【ネット歯科大】歯科医療における安全対策
安全な医療の実践は、常に守られるべき基本的事項です。歯科医療においても同様で、さまざまな安全対策が施されています。
医療の安全について注目された事例として、手術の際の患者取り違えが有名です。
患者2名が取り違えられて手術室に送られ、医師は予定された患者だと認識していたため、結果的にそれぞれ必要のない心臓と肺の手術が行われたというものです。
歯科において間違いが起こりがちなものとして、抜歯すべき歯の取り違えがあります。
通常の位置に生えている歯であれば、間違いが起こることは非常にまれです。しかし、歯ぐきに埋まっている歯などは正しく指定することが難しい場合があります。依頼した歯科医師の要求とは別の歯を誤って抜歯担当の歯科医師が抜いてしまったという事例などが報告されています。
報告数の多い事例に対しては、その防止のための対策が行われるようにして改善されます。
医療安全に関して歯科の診療現場で注目された事例として、歯を削る際に使用する医療機器であるハンドピースの感染対策が挙げられます。新聞記事でこの話題が取り上げられたことで、議論が巻き起こりました。
ここ数年、コロナウイルスが広がったこともあり、歯科の診療現場でさらなる感染対策も求められました。
歯科治療では出血をともなうことも多く、感染対策は不可欠であるといえます。このため、手袋の装着や器具の滅菌などが適切に行われる必要があります。
以前の医療の場では、間違いは起こしてはならないもの、とされていました。
もちろん気をつけることは大切ですが、そうはいっても人は間違いを起こすことがあります。
2000年ごろから、医師や歯科医師も間違いを起こすことがあるものとして、たとえ勘違いなどが生じても医療上の問題につながる前に気づけるようなシステムを作ることが重視されています。
たとえば30年前の歯科医療の現場と現代の診療室とでは、安全対策や感染防御などを含めて、多くの面で違いがあることでしょう。
このようにさまざまな事例をきっかけとして安全対策が検討され、現在の歯科医療が成り立っていると考えられます。ただし、今の状態が万全かというとそうではなく、安全対策は常に改良が求められているといえます。
このように、歯科医療においても安全対策が施されています。問題点を明らかにして、場合によっては公表し、次につなげるという姿勢こそがいちばん大切なのかもしれません。
神奈川歯科大学 青山典生