬をツモります。5索は通っていないままです。

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 今度は思いきって5索を勝負し、再びカンチャンの5萬待ちで聴牌です。

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 5萬はまだ山に1枚残っていました。

 石川プロはたろうプロの5索をポンしました。

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 石川プロはリーチしている独歩プロの最後のツモの機会をなくしてあがりを防ぎ、海底のツモ番をたろうプロに回しました。

 リーチした独歩プロの危険牌である5索を切ったたろうプロが聴牌しているのは明白です。石川プロは鳴き仕掛けによって、たろうプロが独歩プロのあがり牌の白を海底でつかみ、ツモ切りして放銃するか、安全牌を切って聴牌を崩すことを狙いました。

 もちろん、たろうプロが海底で5萬をツモり、チンイツの3000、6000をあがる可能性もありました。また、危険牌をつかまなければ2人聴牌で、石川プロとの点差はさらに3000点拡大します。

 それでも石川プロはたろうプロがあがるリスクを背負ってでも、点差を広げられないようにするため勝負に出ました。

 石川プロの鳴き仕掛けはずばり決まりました。たろうプロが海底でツモったのはドラの白です。

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 たろうプロはさすがに切ることはできず、聴牌を崩して現物の4萬を外しました。

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 独歩プロの1人聴牌で流局。石川プロと独歩プロの点差は変わらないままです。

 石川プロは親番を失いましたが最悪の配牌から辛抱強く戦い、リーチ者のあがり牌を抑え、一色手を目指していたトップ目の聴牌も鳴き仕掛けで阻止しました。

 石川プロにとってオーラスの跳満ツモともに秀逸の一局でした。

 「ゼウスの選択」を許さず、優勝への道を切り開いたすずめクレイジーの素晴らしい一撃だったと思います。

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