せいちゃん小さく勝つ
セガサミーフェニックスの近藤誠一プロがМリーグ2021の2021年11月30日(火)の第1試合で大接戦を制し、見事に勝利しました。終局での持ち点はわずか28700点。「大きく打ち大きく勝つ」のキャッチフレーズで知られる近藤プロが、ザンク(3900点)2発のみの「小さく打ち小さく勝つ」打ち筋でトップを飾った一局でした。
近藤プロは最高位や最強位、モンド王座などのビッグタイトルを獲得し、Мリーグでも活躍の目立つトッププロ雀士です。ここぞというとき、メンゼンで高打点を徹底的に追い求めて仕上げる「大きく打ち大きく勝つ」戦いぶりで麻雀ファンの人気を集め、せいちゃんの愛称で親しまれています。
第1試合はセガサミーフェニックスの近藤誠一プロ、U-NEXT Piratesの小林剛プロ、KONAMI麻雀格闘倶楽部の滝沢和典プロ、KADOKAWAサクラナイツの岡田紗佳プロの並び順。オーラスを迎えてトップ目からラス目まで6100点差の大接戦になったのは伏線がありました。
◎タッキー悔いる黙聴
東2局1本場(供託2)で持ち点は東家・小林27500、南家・滝沢、西家・岡田、北家・近藤の3人はいずれも23500です。
滝沢プロは配牌は良くなかったもののツモに恵まれ、10巡目に「789」の三色の5萬単騎待ちで聴牌します。
11巡目に白をツモり、5萬を切って白単騎に変えます。
滝沢プロはリーチせずに黙聴に構えました。次巡に白をツモあがりします。1000、2000(+2300)です。もし、リーチしていたらリーチ・三色・一発・ツモの満貫で裏ドラが乗れば跳満でした。
捨て牌に脂っこい牌が多かったので、字牌待ちリーチを読まれる可能性もあり、慎重に黙聴で様子を見たのかも知れません。解説の藤崎智プロによると、タッキーは対局終了後に「リーチだったかな」と悔やんでいたそうですが、ここはリーチしてほしかったです。
場に1枚切れの白はやはり待ちごろの牌で、苦しい配牌からスムーズに聴牌し、ツモあがりも期待できそうだったからです。さらに、リーチをすれば出あがりでも5200点確定です。チャンス手を高打点でものにしていれば一歩抜け出し、試合を優位に運ぶことができました。この選択がオーラスで「全員集合」を呼ぶ一因となりました。
◎コバゴーに痛いチー
南2局1本場で持ち点は東家・小林29600、南家・滝沢29000、北家・近藤23900、西家・岡田17500。いずれも3万点以下の競り合いが続いています。
トップ目で親の小林プロが7巡目に6萬をチーし、6筒を切っていち早く聴牌します。
鳴き仕掛けの得意な小林プロらしい中の後付けです。これに負けじとラス目の岡田プロが15巡目にリーチします。
カンチャンの8萬待ちのリーチ・ドラ1・赤ドラ1の手です。17巡目に近藤プロがリーチしている岡田プロに海底のツモが回ることをずらそうと、9索をチーし、安全牌の南を切りました。
このやるべきことをきちんとする丁寧な鳴きが小林プロに痛手のキラーチーとなりました。チーがなかったら小林プロは次に中をツモってあがっていました。代わりにツモったのは岡田プロに通っていない6萬です。
小林プロは聴牌を崩して安全牌の7筒を切ります。誰もあがれず、岡田プロ1人聴牌の流局となりました。せいちゃんのチーはコバゴーのあがりと連荘を阻止し、点差も開かせないきらりと光る小技の一打でした。
◎おかぴーの不運
南3局2本場(供託1)で持ち点は北家・小林28600、東家・滝沢28000、西家・近藤22900、西家・岡田19500です。ラス目の岡田プロに10巡目に大物手が入りました。
赤5索を切ればイーペーコー・ドラ2・赤ドラ1の6筒・9筒待ちで黙聴の出あがりでも満貫確定です。6筒をツモればタンヤオがつき跳満です。
岡田プロは黙聴の選択もありましたが、赤5索を切って果敢にリーチして勝負を懸けました。
黙聴にしたほうがあがりやすかったかもしれません。しかし、手出しで赤5索が切られれば守備力のある3プロには警戒されるので、出あがりが期待できたのか難しいところです。
それよりも10巡目のリーチで山に6筒・9筒が5枚も残っていたのに最後までツモれなかったところに、今季Мリーグで一度もトップのないおかぴーの不運があります。この手をものにしていれば初トップだったでしょう。勝負手は不発でまたも岡田プロ1人聴牌の流局となり、誰も抜け出せないままオーラスを迎えました。
◎丁寧なせいちゃん
南4局3本場(供託2)で持ち点は西家・小林27600、北家・滝沢27000、南家・近藤21900、西家・岡田21500です。ラス目の岡田プロに10巡目に大物手が入りました。全員がトップを狙えます。近藤プロはザンク(3900点)以上をあがれば、積み場と供託でトップに立てます。
近藤プロには難しい選択が続きます。2巡目に4萬をツモった手牌です。
近藤プロはここから発を切り、役牌には頼らないピンフを軸にした手作りを進めます。
一方、親の岡田プロは4巡目に9索をポン、5巡目に4筒をチーして白の後付けでしゃにむにあがりを目指します。
近藤プロは5巡目に白をツモります。岡田プロへの危険牌です。
近藤プロは白をツモ切りしました。もし、白で放銃しても岡田プロの手は安そうなことや、親の連荘となり、もう1局あることなどをきちんと計算した上での判断だったと思います。
岡田プロはこの白をポンして2筒を切り、4萬・7萬待ちの聴牌です。
近藤プロはこれを受け、メンツオーバーとなっている手牌から岡田プロに安全そうな4筒と5筒を切って手を進め、12巡目に4索をツモり、3萬を切って聴牌します。丁寧な手順でようやく漕ぎつけました。
近藤プロは6萬・9萬待ちのリーチ。リーチ・ピンフ・ドラ1の3900点で積み場と供託を合わせると6800点となり、あがればトップ確定です。
近藤プロがリーチしたとき、トップ目の小林プロは役牌の南をポンしたイーシャンテンでした。
小林プロはあがりトップを目指し、近藤プロの切った3萬をチーして9萬を切り、カンチャンの2索待ちの聴牌に取ります。これが近藤プロへの放銃となり、大接戦の幕を閉じました。
終局時の持ち点は近藤28700、滝沢27000、小林22800、岡田21500です。稀にみる小場の戦いでした。じりじりした雰囲気の続く中、オーラスの手作りや海底ずらしなど近藤プロの「小さく打ち小さく勝つ」丁寧で繊細な打牌が印象に残る一局でした。今度はぜひ、「大きく打ち大きく勝つ」ところを見たいです。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?