【ネット歯科大】歯科医師法の改正について
歯科医師の業務などを規定する法律として「歯科医師法」というものがあります。
たとえば歯科医師法の第一条には、「歯科医師は、歯科医療及び保健指導を掌ることによつて、公衆衛生の向上及び増進に寄与し、もつて国民の健康な生活を確保するものとする。」とあります。
この歯科医師法ですが、最近段階的に改正が行われています。令和6年4月1日から新しい歯科医師法が施行されています。
厚生労働省から今回の改正の趣旨が通知されています。大学において歯学を学ぶ大学生は、共通の共用試験に合格した場合、一定の歯科医療行為を行うことができるとされました。
これまで、むし歯を削るなどといった歯科医療行為を行ってよいのは歯科医師に限られていました。硬い文章を引用するならば、歯科医師法に、「歯科医師でなければ、歯科医業をなしてはならない。」とあります。
しかし、歯科医師になるにあたって臨床現場での学びも重要です。臨床現場で見学をしているだけでは、歯学生の知識や技能の修得にも限界があります。
そこでこのたびの改正において、一定の基準を満たした歯学生は、歯科医師の監督・指導のもと歯科医療行為が実施できることと規定されました。
ただし、すべての行為ができるわけではありません。処方せんの交付は、歯学生にはできません。医療安全などの観点によりこのように決められています。
さて、歯学生がクリアすべきものとして、共用試験の重要度が増しているといえます。
共用試験は歯科医師国家試験とは別の試験です。歯科医師国家試験は6年間の歯学部での学びの集大成として、最後に行われるものです。共用試験は、臨床実習に進む前の段階で行われます。
共用試験の目的としては、臨床実習を開始する前に修得すべき知識および技能を有しているかを確認するものとされています。
共用試験では、知識の確認だけでなく、臨床現場における態度や技能が身についているかを評価します。
たとえば、歯学生の行動により患者さんの安全がおびやかされてしまうことはあってはなりません。
また、歯科医療の現場では高速の動きを伴う器具なども多くあります。それらの使用に際して、安全で清潔な使い方を身につけた歯学生でなければ、臨床現場で問題を生じかねません。
歯科医師も、初心者からスタートすることは当たり前のことです。このように初学者へのルールが定められることによって、現在だけでなく将来的にも安定した歯科医療が提供されていくことになると考えられます。
神奈川歯科大学 青山典生