12年前、応援席からサガンティーナへ。"生え抜きメンバー"KAORIに宿るサガン愛。【サガン鳥栖】
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Jリーグには、90分間の試合以外にもたくさんの見どころがある。サガン鳥栖にとって、ガールズユニット『サガンティーナ』のパフォーマンスはその一つだ。ピッチ上で元気よく踊る彼女たちは、どのようなバックグラウンドを持っているのだろうか。今回はサポーター出身であり、2008年からの12年間をメンバーとして駆け抜けたKAORIさんにフォーカスしてお届けする。
【プロフィール】KAORI。サガン鳥栖を盛り上げるガールズユニット「サガンティーナ」マネージャー。サガン鳥栖がJ2で戦っていた2008年に入団し、最古参として今年で13年目を迎える。現在はマネージャーとしてメンバーを支えている。Twitterアカウントはこちら。
取材班:まずはじめに、『サガンティーナ』とはどのようなユニットなのか教えていただきたいです!
KAORI:私たちはサガン鳥栖を盛り上げるガールズユニットとして活動をしています!今シーズンは13名のメンバーと3名のマネージャーで、主にサガン鳥栖のホームゲームや地域のイベントに関わらせてもらっています。
取材班:ホームゲーム時にはどんなことをしているんですか?
KAORI:昨シーズンは『Sagantina Welcome Dance Stage』という試合前のウェルカムダンスや、試合前やハーフタイムにピッチで踊ること、あとはサポーター向けのフェイスペインティングです。また、アウェイサポーター向けに佐賀の特産品を配るなどの活動をしています。
取材班:ダンスのイメージが強かったのですが、ダンス以外にも様々なイベントに参加されているんですね!
KAORI:そうなんです。サガンティーナはダンスチームではなく、立ち位置としてはガールズユニットです。ダンスメンバーとイベントメンバーに分かれていて、実際にダンス未経験からはじめたメンバーもいるんですよ。
取材班:その中でKAORIさんは、メンバー歴が最も長いとのことですが。
KAORI:はい。2008年から昨年までサガンティーナとして活動させていただき、マネージャー歴も含めて今年で13年目になります。同じくマネージャーのREIも今年で11年目でして、かなり長くサガンティーナに関わっている2人になります(笑)。
取材班:選手だとしたら、レジェンド級の所属年数ですね!
KAORI:そう仰っていただけることもあります(笑)。でも私はリーダーっていう感じでもなくて。どちらかというとサポートに回ることが多い役回りです。1年目のメンバーもいるので、みんなの話を聞くことを意識して活動しています!
サポーターからクラブの一員に。
取材班:KAORIさんがサガンティーナに入ったきっかけは何だったんですか?
KAORI:私はもともと家族がサガン鳥栖ファンで、物心ついたころには既にスタジアムで応援していました。サガン鳥栖は『鳥栖フューチャーズ』というクラブが解散し、その後の署名運動などによって設立されたクラブなのですが、私はそのフューチャーズ時代からスタジアムに行っていました。
そんなある日、たまたまピッチで『サガンティーナ』が踊っている姿を見て、「私もサガンティーナの一員としてサガン鳥栖を盛り上げたい!」と憧れを抱いて応募したのがきっかけになります。
取材班:サポーター出身だったんですね!声援を送る立場を離れて、クラブの一員になったと。
KAORI:幼少期からサガン鳥栖が日常の一部でしたし、家族からも「やるからには頑張れよ」って感じで応援してもらえたので、ダンスは未経験だったのですが思い切って入りました。
でも思った以上にホームゲームの日が忙しくて、ほとんど試合を見れないことは驚きでしたね。正直、試合を見たい気持ちもちょっとはありましたが(笑)、そこは割り切って役割を全うしようと思って活動してきました。
取材班:試合を見れないほど忙しいんですか…!
KAORI:ハーフタイムにダンスを踊るので、その練習や準備をする関係で特に前半は見れないことが多いです。でも可能な限り控室から試合を覗いていますし、試合に勝てば「わー!勝ったねー!」という感じでみんなで盛り上がっちゃいますけどね!
取材班:サポーターとして日常的に試合を見ていたKAORIさんにとって、試合を見れなくなるのは結構大きなことかと思うのですが、サガンティーナの活動にはそれに勝るものがあったんですか?
KAORI:サポーターの皆さんの存在が本当に大きくて。踊っているときの歓声だったり、試合終了後にお見送りをするときだったり、サポーターの方々からかけていただく声が私のモチベーションでした。サガン鳥栖のサポーターはとにかく温かい方が多いんです!
J1昇格。取り巻く環境が変わった。
取材班:入団されたのが2008年、当時のサガンティーナは現在と同じような活動内容だったんですか?
