ダンス:Merce Cunningham, « Programme de Pièces Rares»
2019/10/4 @Hôtel de ville
Festival d’automne
この日は、白夜祭、La nuit blanche が行われていた。このお祭りの目玉である仮装パレードは、劇場近くのConcorde広場からスタートする。その出発時間ちょうどにConcorde駅から這い出てしまった。人人人の波だし、concorde広場は入場規制みたいなのかかってるし、google mapはバグっちゃうし、着いてみれば駅から非常に近い所に劇場はあったのだが、かなり遠回りしてしまった。
マース・カニングハムを観るのはこれが初めてだった。今年が生誕100周年ということで、Festival d’automneでもカニングハム関連の上演が多い。
演者との距離が近い、客席が区切られていない、小さな劇場だった。
初めてカニングハム作品を観た。
アメリカ人の振付家であるカニングハム(1919-2009)は「抽象」「アーティスト(ジョン・ケージ、ロバート・ラウシェンバーグ など)との協働」「理論の実践」「自在に色と形を操る」…みたいなイメージ。らしい。
ジョン・ケージとの協働が特に有名で、チャンス・オペレーションを作品作りに導入している。振付家だけれど、自身もダンサーである。晩年、自分のダンスのデジタル技術によるモデル化に取り組んだらしい(調べてみたい)。マーサ・グレアム舞踊団の出身で、モダンダンスから、ポスト・モダンダンスへの移行を決定づけた人。ジャドソン ・ダンス・シアターとの関わりも深い。
あんまり「面白い!」というイメージはなかった。だからこそ、観ててとても面白くてすごくびっくりした。もしかしたら、ダンサーたちの試行錯誤が一周回って改めてカニングハムが面白くなる、という地点にいるのかもしれないが。
Programme de Pièces Raresでは、4つの作品が上演された。
①Totem Ancestor (1942)
一人の男性ダンサー(背は低い、猿っぽいレオタードを着ていた)が、とにかくびっくり動きをする作品。正座の状態からジャンプして飛び上がって、また正座にジャンプしながら戻って…という、曲芸師的な動きを繰り返しながら、ステージ上を斜めに横断する。人体ってすげーと思わされる。どういう訓練をしたらああいう動きができるようになるんだろうか。
音楽はジョン・ケージ。カニングハムが作ったソロ作品の中でも、一番古い部類に入る。これはまだナラティブの要素があるとか。マーサ・グレアム舞踊団のダンサー時代に作った作品らしい。
②Second Hand(1970)
一人の男性ダンサー(やや背は高い、Tシャツにズボン、普通の服)が、ゆっくりと腕を回したり、足を曲げたりする。静かな動きなんだけど、ああ同じ動きはできないな、と思わされる。ラジオ体操を見ている気分になった。これも音楽はジョン・ケージ(曲名はCheap imitation)
③Solo(1973/1975)
舞台の端でおじさんが、色々な植物(?)を使って、音楽を即興で(?)奏でる。その横で、青い服を着たおじさんたちが、舞う。キツツキとか、リスとか、小動物っぽい動き。森の中の動物たちがアハハみたいな感じの。可愛い作品だった。だけど、観客を笑わせようとしているのではなくて、動物の動きを完全になぞろうとしているように見える。それがちょっと怖かった。題名はSoloだけど、ソロ作品ではなかった。サンディエゴの動物園を見に行った後に作ったらしい。
④Paris Story - A Re-imaging of story(1963)
音楽がTochi Ichiyanagi, Sapporoとなっているがどういうことだろうか。
いろいろな衣装を着つつ脱ぎつつ、5~6人のダンサーたちが舞台上で動き回る。舞台上手でパンを焼いていて、焼きあがると煙がでて、すごくいい匂いが立ち込める(焼いたパンは、終演後に少年がかじっていた)。これすっごく面白かった。しっちゃかめっちゃかの大騒ぎ、って感じがとても開放的だった。パンフレットに色々書いてあるけど、疲れたのであとで読む。
カニングハムの時代のアートの中心地はやっぱりまだアメリカにあるのだと思い起こした。世界はそこそこ広く、当たり前だけど全部が全部同じ場所で起こっているわけではない。アメリカの面白くて底がスコーンと抜けていっちゃう感じ、好きだなと思いつつ、まだ遠い。
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