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【ネット歯科大】歯肉炎と歯周炎のちがい

 「歯周病」という言葉はよく使われますが、実は診断に使う名前ではありません。歯ぐきの病気を総じて歯周病と呼んでいるのですが、その中には「歯肉炎(しにくえん)」や「歯周炎(ししゅうえん)」などの疾患が含まれています。
 
 今回は歯周病の中でもありふれた疾患である、「歯肉炎」と「歯周炎」について、特にそれらの違いに着目しながらご説明していきます。
 
 まず、もっとも簡単に違いを表現するならば、軽度のものが歯肉炎、進行したものが歯周炎です。
 
 歯肉炎は、歯肉だけが腫れている状態を指します。少し難しくいうと、歯肉に限局して炎症がある状態です。
 
 歯肉とは、歯ぐきの表層のやわらかい部分を表します。歯肉より深い部分には、歯を支えている骨があります。
 
 歯肉炎では、歯を支える骨までは影響が及んでいません。
 
 骨まで影響が波及した状態を表す言葉が、歯周炎です。
 
 歯周炎では、歯肉の腫れにとどまらず、歯を支えている骨が溶けています。一般的に歯周病としてイメージするのは、歯周炎の方でしょう。
 
 歯周炎が進行して歯を支える骨が多く溶かされてしまうと、歯がぐらぐらしてきます。やがては歯を抜くしかない状態になってしまいます。
 
 以上をまとめると、歯肉炎は歯肉だけが腫れている軽い状態、歯周炎は骨まで溶かされている進行した状態、といえます。
 
 歯肉炎と歯周炎の違いは骨が溶けているかどうかですが、治療したあとの結果も異なります。
 
 歯肉炎を治療すると、歯ぐきの腫れが引いてきます。この場合、歯肉炎になる前の状態に戻ります。つまり、歯肉炎は可逆性の病気、元に戻すことができる病気だといえます。
 
 一方、歯周炎では骨が溶けており、治療をしても元の状態に戻すことはほぼ不可能です。溶けてしまった骨を部分的に回復する治療法はあるものの、溶けた骨の大部分は元には戻りません。このような病気を不可逆性の疾患と呼びます。
 
 歯周病の治療をすると歯ぐきが減ってしまうことがあります。歯周炎では減った骨を回復することは難しいので、腫れている歯ぐきを引き締めて歯周ポケットを減らすことを目指します。結果として、どうしても歯ぐきが減って歯根が露出したような仕上がりになってしまうのです。
 
 歯周病は予防が大切な病気ですが、早期発見・早期治療も重要です。
 
 初期の歯肉炎の状態で治療を行うことにより、元に戻すことができます。歯周炎まで進行した状態からは元通りにはできません。こういった理由から、歯周病は検査が大切ということになるのです。
 
神奈川歯科大学 青山典生

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