乃木坂46『きっかけ』について感じてきたこと。 ~秋元康『こんなに美しい月の夜を君は知らない』発売記念 歌詞解説募集キャンペーン 投稿記事①~

3/2に、秋元康氏の坂道グループ作品の歌詞を集めた自薦の詞集『こんなに美しい月の夜を君は知らない』が発売された。
その記念企画として、詩集に掲載されている46曲の中から1曲選んで、感想なり解説なりを書くというキャンペーンが行われており、僕の心の師匠とも言うべき秋元先生に文章を読んでもらえるかもしれないチャンスということで、投稿することにした。

当該キャンペーンリンク↓

秋元康が心の師匠だなんて薄っぺらい人生だなと思う人は少なくないだろうが、彼の存在なしに僕はここまで生きてこられただろうかと思ってしまうほど、彼の詞は僕の心の中に強く生きている。

なかでも、乃木坂46の『きっかけ』は特別だ。大学受験と高校卒業を控えた当時高校3年生の僕に、前に進む力を与えてくれた曲である。乃木坂にハマりたての僕を一気に沼へ引きずり込むには余りあるほど、パワーと魅力を持った曲だった。

『きっかけ』を聴くと、渋谷スクランブル交差点が頭に鮮明に浮かび上がってくる。(秋元康氏の坂道楽曲はよく渋谷が舞台になっているし、恐らく彼も渋谷スクランブル交差点を念頭においてこの曲を書いたと思う。)異様な人の多さと、立ち止まったら人の流れに持っていかれてしまうあの感じは日本でも有数だろう。

僕が初めて渋谷スクランブル交差点に行ったのはいつだろうか?僕はなんのために初めて渋谷に降りたったのだろうか?記憶には定かではないが、渋谷になんらかの用事があったのだろう。「渋谷はやっぱり人が多いな〜」なんて呑気なことを思っていただろうか。

この曲は、「交差点の途中」で始まる。決して渡り始める前ではない。なぜなら、僕たちは生まれることを望んで、そして生まれて何かをするという目的があって、生まれてきてはいないからだ。気づいたらスクランブル交差点の途中にいて、横断歩道と信号らしきものはあるんだけど、道玄坂の方に行ったらいいのか、宮益坂の方に行ったらいいのか、はたまたセンター街の方に行ったらいいのか、誰も教えてくれないし、他人はまるで行き先が決まっているかのように目的地へ歩いている。それが現実だ。

そんな不安の中で、主人公は青信号のうちにどこかへ渡りきらねばならないのだ。無数の他者が目的地に向かって歩いているから、人の流れに身を任せることはできない。人の流れに身を任せたが最後、足元をすくわれて、いずれ来る車に轢かれてしまう。

大事なのは、やはり足を止めないことだろう。「生きるとは選択肢たった一つを選ぶこと」とあるが、秋元先生は行き先の選択が不可逆的だと言いたいわけじゃなくて、不可逆的なのは時間だけであり、どれだけ蛇行しても行ったり来たりしてもいいと言っているような気がする。ランニングをGPSでトラッキングした時の線が、人生のイメージだ。

スクランブル交差点を渡るたびに、この曲のことを思い出す。信号待ちしている人はどこから来て、どこに行くんだろう。そんなことを僕に考えさせてしまうくらい、不思議な力をもった曲がこの『きっかけ』だ。
"選択"をせねばならない時、いつもこの曲が背中を押してくれている。この曲があるおかげで、自分の心の衝動をちょっとだけ信じることができている。世界中の誰かが道に迷ってしまった時、立ち止まってしまいそうな時、この曲がそっと背中を押して、また歩き出せますように。

(ステマではないですが、貼っておきます。)


追記:『きっかけ』を扱った記事は無限にあるが、僕の大好きなこのnoteを共有しておきたい。大好きで、何度も読み返したくなるnoteだ。


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