試合も、景色も、グルメも堪能。フクアリ未開の地・『南側ゴール裏』の魅力に迫る!
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あなたはゴール裏と聞いて、どんな光景を思い浮かべるだろうか。一般的には「声を出して応援する場所=ゴール裏」とされているが、スタジアムによってはアウェイゴール裏の横にホームサポーター用のエリアが設けられており、そこでは必ずしも声出し応援は推奨されていない。今回はその後者である、フクダ電子アリーナ(フクアリ)の南スタンドゴール裏(以後:南側ゴール裏)からクラブを応援しているねむいさんに話を聞いた。
【プロフィール】
ねむい。ジェフユナイテッド市原・千葉サポーター。サッカーとはほぼ無縁の生活を送っていた2017年7月、たまたまフクアリに行ったことをきっかけにジェフの虜に。翌年はホーム皆勤を達成するなど、南側ゴール裏から熱狂的にクラブを追いかけている。Twitterアカウントはこちら。
※フクアリの南スタンドゴール裏(南側ゴール裏)は上記の図のG〜Hエリア。いわゆる「声出し応援の中心部とは逆側のゴール裏」です。スタジアムによって呼び名は異なりますが、今記事ではそうした立ち位置のゴール裏席を総称して『南側ゴール裏』と表しています。
フクアリの臨場感に魅せられて。
取材班:ねむいさんが書かれたこちらのnoteを拝見し、お声がけさせていただきました。nestとしては、南側ゴール裏から試合を観戦されている方にインタビューするのは初めてなのですごく楽しみです!
まず初めに、南側ゴール裏で観るようになったキッカケを教えていただけますか?
ねむい:2017年に観客として初めてフクアリに試合を見に行った時のことなんですけど、その日は「蘇我のアリオでも行くかー」と思いたって蘇我駅に行くと、黄色のユニフォームを着た人がたくさんいて。「特に予定もないし、見てみよーっと」って感じで当日券を購入しました。サッカーなんてルールも分からなかったんですけど(笑)。
もちろん、スタジアム内のこともよく分からなかったので、とりあえず自由席を買って北側のゴール裏に向かいました。でも試合直前だったので席が埋まっていたんです。その時に「逆のゴール裏、同じゴール裏なのにめっちゃ空いてる!」と気づいて座ったのが南側ゴール裏でした。
取材班:フクアリでの初観戦が南側ゴール裏だったんですね!試合の感想はいかがでしたか?
ねむい:実はその2年前、マッチデーのスポンサーとして試合を見に行ったのですが、メインスタンドの一番上かつガラス越しからの観戦だったこともあり、テレビでサッカーを見ているような感覚でした。でも南側ゴール裏から試合を見て、サポーターの声援を全身で感じることができたり、選手たちが目の前でプレーしていたり、フクアリのすごさに完全に圧倒されましたね。試合も4-1の大勝でした。
取材班:そこから一気にジェフ愛が深まっていったんですか?
ねむい:はい、翌年にはホーム皆勤していました(笑)。
取材班:急展開ですね!(笑)
ねむい:試合を見始めたシーズン、ジェフは「奇跡の7連勝」でプレーオフまで辿り着いたんです。特にプレーオフ行きがかかった横浜FC戦での劇的勝利に立ち会えたのは大きかったですね。フクアリも異様な雰囲気になっていました。プレーオフの結果はダメだったんですけど、次の年への期待というか、一回良い思いすると忘れられないのもあって、気づいたら毎試合行っていました(笑)。
あとこれは語弊があるかもしれないですけど、私が好きなディズニーとサッカーは似ている部分があるように感じます。サッカーの試合はディズニーのパレードやショーで、ユナパ(練習場)でのファンサービスがディズニーのグリーティング(キャラクターとの触れ合い)みたいな。そのあたりに親近感を抱いたのも、ハマった理由の一つかなと思ってます。
南側ゴール裏の良さ①:ゆったり観戦
取材班:では、南側ゴール裏の良さを具体的にお聞きしたいです!
ねむい:1つ目は、のんびりまったりと試合を見れるところです。私はスタグル(スタジアムグルメ)の存在もフクアリに足を運ぶ理由になっているのですが、試合中にもつ煮を軽くつまむくらいにはゆったり過ごせます(笑)。ユニフォームやグッズを身につけている人は北側より少ないので、ジェフ初心者の方でも安心して来れる場所かなと思っています。
取材班:お気に入りのスタグルはありますか?
ねむい:noteにも書いたのですが、『浜茶屋 太海』さんの『おさしみ唐あげ』が好きです!あとはモンテディオ山形戦であれば山形牛を使ったりと、対戦相手によって異なるお弁当を提供している『なかむら』さん。そこの『やきもつ』も美味しいです。
Jリーグを知らなかった私からしたら、スタジアムのグルメがここまで充実していることが驚きでした。お祭り気分というか、「次はこれ食べよ!」って毎試合楽しみにしています。
ねむい:あと個人的には、90分間ずっと立ちっぱなしなのは大変で。中には声を出すのが得意じゃない人もいると思うので、そうした方にも南側ゴール裏はおすすめです。
取材班:そうですよね。冷静に考えると、90分立ち続けるのって大変なことですよね。
ねむい:ほんとにすごいなって思います。たまに北側ゴール裏に行くことがあるのですが、体力的に結構しんどいです…(笑)。
南側ゴール裏の良さ②:ゴールが近い!
