(仮題)ファンタジー
Twitterで言葉を募集して作る小説
ファンタジーの一部です
いつ見ても美しい舞いだ。雪の中を音もなく舞う姿は遠目に見ても幻想的で、柄にもなく時を忘れそうになる。
俺は煙草を取り出し、口元に咥えて火を点けた。煙で満たされた息は雪のように白く、寒空へと溶けていく。
なぜこんな状況になったのかを振り返ろうと思ったが、やめる事にした。今考えても詮ない事だ。やる事は変わらない。
深々と降る雪は全てを銀色へと染め上げていく。まるで舞手だけを置いて世界が変わっていくかのように。
心まで冷えそうな光景だ。俺は苦笑いを浮かべながら煙草の火を消した。
気配を殺して投げたナイフが舞いの流れで弾かれる。それ程意外ではなかったが、不意打ちは意味を為さなかった。
舞手はこちらを見て一瞬驚いたような表情をした後、諦めたような笑顔を浮かべる。
「やはりあなたが来てしまうのですね」
舞いを止める事なく声を掛けてくる彼女に向け、俺はハンドガンを続けざまに発砲した。
全ての弾丸が対象に当たる事なく地面に叩き落とされたが、弾丸から巻き上がる煙幕があっという間に彼女を包んでいく。
「もう言葉も交わしてくれないのですね…」
声を頼りに三本のナイフを投げるが、手応えがない。恐らく弾かれたのだろう。
手投げ弾を投げようとした刹那、彼女の懇願するような声が耳に入ってしまった。
「言葉を交わす事が叶わないのであれば、せめて拳で語り合ってくれませんか?」
拳で語り合う…?いきなり台本を間違えたかと思うような場違いな台詞に、俺の手が一瞬止まる。
『どんな相手でもな。最後には拳で語り合えば分かり合えるんだよ』
いい加減な格言を教えるんじゃなかった。こんな場面に響いてくるとは。過去の自分を呪う。
拳か。手の中にあった手投げ弾を後方に放り投げ、短剣を構える。体術はそれ程得意ではないから、武器の携行くらいハンデだろう。
気は進まないが、最後の望みくらい叶えてやらないとな。
爆風と共に前方の煙へと突進した俺を、鋭い横薙ぎの蹴りが迎える。
間一髪で踏み止まり避けたが、もう片方の脚から繰り出された蹴りで短剣が吹き飛ばされてしまった。
「拳で語り合うって言いましたよね」
満面の笑みで言う彼女。