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【ネット歯科大】歯周病の手術での2つの目的

 歯周病の患者さんに対して、手術を行う場合があります。歯周外科手術、または歯周外科治療といいます。
 
 細かく分けると手術の目的は多岐にわたりますが、大きくとらえると歯周病に対して行う手術の目的は2つ挙げられます。
 
 ひとつは、歯の周囲を徹底的にきれいにすることです。
 
 歯周病は歯周ポケットと呼ばれる溝の中に細菌がたまることで進行します。また、細菌が石灰化すると歯石になり、歯の表面にがっちりと付着してしまうことで歯周病を悪化させます。
 
 歯周ポケットの深い部分にたまった細菌は歯ブラシでは取れません。また、石灰化した歯石は部位にかかわらず患者さん自身で除去することはできません。
 
 そのため歯科医院で歯周ポケット内の清掃や歯石の除去を行うのですが、実は手術ではない清掃方法では意外と取り残しが生じます。これは複数の論文で示されています。
 
 歯科医院では、歯周病の治療として、スケーラーという手用の器具や超音波スケーラーという用具などを用いて歯周ポケット内の歯石除去を行います。浅いポケットであればほとんどの汚れを取り切れるのですが、深いポケットとなるとそうもいきません。深いポケットかどうかのひとつの基準は、4mmです。
 
 そこで、手術の出番となります。歯周病の手術では、一時的に歯ぐきをはがすことによって歯の表面を確実に見ることができます。このため、歯石の除去効率も向上します。
 
 歯周病の手術におけるもうひとつの目的として、歯周組織の再生があります。
 
 歯周病は歯の周囲の骨など、支えとなる組織(これを歯周組織といいます)を失っていく病気です。骨の喪失が進むと歯が揺れ、やがては歯を失うことにつながります。
 
 進行した歯周病において減少した歯周組織を回復させるための方法を、歯周組織再生療法といいます。
 
 この方法は、すべての歯周病患者の方に対して実施できるわけではありません。歯周病の状態によって、再生療法を用いることができる場合とそうでない場合があります。
 
 また、再生といっても、歯が生えたときの状態まで戻すということは現代医学の技術では困難です。
 
 しかしながら、一部であっても歯周組織の再生が得られれば、時間を数年から数十年巻き戻せたと考えることができます。
 
 歯周病の治療の中で手術を行うことがあり、その目的は状況によって異なります。手術というとちょっとこわい印象もあるかと思いますが、専門の歯周病科医としてはありふれた治療法です。
 
神奈川歯科大学 青山典生

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