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【ネット歯科大】前歯のかみ合わせ

 歯のかみ合わせは立体的なものであり、よく考えると非常に複雑です。その中で今回は、前歯のかみ合わせについて考えてみます。
 
 基本的に正しいとされるかみ合わせを、正常咬合と呼びます。正常咬合は、形態的にも機能的にも正常である状態です。
 
 かみ合わせについては、どこからどこまでを正常とするのか、さらには理想咬合という表現もあり、専門的に深く考察すると一筋縄ではいかないジャンルです。
 
 一般的に前歯の正常なかみ合わせとは、上の歯が下の歯より少し前にきており、歯と歯がやや重なって見える状態です。
 
 それに対し、下の歯が前に出ているものを下顎前突といい、上の歯が著しく前に出ているものを上顎前突といいます。
 
 また、かみ合わせの深さの表現もあります。
 
 奥歯はかみ合っているのに前歯はかみ合わず、口の中が見えているような状態を開咬(かいこう)といいます。その反対に、上下の歯がかなり深くかみこむ状態を過蓋(かがい)咬合といいます。
 
 さらに、上下の前歯の先端同士でかみ合うような状態を、切端(せったん)咬合といいます。
 
 このように、前歯のかみ合わせだけをとってもさまざまな状態があります。正常咬合からはずれた状態は不正咬合と呼ばれますが、その原因にも多くの要素がかかわってきます
 
 たとえば上記で挙げた下顎前突を考えてみても、大きく分けて骨格が原因の場合と歯が原因の場合に分類できます。
 
 骨格的には、下顎の骨が大きいケースが考えられます。また、下顎の骨の大きさは正常ながら上顎の骨が小さいということもあります。
 
 歯に原因がある場合としても、生えてくる位置がずれているケース、角度が一般的でないケースなど、理由は複数挙げられます。そもそも骨全体のスペース的に歯が並びきらないこともありますし、反対に歯が小さかったり歯の数が少なかったりしてスペースを埋めきれず、歯と歯のすき間があいてしまうこともあります。
 
 当然のことながら、骨と歯との両方に原因があるようなこともあります。
 
 このように考えると、不正咬合の改善を目指すための治療においては、診断が非常に重要であるといえます。
 
 前歯のかみ合わせだけでも、このようにさまざまな状態があります。かみ合わせを3次元で整えることは、複雑なことなのです。
 
神奈川歯科大学 青山典生

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