【ネット歯科大】舌の動きの検査
歯科の領域で、口の機能についての検査が広がってきています。
口腔機能、そしてその機能低下をチェックすることで、その後に生じやすくなる全身の筋力低下などを防ぎたい、という考え方に基づいています。
日本老年歯科医学会のホームページによると、「口腔機能低下とは、加齢により口腔内の「感覚」「咀嚼」「嚥下」「唾液分泌」等の機能が少しずつ低下してくる症状」とあります。
咀嚼(そしゃく)や嚥下(えんげ)というのは難しい言葉ですが、食べものをかみ砕いたり、飲み込んだりする機能のことを表しています。
口腔機能の検査にはいくつかのものがあり、そのひとつに舌の動きの検査があります。
舌の動きの検査では、「滑舌(かつぜつ)」を評価します。
具体的には、「パ」「タ」「カ」それぞれを連続的に5秒程度発音してもらい、1秒あたり何回の発音ができたかを評価します。
一般的に、1秒で6回以上発音できれば機能は正常とされています。したがって、6回未満だと滑舌の機能が低下していることになります。
「パ」の音はくちびるの細かな動きを表現しています。「タ」は舌の前方、「カ」は舌の後方の動きが滑らかかを判定するためのものです。
自分で実際にやってみると、思いのほかスムーズにいかないこともあります。その際、どの発音が難しいかによって、くちびるや舌のどの部分の動きに問題があるのかを判断できます。
なお、専門的には滑舌のことを「舌口唇運動機能」といいます。
滑舌低下の改善のためには、口の運動、特に早口言葉を利用する方法などが簡単です。
発音しにくいエリアに合わせて、その発音が多く出てくる昔ながらの早口言葉を一日に数回発声してみることで、ちょうどいいトレーニングになります。
このように、舌の動きなど簡単で日常使用する運動機能が、気づかないうちに低下してしまうことがあります。これをオーラルフレイルといいます。
口の機能検査を行うことで、ちょっとした運動機能の低下に気づくことができれば、トレーニングによって状態を改善させることができます。
それがやがて全身の運動機能の維持に寄与し、最終的には自立した健康な生活を長く送ることにつながっていきます。
神奈川歯科大学 青山典生