【ネット歯科大】むし歯がある人はどれくらいいるのか
歯の病気としてもっともありふれたもののひとつが、むし歯(う蝕)です。
今回は、う蝕がある人はどれくらいいるのかを、厚生労働省のデータを元に見ていきましょう。
厚生労働省の令和4年歯科疾患実態調査結果を見ると、歯の状況を知ることができます。
まず乳歯のう蝕について見ると、5歳から11歳、つまりだいたい小学生くらいの年代においては、う蝕がある人の割合が15-35%程度となっています。
乳歯のう蝕について、有無でも平均本数でも、ここ30年で大きく減少していることがわかります。
6歳の平均う蝕歯数は、1993年(平成5年)に7.1本だったものが、2022年(令和4年)には1.2本となっています。
永久歯の場合はどうでしょうか。
成人でう蝕の歯を持つ者の割合を見ると、40歳から69歳においては97%以上となっています。かなり高い数値といえるのではないでしょうか。
なお、70歳以降ではこの値は減少していきますが、歯自体を抜いてしまうことによるものです。
45-54歳の区分を一例としてみると、う蝕歯を持つ者の割合は1993年(平成5年)には97.1%であり、2022年(令和4年)は99.0%となっています。
これだけ聞くと、う蝕が減っているとは到底いえません。子どものむし歯は減っているのに、どうして大人のむし歯は減らないのでしょうか。
実は、う蝕歯には複数のカテゴリーが含まれています。処置済みの歯と未処置の歯、合わせてう蝕歯とカウントしています。
したがって、成人では治療済みのう蝕の歯がひとつあるだけでも、う蝕ありとしてカウントされてしまうのです。治療済みのう蝕とは、白い樹脂や金属を詰めたもの、セラミックをかぶせたものなどが該当します。
なお、85歳以上の年齢区分では、う蝕歯を持つ者の割合は1993年(平成5年)に39.4%であったものが、2022年(令和4年)は83.8%となっています。65歳以上の人におけるう蝕歯は、明らかに増加傾向です。
これも抜歯と関係があり、以前は年齢を重ねる中で多くの歯が抜けていきました。今では比較的歯が残るようになっているので、処置済みの歯を含めてう蝕歯数としては増えたこととなってしまうのです。
むし歯は減少傾向にありますが、データを見る際には注意が必要です。ときに表現者は、自身に都合のいいデータを切り取って説明することがあります。この記事も含めて、少し疑っていただいた方がいいのかもしれません。
神奈川歯科大学 青山典生