【ネット歯科大】奥歯だけに生じる「根分岐部病変」とは
口の中には何種類かの歯がありますが、奥歯にだけしかできないタイプの歯周病があります。それを、「根分岐部病変(こんぶんきぶびょうへん)」といいます。
まず、歯の構造を簡単にご説明しましょう。
歯には、大きく分けて2種類あり、前歯と奥歯に区分できます。
前歯は、さらに2種類に分けられます。中央から左右合わせて4本を切歯(せっし)といい、その隣、前から3番目を犬歯(けんし)といいます。
前歯は主にかみ切るための歯ですが、犬歯は特に先端がとがっています。犬歯は根が長いという特徴もあり、このためすべての歯の中でもっとも長持ちしやすいのも犬歯です。
前から4本目以降が、奥歯に該当します。
奥歯にも2種類あって、比較的小さめな小臼歯と、大きい大臼歯に分けられます。小臼歯は犬歯のすぐ隣に、左右に2本ずつあります。大臼歯はもっとも奥にある歯のことで、左右に2-3本ずつありますが、本数は人によって違います。口の中で一番奥にあたる第三大臼歯は、しばしば「親知らず」とも呼ばれます。
さて、大きな奥歯である大臼歯は、食べ物をすりつぶすことが仕事です。そのため、かむ面も広いのですが、その大きな力を受け止めるための特徴的な構造をしています。
それは、根が分岐しているということです。
上の大臼歯は根が3本、下の大臼歯は根が2本というのが基本です。ただしこれは人によって異なるので、絶対にその本数とは限りません。
根が複数に分かれているというのは、力を受け止めるという点では大きなメリットとなります。
しかし、それが逆にデメリットになってしまう場合があります。歯周病が進行した場合です。
歯周病が進行すると、歯の根の周りに細菌や歯石が付着していきます。
単純な円錐形の歯であれば治療として歯石の除去もしやすいのですが、複雑な根のかたちになると、簡単には清掃しきれません。
複数の根がある歯において、根の分かれ目まで歯周病が進行した状態を「根分岐部病変」といいます。
根分岐部病変は、あえてそのような名前が付けられていることからもわかるように、通常の歯周病とは少し区別して考える必要があります。
根分岐部病変となった歯周病は、非常に治りにくいためです。
もちろん歯科医師は全力で歯周病治療を行うわけですが、奥歯の場合はどうしても根分岐部病変の問題があり、良好な状態を維持することが困難です。最終的には抜歯になりやすく、このため一般的に奥歯から失っていくことにつながります。
歯周病は予防が大切ですが、特に奥歯の歯周病は改善が難しいのです。日ごろからしっかりと歯をみがいて、歯周病を進めないように心がけてください。
神奈川歯科大学 青山典生