となり
ずっと 誰かの心のど真ん中になってみたかった。
あなたがいないとだめなんだよ、って言われたい。
自分じゃない他の人には取って代わることができない誰かの隣が欲しかった。
小さい頃から相手が求めてる言葉を探すのに必死だった。みんなの前で面白いことを言ったり、何も気にせずに親友って言えたり、あの人が好きなんだと内緒話ができるまわりの人たちにわたしもなりたくて毎日すごく必死だった。親友って呼んだら、わたしが好きだと思ってるって知ったら、相手は嫌かもしれない。みんなを笑わせるようなことは言えないしできない、少しいたずらしてみて面白い子になる勇気は無い。だから選んだのがきっと優しい子になることだったんだと思う。
優しいね、とたくさん言われながら 21歳になった。
優しいね、と思われたくてこんなに頑張ってきたんだからそうじゃなきゃ困る。心の中でそんなふうに返しながらそんなのが本当の優しさじゃないことも分かってる。
頑張って頑張って頑張ってきて、私が掴んだものはなんだったかな。
失くしたものは人と深く関わる力だった。
こんなふうに考えてることが重かったり面倒なことばかりだから、やっと分かってもらえるかもしれない、と思う人に出会ったら近くに行こうとしすぎてしまう。
どんなに頑張っても どんなに仲良くなれても
いつも自分よりもその人の近くにいる人がいる。
自分にとって1番に悩みを話したい人が、1番に悩みを打ち明けるのは自分じゃない。
急にふうっといなくなってもすぐに気づいてもらうことすら出来ないんじゃないかと思うと怖かった。
こんなふうなわたしのまわりの人への視線が、
もしかしたら今までいろんなあたたかい気持ちに気づかずに通り過ぎさせて来てしまったのかな。とも思う。
大学生になって少しして人生で本当に1番、大切にしたいと思う人が現れた。もしかしたら全部話しても近くに行っても受け入れてくれるかもしれないと思った。
誰かの1番隣にいけない自分の人生の中で、恋人は、見えてた狭い世界をひっくり返すくらい大きな存在になった。
だけどよく怒ったり泣くようになったりし始めたのは付き合いはじめてからだった。他の人にそういう態度をとる自分を知ってしまって、優しくなろうと頑張ってきた自分を自分で壊している気がしてどうしようもなくなった。
自信がない と言うと自分の悪い所ばっかり見ないでね、とよく言ってもらう。そうじゃないと思う。
自信がなくて自分を好きになれない人たちはきっとみんな、毎日自分のいいところを探し続けてる。
毎日些細なことで 自分はまだ大丈夫、って言い聞かせてるんじゃないかな。わたしはそうだから。
自信がないって言っておくことは「わたしはこんなに駄目なんですわかってます」って言葉で自分を守ってくれる。そうすると、まわりの人から自分で思ってるよりも駄目なことは言われないで済む。そうやって生きてきたから、今こんな自分なんだろう。
その人の全部を知っていたいとか、1番近くにいたい、
が膨れていって自分でもコントール出来なくなった。
馬鹿だなあ、と思う。
最初からなんでも言ってみればいいのに、優しくなろうとする癖がそうさせてくれない。その結果が1番優しさから遠いものを連れてくる。
たくさん繰り返した。出会ってから。
いままで頑張ってきたつもりだったいろんなことは、
この人をこんな形で傷つけるためのものじゃないと思いたい。
自分と付き合っていく方法はまだちゃんと掴めないけどきっと生きてたらいつか視界が開けるんだろうなって思うからまだ毎日寝て起きられてる。
1年後も10年後も、自分の未来に楽しみが待ってるかもとは思えない。だけど、ふたりで一緒に笑ってる未来なら少しだけ、想像できる。それが隣にいたい理由だったのに自分の隣でこの人はずっと笑ってられるのかな。
もっと遠いところに行きたい。
花の写真を撮りたいし、
ここにしかないと思える景色に出会いたい。
違う国のことばで話してみたいし、
思いっきり歌ったり弾いたりしたい。
遠い場所に行きたい、が最近の頭の中占めてるなあと思う。
頑張って頑張って頑張って、たら、いつの間にか本当に優しくなってたらいいな。
久しぶりに辻村深月の『傲慢と善良』を読んだ。
善良になろうと必死だったからいつの間にか、誰かを善良かどうか勝手に見定める傲慢さに覆われてる。
全部じゃなくても真実ちゃんみたいな気持ちをこの社会の少なからず色んな人が持っているなら、わたしだってきっとまた前を向けると思う。
私が大好きな、最後に石母田さんが真実ちゃんに言う台詞。ネタバレだからごめんなさい。
突き放して、それでもこの人は待っててくれるのかわたしはずっと試し続けてる気がする。それで安心したい。
今度こそもうダメだと思ってもそれでもまたそばに居てくれるひとが自分にはいるんだと思いたい。
真実ちゃんの気持ちが痛いほどわかる。もう会いたくないほど傷ついていても許せなくても、どんなときも何をしていても 綺麗に撮れた写真を見せたくなる。会いたくないのに1番会いたい。
すごく身勝手で図々しくて傲慢。
明日まだちゃんと生きてるかもわからない。
待ってて、その人がそこにいるって言うのは気持ちの問題だけじゃないんだってことを、どうしてわたしたちはすぐに忘れるんだろう。
また何回でも読もう。
でもきっとこの本に助けて欲しい時のわたしは大ピンチだ。この本読んできっとただ悲劇のヒロインぶっていると思う人も少なくないって想像できる。こんなこと考えて生きてるからそんなんなんだと。それでも私はこの本に救われてきたから。わたしの、わたしだけの話の中で悲劇のヒロインになってみたっていいじゃないか、と思う。
自分でもっとたかーーい壁も乗越えて行けるように、生きていく力も気持ちももっと強く持てるようになりたいな。