ねむい:次に、ゴールが近いことです!前半は南側ゴール裏に向かって攻めることが多いので、前段に座れば目の前でゴールシーンを見ることができます!
取材班:ゴール裏の醍醐味ですね!座って見ることはメインスタンドやバックスタンドでもできますが、ゴール前の迫力を味わうならやはりゴール裏が一番だと思います。
ねむい:私は写真を撮ることも好きなのですが、南側ゴール裏は圧倒的に撮りやすいです。こっちに向かってくるので正面の表情が撮れますし、セットプレーでは横顔が撮れます。選手たちの緊張感や得点した時の喜んでいる姿を間近で感じられるのが楽しいです。北側ゴール裏でも同じことが言えるかと思いますが、声を出して応援している人が多いエリアになっているので、写真を撮ったりゴールシーンをじっくり堪能したいのであれば南側ゴール裏かなと。
取材班:選手を近くで見れるからこそ気付ける部分も多いですか?
ねむい:普段はクールそうに見える選手が勝った時にめちゃくちゃ笑顔になっているのとか、逆に負けたあとにしゃがみこんでしまう選手や、しゃがみこんでいる選手を起こす選手がいたり、そうした人間性の部分が見えることも多いです。
最近だと、鳥海選手がセットプレーの時に毎回手を叩いて選手達を鼓舞している姿が印象的でした。今まではそんなに選手を引っ張るイメージはなかったんですけど、最近は試合後の挨拶でも先頭を歩いていたりするので、そういう選手の小さな変化に気づけるのも面白いです。
南側ゴール裏の良さ③:応援を楽しむ
ねむい:3つ目は、北側ゴール裏の応援を楽しめることです。南側ゴール裏には、北側ゴール裏からの声がまっすぐ届きます。私が初めて行ったときも、この向かってくる声の迫力に衝撃を受けました。
取材班:なるほど…。しかも南側ゴール裏から見える景色ってジェフ一色なので、視界においては完全ホームを味わえちゃうんですね。
ねむい:そうですね。特に好きなのが黄色いユニフォームで埋まっている北側ゴール裏と、選手入場時にビッグフラッグが掲げられたゴール裏の景色です。
取材班:この景色を堪能できるのは南側ゴール裏の特権ですね!
ねむい:はい!佐藤勇人選手の引退セレモニーで勇人選手のビッグフラッグが掲げられて、それをスマホのライトで照らしているのがすごく綺麗で印象に残っています。正面でどーんと見れたのは嬉しかったです。
取材班:そういえば、こういった壮観なゴール裏の写真って(アウェイ席に座る方か)南側ゴール裏の人が撮っているんですね。
ねむい:そうですね、私はアウェイサポーターの近くに座っているのですが、アウェイの応援を楽しめるのも魅力の一つです。これを楽しいと思うかは人によりけりだとは思いますが…。たとえば、FC琉球さんは指笛を鳴らしていたり、徳島さんは鐘を使っているのがすごい独特で「なんだこれ!」ってポジティブな意味で驚きました。応援には地域色が出るので、横で色々聞けるのは楽しいです。たまーに連られそうになっちゃいますが(笑)。
取材班:でもこうした魅力ってどのスタジアムの南側ゴール裏でも享受できるわけじゃないと思います。
ねむい:フクアリはピッチと近いし、設備的にもしっかりしています。場所によっては売店やお手洗いの数が少なかったりしますが、フクアリは充実しています。自分はいいスタジアムでサッカーを楽しめているんだなって誇りに思えますね。
南側ゴール裏があったから、サッカーにハマった。
取材班:南側ゴール裏にホーム側のエリアを設けているクラブは一定数ありますが、そこから観戦する魅力を発信している方はあまり多くないのかなという印象です。その中でねむいさんはnoteを書かれていますが、どうして発信しようと思ったんですか?
ねむい:ネットを見ていても「サッカー初心者はどこで見ればいい?」って話題に『南側ゴール裏』の選択肢が出てこないことに疑問は感じていました。私としては、こんなにいい席なのに良さが知られていないのはもったいないし、もう少し埋まってほしいなと思っています。「いつも北側で見ているけど今日は疲れているから南側で」みたいな感じでもいいので来てもらえたら嬉しいですし、誰も書かないなら自分が書いてみようかなと思ってnoteを投稿してみました。
取材班:たしかに、「スタジアムのどこで見るか」という話になったときに、ゴール裏かメインスタンドの2択になっていることが多い気がします。その時のゴール裏は、跳ねて応援する方のゴール裏を指していますよね。
ねむい:声を出したい人はゴール裏に行ってみよう!そうじゃない人はメインスタンドに行ってみよう!ってなることが多いように感じます。
取材班:ちなみにコロナ禍よりも前、南側ゴール裏はどれくらい埋まっていたんですか?
