演劇:Robert Wilson, « CocoRosie Jungle Book »

2019/10/10, @Théâtre de la Ville

Festival d’automne

ロバート・ウィルソン(御年77歳!)が、Théâtre de la Villeで作った新作である。原作はラドヤード・キプリング(ノーベル文学賞を1907年にイギリス人で初めて受賞した)が1894年に出版した小説で、数々の実写化・アニメ化作品がある(特に有名なのはディズニー版。おぼろげながら記憶がある)。キプリングの作品で他に有名なのは『プークが丘の妖精パック』(読んだことはないけど家にある)。キプリングの作品は、時代と場所によって評価が異なる。彼が幼年期を過ごしたインドを題材にしていること、東洋蔑視の思想などから、ポスト・コロニアル批評においては微妙な評価をなされる、らしい。日本版ウィキペディアを参照。

ロバート・ウィルソンは、『浜辺のアインシュタイン』『Le regarde su sourd』の演出などで有名なテキサス出身の演出家。アメリカ、1970年代に起こった、非文学的、視覚・聴覚優位でmixed media、スペクタクル的な「イメージの演劇」の騎手として知られる。これは、アメリカを中心に演劇・パフォーマンスの歴史を追った内野儀先生の『メロドラマからパフォーマンスへ』(2001年)に詳しい。

ロバート・ウィルソンは、なんだかパフォーマンスっぽいイメージが強い人なのだけど、リア王や蝶々夫人といった、古典じゃんみたいな作品も演出しているらしい。知らなかった。というか全部見たことないので今度見たいと思う。

題名についているCocoRosieとは、音楽を担当したグループの名前である。

「子供向け」に作られた作品であるらしい。たしかに、子供多かったけど、大きなお友達でメモ片手にまじめに観てる人もいたよ。

劇場で配られているパンフレットに、ロバート・ウィルソンのインタビューが載っていた。そこでウィルソンはこんな風に話している。「スペクタクルは全ての人に開かれていて、偉大な作品というものは、年齢・学歴etc問わず、どんな人からも賞賛される作品だ。私は、ガートルード・スタインが、モダン・アートについてどんな風に考えているか聞かれたときに答えた言葉が好きだ。『私はそれを見るのが好きなんです』」だからこの作品も、「子供向け」といいつつ、全ての人が楽しめるように作っているらしい。

私としては、めっちゃ期待値高かったけど、そんなに面白くなかった。

たしかに、照明のこだわりはものすごかった。めちゃめちゃ繊細で、えっそこだけ明るくなるんだ…おお、すごい色が混じった…ひえ〜おんなじセットでも光でこんなに変わるかぁ…というような。今までアナログテレビみてたのが、急に4K8Kのスーパーハイビジョンテレビに変わったくらい、解像度が違う照明って感じだった。演劇を観ているというより、よくできたアニメーション作品を見ているような感覚。観終わったあとで思い出せるシーンが、ほかの作品だと大体2つくらいなのだが、この作品は10くらい思い出せる。それくらい、視覚に優位な作品だった。「イメージの演劇」とは納得。唐十郎の劇団唐組のような、テント芝居の照明とは真反対。

題材の問題なのかもしれない。

ちなみに演者は3000人の中からオーディションで選んだらしい。

内野先生の本をまた読み直してみようと思った。何度読んでも、情報量が多すぎて頭にあんまり入らないんだな…




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