ピューリッツア賞作家すら解雇される時代に
一時期iPhoneで撮影した写真のことを「iPhonegraphy」と呼ばれていた。今でもハッシュタグで使われることはあるが、かつては写真機ではなく、iPhoneで撮影した特別感という付加価値があり、若干意味合いは異なる。
今では、スマートフォンで撮影された写真がアート作品として扱われること自体珍しいことではなくなり、2012年のパリフォトの会場でInstagramの作品が日本円で50万近い値段で取引されていた。本来の意味での「iPhonegraphy」という言葉自体はとっくに消滅した。
少し前に、衝撃的なニュースが世界を駆け巡った。
SNSに「もしオイラが通信社の社長だったら、各カメラマンにiPhoneを十台ずつもたせたせるよ。その方が効率いいではないか」なんて冗談半分で書いていたら、まさかそれが現実のものになってしまったのである。
1948年設立の老舗新聞社、シカゴ・サン・タイムズが、写真部員を全員解雇し、残った記者に「iPhone撮影の基礎」(“iPhone photography basics,”)という訓練を受けさせていることが明らかになった、というニュースだ。
©︎John H. White
解雇したカメラマンの中には、ピューリッツア賞を手にしたジョン・ホワイト氏までもが含まれているというから驚きである。しかし、この事件が「iPhonegraphyは、もう一般的なカメラで撮影されたものの代用になる」と考えるのは早とちりに思う。
これは私の憶測だが、iPhoneというツールが持つ、優れた拡散性と、優れた報道写真は別物であるという配慮なのであろう。
この処置には賛否両論あるものの、iPhone写真の未来を考えるにはもってこいの話であるので、この度引用させてもらった。
元写真部員の1人が
良く言っても、どうしようもなく無知。悪く言えば、アホの極みだ!
(“idiotic at worst, and hopelessly uninformed at best,”)
と発言しているが、ニュース番組よりTwitter情報の方が早いようなこのご時世、新聞媒体としては当然の成り行きなのかもしれない。