ねむい:半分も埋まってないです。隣の人はほぼいないですね。私は結構前の席で見ているんですが、それでも結構ガラガラで。
取材班:ゴールの目の前でも空いているんですね。
ねむい:こんなに近くていい席なのになんでいないんだろう?って思っちゃいます。私は「南側も声出していこうぜ!」とは思っていなくて、家族連れとかご年配の方とか、試合をゆったり見たい方がもうちょっと増えたら嬉しいです。
取材班:ゆったり見れるのは魅力だと思うんですが、実際に南側ゴール裏の方々は試合中にどういったリアクションをしているんですか?
ねむい:手拍子もしますし、タオルを掲げたりもしますし、一つ伝えておきたいのは決して無関心なわけではないんです(笑)。ゴールが決まったら近くの人とハイタッチすることもありますし、ただ声を出すことはそんなにないってだけで。
取材班:感情表現の仕方って人によって全然違いますし、スタジアムの中に色んな温度感の空間が存在しているのはいいですね。
取材班:フクアリの中に南側ゴール裏のような温度感の場所がなかったとしたら、ここまで通い詰めていたと思いますか?
ねむい:仮の話ですが、もし全ての席で声を出す応援が強制されてしまったら、おそらく見に行ってないです。声を出して応援したい人もいると思うし、ゆっくり見たい人もいると思うんですけど、個人的には「声を出さない=熱狂的じゃない」とは限らないと思っていて。2階席で静かに見ているけどアウェイ含めて全試合見に行っている人も熱狂的って言えると思うんですよ。そういう意味で熱狂的なサポーターって実はスタジアム内の色々な場所にいる気がしますね。
友人を誘いやすいスタジアムに。
取材班:サッカーに全く興味のないところからJリーグに魅了された目線で、ジェフを含めて新規のお客さんを増やすためにはどんなことが必要だと考えますか?
ねむい:全く興味のない人がある日突然、「そうだ、フクアリに行こう」って思うのは奇跡的なことだと思うんですよね。私はそうでしたが、このパターンはほぼないと思います(笑)。
個人的な意見としては、サポーターである私たちが身の回りの友人を誘ってフクアリに連れていくことが大事だと考えています、それで、「その試合が劇的だったからまた見てみたい」とか「スタグルまた食べたい」とか「今回は大人しく見てたけどチャント覚えて跳ねて応援したい」とか「顔がかっこいい選手がいた」とか、試合を見に行ったことで色んなきっかけが転がっていると思うので、そのどれかに引っかかれば興味を持ってくれるのかなって思います。
実際、私も友達を誘ってフクアリに来ることがありますが「スタグルまた食べたい!」みたいな感じでリピートしてくれたりするので。選手と写真が撮れるイベントがある日とか、クラブ側の施策に合わせて誘ってみるのもいいかもしれません。
取材班:今回の取材で挙げていただいた南側ゴール裏の魅力のように、スタジアム内に色んな楽しみ方が存在していることが広まっていくと、より誘いやすくなるでしょうね。
そうした魅力を発信したことで、何か気づいたことはありましたか?
ねむい:正直あの記事を読んで「行ってみようかな」って思ってくださる方がいるとは予想していませんでした。気づかれてないというか、やっぱりちょっと存在が薄い席なんだなぁって印象は受けました(笑)。
今はコロナの影響でどの席も同じような観戦スタイルになってしまっていますけど、落ち着いてきたら南側ゴール裏の良さをもっと広めていきたいです。
取材班:今回の取材を通じて、クラブ愛の強さは声の大小に比例するわけではないことを再確認できました。
ねむい:私にとってのジェフは、今や完全に生活の一部(笑)。ジェフのことをSNSで見ない日はないですし、イベントがあれば試合日以外でも行っちゃいますし、毎日刺激があってすごく楽しいです。
クラブとしてはJ1から遠ざかってしまっているので、まずは2桁順位から脱出していただいて、今年よりは来年、来年よりは再来年って感じで着実に上に行くことを期待しています!
取材班:最後に、ねむいさんがスタジアムに行く一番の動機は何ですか?
ねむい:勝つこと!今日紹介したようなスタグルや写真撮影や両サポーターの応援を見ることももちろん楽しいですけど、一番は勝利ですかね。勝ったら嬉しいし来てよかったと思えるし、そのためにフクアリに行ってるんだなって思います。
取材班:一番最初に勝利が来るとは、ちょっと意外でした。
ねむい:ジェフのことは大好きです。でも先ほど言ったように、毎試合90分間声を出し続けるのはちょっと厳しかったりするので、座りながらでも熱狂的にジェフを追いかけていきたいです。
だから私には、南側ゴール裏が一番合っているかなって思います。
【了】
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