【ネット歯科大】ミライの歯科に期待されること
歯科医療においても、さまざまな進歩があります。
たとえば、歯周病によって失った骨は回復しないものだったのが、いまでは歯周組織再生療法という方法によって一部ではありますが再生が目指せるようになっています。
さて、将来的に歯科が貢献できることはなんでしょうか。
国内の歯科関係の学術団体を取りまとめている日本歯科医学会のホームページには、「ミライのシカイ」「2040年への歯科イノベーションロードマップ」といった、未来の歯科をイメージした内容が掲載されています。
それによると、デジタル歯科技術の活用や、遠隔治療システムが挙げられています。ロボットを活用した遠隔での歯科治療が一般化するかもしれません。
さらに、むし歯や歯周病を起こす菌の撲滅や、歯と一体化する材料の開発なども期待されます。天然の歯により近いインプラントの開発も求められています。
目指しているところは、健康に長生きできる社会です。健康寿命といって、自立した生活を送ることができる期間を評価するようになっています。
口の病気は口だけにとどまるものではない、ということはすでに広く知られています。歯科で取り扱う病気を予防することが健康寿命の延伸につながっていることを証明し、口を健康に保つことで全身の健康を維持することが望まれます。
また、変革を起こすという意味では、考え方を根本的に変えていく必要があるのかもしれません。
現在の歯科治療では、むし歯と歯周病を主な対象としています。
むし歯では歯が痛みますし、歯がボロボロになってしまうとうまくかむことができません。また、歯周病はあまり自覚症状のない病気ですが、進行すると歯が揺れ、歯を抜いたあとはやはり物をかみにくくなってしまいます。
そういった現実的な困りごとに対応してきたのが歯科医療です。しかし、口の疾患が全身の健康とつながっていることがわかってきたことから、全身の健康を阻害するような要因が口にあるならば、その要因を積極的に除去しておくことが未来の歯科に求められる可能性があります。
そのためには、全身の健康を阻害する要因、あるいはその一歩前の、全身の健康が悪化していくことを予知するような因子を見つける必要があります。全身の健康の悪化につながる因子は、けっこう口にかかわるものが多いようなのです。
将来的に、全身の健康維持のために重要な因子のうち口にかかわるものを歯科が取り扱う、という考え方が主流になっていく可能性があります。
ミライの歯科に期待されること、そのキーワードは「全身の健康」かもしれませんね。
神奈川歯科大学 青山典生