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【ネット歯科大】歯周ポケット内に細菌がたまっても無症状

 歯周病は、歯周ポケットが深くなることによって進行します。
 
 歯周ポケット内に細菌が蓄積するから歯周ポケットが深くなるのですが、実はその過程であまり症状が出ない場合があります。
 
 歯周病は歯の周りの細菌感染を原因とする病気です。歯みがきがおろそかになりプラークと呼ばれる細菌のかたまりが蓄積すると、歯ぐきは腫れます。歯ぐきが腫れると、出血しやすくなったり、赤く見えたりします。
 
 歯周病は症状の出にくい疾患ですが、そうはいっても歯をみがくときに血が出やすいなどの所見があれば、どうしても気になるものでしょう。
 
 これまでの研究から、歯ぐきの外側にたまったプラークに対しては、歯ぐきが腫れることによって外部に合図を送ると知られています。その一方で、たとえ歯周ポケット内部にプラークがたまっていても、歯ぐきの外側さえよくみがけていれば、歯ぐきの腫れはあまり生じないことがわかっています。
 
 歯ぐきの外側の部分を歯肉縁上(しにくえんじょう)、歯周ポケット内部のことを歯肉縁下(しにくえんか)と呼びます。
 
 歯肉縁上にプラークが蓄積した場合は歯肉の腫れとして現れやすいけれども、歯肉縁下にだけプラークがあってもそれほど腫れない、というわけです。
 
 歯周病が進行し、歯周ポケットが形成されたとすると、歯肉縁下にもプラークは蓄積します。その状態で気をつけて歯の周りをよくみがいたとしましょう。
 
 歯ブラシや歯間ブラシなどで除去できるのは、基本的に歯肉縁上プラークだけです。歯肉縁下のプラークはなかなか取れません。
 
 それでも、よくみがくことで歯肉縁上がきれいな状態で維持されると、歯肉の腫れは落ち着きます。ここで、よくなったように錯覚してしまう可能性があります。しかし、歯肉縁下にプラークがたまっている危険性が残っているのです。
 
 これでそのままにしてしまうと、知らず知らずのうちに歯肉縁下の細菌が歯周ポケットの内部まで進んでいきます。
 
 さらに症状をわかりにくくしてしまう要素として、喫煙が挙げられます
 
 タバコを吸っている人は歯周病が進みやすいにもかかわらず、あまり歯ぐきの腫れがみられないという特徴があります。そうなると、ますます歯周病に気づきにくくなってしまうのです。
 
 歯肉縁下、すなわち歯周ポケット内部にだけ細菌がたまっていても、歯ぐきはあまり腫れません。しかし、知らぬ間に進行し、急に奥の方で腫れるようなことがあります。
 
 歯周病はあまり症状が出ない病気だからこそ、定期的な検査や管理が重要だといえます。
 
神奈川歯科大学 青山典生

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