KAORI:今と比べて露出の量は圧倒的に少なかったです。やっていたのはハーフタイムにピッチで踊ること、ハーフタイムの中継に出演して告知をすること、フェイスペインティングくらいでした。
取材班:今となってはクラブの顔の一つであるサガンティーナにも、苦労した時代があったのですね。
KAORI:今でこそサガン鳥栖サポーター以外の方にも認知されるようになってきましたが、当時は地域のイベントなどで「何のグループですか?」って聞かれることも珍しくありませんでした。
スタジアムには空席も目立っていましたし、私自身もっと盛り上げたいとは思っていたのですが、何をすればいいのか全く分からず…。とにかく与えられた仕事に全力で取り組むことだけを意識していました。
取材班:そうなるとやはり、2011年のJ1昇格が大きな転機でしたか?
KAORI:間違いないです!サガンティーナとして活動する中で最も印象に残っているのが、2011年のJ1昇格です。古くから応援しているサポーターとしても「いつ昇格するんだろう」と心待ちにしていたので、昇格が決まった時は本当に嬉しかったです。
その日はちょうど、スポンサーさまのイベントに参加していたのですが、J1昇格が決まって花束をいただいたのをよく覚えています。メンバーはみんな号泣でした。
取材班:J1に昇格して、サガンティーナを取り巻く環境はどう変わりましたか?
KAORI:メディアに出演してサガン鳥栖の告知をすることが一気に増えました。もともと専門チャンネルには出させていただいていたのですが、昇格したあとは地上波の全国放送や地方テレビ、ラジオ番組で話す機会をたくさんいただきました。
近年ではフェルナンド・トーレス選手のような外国人選手の獲得もそうですが、個人的には有名なアーティストの方と共演できたことが嬉しくて。2008年に入った時は、まさかサガン鳥栖がアーティストを呼べるクラブになるとは思わなかったので、夢のようでしたね。
取材班:サガン鳥栖がどんどんと全国区になっていくに連れて、KAORIさんの心境にも変化がありましたか?
KAORI:サガンティーナの中では「プロ意識を持とう」と言い合っていました。メディアに出るならMCの能力も必要になりますし、私たちも今まで通りじゃダメだよねと実感しました。
ダンスのパフォーマンスに関しても、歴や経験は関係なく、練習でやっていることを最大限に披露することを常に目指しています。サポーターの方々をいかに盛り上げるかとか、どんな表情で踊るとか、細かい部分により高い意識を持って臨むようになりました。
取材班:チームと同様に、サガンティーナがレベルアップする必要性を感じたのですね。
KAORI:まさにその通りです!私たちは憧れられる存在になることを目指しています。男の子はサッカー選手になりたい、女の子はサガンティーナになりたい。サガン鳥栖を見に来た子どもたちがそう思えるように、日々がんばっています。
勝っても負けても、常に笑顔で。
取材班:サガンティーナとしての活動に、KAORIさんはどんな価値を感じていましたか?
KAORI:うーん、価値ですか……。元気を与える、ですかね!
私たちは「サガン鳥栖を盛り上げたい!」という一心でやっていて。自分で言うのもおかしいんですけど、周囲に元気を与える『サガン鳥栖の華』になれたらいいなと思っています。
取材班:なるほど!では周囲に元気を与えるために意識していることはありますか?
KAORI:常に笑顔!特に負けた試合はサポーターさんの顔も沈んでいるので、そういう時こそ私たちは笑顔でいるように心がけています。
取材班:たしかに、負けた試合の後って意気消沈している方も多いでしょうから、サガンティーナの皆さんが笑顔でいることはサポーターにとっても大きい気がします。
KAORI:私もサガン鳥栖が大好きなので、負けた後はぜんぜん落ち込むんですけど(笑)、でもサポーターさんをお見送りする時は笑顔でいようって決めています!
取材班:インタビュー冒頭でも仰っていましたが、KAORIさんにとってサポーターの存在は本当に大きいんですね。
KAORI:大きいです。試合前だったら「今日はがんばろうね」「今日は絶対勝とうね」とお声をかけてもらったり、試合後は「頑張ってくれてありがとう」と言っていただいたり、サポーターさんとの交流が何よりのモチベーションです。
取材班:「頑張ってくれてありがとう」って言葉をいただくとは、サポーターからしても一緒に戦っている仲間なんですね。
KAORI:私たちも、サポーターも、チームも、みんなが一丸となって戦っているイメージは持っています。たとえばハーフタイムのダンスパフォーマンスでは、チャントの原曲に合わせて踊っているのですが、それもスタジアムに一体感を出せたらいいなと思ってやっていることです。
取材班:どの曲に合わせて踊るかは、サガンティーナの皆さんが決めているんですか?
KAORI:実は私たちには、ダンスの先生がいなんですよ。なので選曲から振付まで、すべて自分たちで考えてやっています。「なるべくサポーターさんが知っている曲を踊りたいね」というのがメンバーの総意であり、その思いが代々受け継がれていっています。
12年間踊り続けてこれた理由。
取材班:ズバリ、KAORIさんが12年間もサガンティーナの一員として踊り続けてこれた理由を教えていただきたいです!
