多井プロに先切りの選択は? 最強戦魂の一打決勝
12月に行われる「麻雀最強戦2022」のファイナルで、残念ながらTEAM雷電の瀬戸熊直樹最強位と渋谷ABEMASの多井隆晴前最強位のライバル対決は見ることができなくなりました。
多井プロは2022年7月23日(土)の「麻雀最強戦2022 男子プロ魂の一打」に出場して決勝進出。最高位戦日本プロ麻雀協会の友添敏之プロに敗れ、ファイナル進出を逃しました。
決勝では、1人だけ大きく沈んだラス目の多井プロに、危険牌の先切りの選択はなかったのかという興味深い場面がありました。その一局を振り返ります。
決勝は多井隆晴プロ、近藤誠一プロ、堀慎吾プロ、友添敏之プロの並び順です。
起家の多井プロは開局早々から厳しい展開が続きました。
親の1人聴牌で連荘となった東1局1本場。多井プロは先行リーチが実らず、自風のドラを鳴いて追いついた友添プロのあがり牌の9筒をつかみ、8000点(+300)を放銃しました。
東2局は親の近藤プロに4000オールをツモられ、続く1本場は後ひっかけとなった2索で近藤プロに7700点(+300)を振り込みました。
さらに、東2局2本場は友添プロに3000、6000(+600)の跳満をツモられました。
東3局は友添プロが親の堀プロに5800点を放銃し、迎えた東3局1本場。持ち点は北家・近藤38800、南家・友添37100、東家・堀21600、西家・多井2500です。
1人だけ大きく沈み、反撃の狼煙を上げたい多井プロの配牌です。チャンス手が入りました。
タンヤオ・ピンフはもちろん「234」の三色も狙えます。
ところが、この日好調の友添プロには早い手が入っていました。2巡目に自風の南を暗刻にして、3巡目にペンチャンの7索を引き入れ、イーシャンテンです。
友添プロは4巡目に5索をツモって2索を切りました。
受け入れが全て両面形になりました。
一方、多井プロもツモが効き、5巡目までに5萬、6筒、3筒、8萬をツモり、好形のイーシャンテンです。
多井プロは6巡目に第1打で切った東をツモりました。
ここで東を残し、危険牌になる可能性がある3索を先切りするのが多井プロ得意の打ち筋です。
しかし、トップ目と36300点離れているラス目なので3索をツモって暗刻にしたときの聴牌を逃すわけにはいきません。多井プロは東をツモ切りしました。
下家の近藤プロが捨て牌から国士無双か萬子の一色手狙いに見えるので、東をなおさら手に残したくなかったかもしれません。
めいっぱいに構えるのはやむを得ない選択です。けれども、一方で「最速最強」の異名を持ち、数々の偉業を成し遂げている多井プロならば、ピンフの役を確定させ、3索を先切りしてほしかったという思いがあります。
多井プロは大きくマイナスしているものの東3局1本場で、南場の親がまだ残っています。今回のような逆境のときに、危険牌を先に処理してダメ押しされる放銃を避け、それを逆転勝利につなげた経験はあるはずです。
いつもの多井プロならばこの厳しい場況でも3索を1枚、先に外していたのではないかと考えます。不調のときにめいっぱいに構えて、それがかえって放銃につながる恐れをよく理解している堅い守りに定評のあるトッププロだからです。
この日の多井プロはライバルで親友の瀬戸熊プロが決勝の解説だったということもあり、絶対に目前でファイナル行きを決めようと、通常よりも少し前がかり過ぎるきらいがありました。
多井プロの東ツモ切りの後、友添プロが8巡目に3索・6索待ちで聴牌。再びトップ目に立ってリードを広げようとリーチです。
多井プロの3索切りはもう間に合わなくなりました。
多井プロは10巡目に1索をツモりました。
当然、3索を切って1筒・4筒待ちでリーチです。
そのリーチ宣言牌の3索で友添プロに放銃。この日の多井プロはとことん不運に見舞われました。裏ドラが南で3枚乗り、リーチ・南の2600点の手が8000点(+300)に化けました。
持ち点はトップ目の友添プロが45400点、ラス目の多井プロが-5800点となり、多井プロにとって痛恨の一打となりました。
もちろん「たられば」なのは承知しています。もし、多井プロが3索を先切りしてリーチ宣言牌での放銃を避けていたらどうなっていたのか興味深いです。