231217 日記 脈
パン屋さんでも悪人はいる、風に飛ばされる犬。
私ってもう風船は貰えないんですか。
施しを受けたくてゆらゆら揺らめいている自意識が全部、排水溝に詰まった髪の毛と同化して簡単に溶けた。
静かでうるさい、体内に張り巡らされた脈みたい。
在りしはずの記憶を思い出そうとして頭を捻り、ついには何色も抽出できずに項垂れうずくまる心臓を体の中にしまい込んでまた歩く。これが実はとても重い。
私だけが私の自我を愛し隠して、たまには頭を撫でてやる。
もう誰も来やしないのにね。
猫と目が合う、ここから逃げなくては。さっき言ったことはもう忘れた。無限に広がった記憶の台地を踏み締める。空はどんどん落ちてくる。気がついた時には上にも下にももう何色も残っていなかった。
このグロテスクな心臓を動かして、またしても卑しく生きている。指が動くのも目が動くのも、張り巡らされた脈がドク、ドクと呼吸しているからだ。気持ちいいも気持ち悪いももう知らない。
そう思われるなら思われてもいいよ、と。影にもならないモヤみたいな被害妄想への言い訳を脳で繰り返している。
捻りのないあなたが私と話をしてくれたら、不自然な人工の光でも美しいと言えるだろうか。
数時間で消える悲しみを見たんだ。滲み出る涙の端っこに貴方が居た。
鼓動を余すこと無く。せめて最後はどうか鮮やかに。