KAORI:なんだか「気づいたら12年間いた」って感じがするんですよね。
取材班:12年間を「気づいたら」の一言で表すとは…!(笑)。
KAORI:サガン鳥栖って、毎年新しいことにチャレンジするクラブなんです。私自身もいろんなことにチャレンジするのが好きなんですが、どんどん進化するサガン鳥栖と一緒にいるのが楽しくて。
取材班:仰るように、ラッパー・DOTAMAさんとのコラボや、『ありがトーレス!』などユニークな取り組みが多い印象はあります。
KAORI:他にも野球チームの福岡ソフトバンクホークスさんとコラボしたイベントを大々的に行ったり、記念ユニフォームの無料配布も毎年やっていますし、ここまで色んな挑戦をしているクラブはなかなかないと思います。
サガンティーナのメンバーとして12年間活動してきたとはいえ、毎年毎年違うことをしている感覚でした。
取材班:「チャレンジ」というワードが出ましたが、KAORIさんもサガン鳥栖でたくさんのチャレンジをしてきましたか?
KAORI:選曲からから振付まで自分たちでやっていること自体がチャレンジですし、今年はサガンティーナ史上はじめてとなるオリジナル楽曲『Go-power to the dream』のレコーディングも行いました。それに合わせた振付も考えたので、今シーズンはオープニングのダンスにも注目してほしいです!
取材班:踊るだけじゃなくて、歌まで歌っちゃうんですね!他にも自主的に行った取り組みはありますか?
KAORI:直近だと、ステイホームの動画を作ろうとメンバーから発信があり、それをクラブに提案して公式Twitterにあげてもらいました。あとは少し前ですが、サガンティーナが女子高生や小さい子向けにプロデュースしたグッズを販売してもらいました。
取材班:お話を伺っていると楽しいエピソードしか出てこないのですが…(笑)、苦労とかってなかったですか?
KAORI:辛いことよりも楽しいことの方が多かったから、12年間も続けてこれたんだと思います。炎天下の中で踊り続ける夏のホームゲームとか、キツいことももちろんありましたけど、サガン鳥栖が勝てばすべてチャラになるというか(笑)。
あと、サガンティーナではチームワークを大事にしていて、メンバー同士で支え合えたことも長く続いた秘訣かなって思います。
取材班:サガンティーナのメンバーの皆さまとの絆も、長く続いた原動力だったんですね。
KAORI:仲間を超えた、家族みたいな存在です。みんなそれぞれの予定がある中、多いときだと週5日会うようなこともありましたから。
取材班:あ、皆さんはそれぞれ別に仕事をされているんですか!
KAORI:そうです!普通に働いています。サガンティーナはボランティアとして仕事終わりに練習をしたりと、仕事とサガンティーナを両立しながらみんな頑張っています。
取材班:その環境でこれだけ続けているのは…。
KAORI:(サガン鳥栖が)好きなんだろうなと(笑)。
取材班:間違いないですね…。KAORIさんは「サガン鳥栖のために」って想いと、「自分がやりたい」って想い、ご自身ではどっちが強いと思いますか?
KAORI:「チームのために」って想いの方が強いと思っています。「少しでもサガン鳥栖の支えになれたら」と思って活動してきましたし、立場は変われど、スタジアムで応援していた頃からサガン鳥栖を応援する気持ちは変わっていません。
取材班:物心ついた頃にはスタジアムにいて、今もその想いを持ち続けている。サガン鳥栖を応援することはKAORIさんの宿命にさえ思えてきます。
KAORI:たぶん私、いい意味でいろいろ麻痺ってるんですよね(笑)。
サガン鳥栖に初タイトルを。
取材班:今年、マネージャーとしてサガンティーナに復帰されましたが、その経緯を教えていただけますか?
KAORI:環境の変化があり、メンバーとしては続けられなくなってしまいました。でも何かしたい、サガン鳥栖に貢献したい、って気持ちがあった時に、社長からお声がけをいただいてマネージャーに就任しました。
取材班:マネージャーとはどのような役割を務めるのですか?
KAORI:今年からできた役職ということで、手探りで色々と進めています。これまで現役メンバーとしてやってきた経験は生かせると思いますし、引き続きメンバーに寄り添うことを大事にしていきたいです。
取材班:最後に、今後もサガン鳥栖に携わっていくにあたり、何か目標があればお聞きしたいです。
KAORI:私たちサガンティーナが、皆さんを笑顔にする存在であり続けること。あとはJ1に昇格して以降、まだタイトルを獲れていないので、皆さんと一緒に獲りたいって想いがあります。
これからも一緒に、皆さんでサガン鳥栖を盛り上げていきましょう!
【了】
※写真提供=株式会社サガン・ドリームス様
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