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【ネット歯科大】歯科治療後に歯ぐきが下がる

 歯科での治療は、痛みを取ったり、歯をきれいにしたりなど、なんらかの効果を得るために行います。しかし、歯科治療にともなって、致し方なく好ましくない変化が生じる場合もあります。
 
 そのひとつに、歯周病の治療後に歯ぐきが減少することが挙げられます。
 
 歯周病は、歯を支えている組織が腫れ、しだいに弱っていく病気です。腫れるのは歯肉、いわゆる歯ぐきです。また、歯肉の内部では歯を支えている骨が、知らず知らずのうちに減っているということが、歯周病の怖いところです。
 
 さて、進行した歯周病の状態では、歯ぐきは腫れる一方、内部の骨は減っています。歯ぐきが腫れているということは、本来の形態よりも歯ぐきがふくれて見える状態です。
 
 歯ぐきの腫れと骨の減少という状態を合わせ持つのが歯周病です。そのギャップを評価する方法が、歯周ポケットの検査となります。
 
 歯周ポケットとは、外から見えている歯ぐきの位置を基準として、内部で骨がだいたいどのあたりにあるかを推定するための指標となります。
 
 ここから少し難しい話になります。不要な方は読み飛ばしていただいてもかまいません。
 
 たとえば、歯周ポケットが8mmだとすると、見えている歯ぐきの位置から計測して8mmほど下の位置まで骨がなくなっている、ということになります。
 
 歯周病は治療をすると、歯ぐきが引き締まります。これは、腫れた状態が解消するために生じます。
 
 上の例で8mmの歯周ポケットがあり、治療をしたら歯周ポケットが3mmになったとしましょう。すると5mm減ったことになるのですが、このうちのほとんどは、歯ぐきの減少に由来します。
 
 細かいことをいうと、内部では歯の表面と歯周組織とのくっつきも生じますが、それは量としてはあまり多くありません。
 
 歯周病治療によって腫れた歯ぐきが引き締まるのはいいことです。
 
歯周ポケットが浅くなり、歯周病の細菌が棲みにくい環境となります。そのかわり、歯ぐきは減少してしまうのです。この変化は、残念ながら避けられません。
 
 歯ぐきが減少することによって歯根が露出するため、知覚過敏も生じやすくなります。簡単にいうと、歯がしみることがあります。これは時間経過とともに治まっていくことがほとんどですが、しみる症状が長く残ってしまう患者さんもいます。
 
 歯周病で失ってしまった骨は、今の歯科医療技術だと、ほとんど回復させることができません。歯周組織再生療法という外科的な処置で再生を見込むことはできますが、あくまでこれは部分的な回復にとどまっており、多くの骨の喪失はそのままとなってしまいます。
 
 歯周病が進行すると、治療をしても元にもどすことはできません。だからこそ、歯周病の発症や進行を早期に発見し、早めに対応することで、問題を最小限にすることが大切です。
 
神奈川歯科大学 青山典生

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