中学生に英単語を覚えさせる方法
中学生を対象に、「英単語マラソン」を行いました。
これは、早朝6:00-7:00、Zoomで顔出し必須で参加し、30日間で1,000の英単語を覚えるというものです。チューターが監督しますが、基本的には自習で、覚えたかどうかのテストもしません。
こちらが、開催のときの内容説明です。
やるかやらないか
単語を大量に覚えて語学を習得した人たちが、どうやって覚えているのか、苦手な子(や親)は、何か魔法のような秘訣を知っていると思っているかもしれません。
もしかしたらそんな方法や素晴らしいアプリなども世の中にあるかもしれませんが、結局は、「誰でも知っている普通の方法で、時間を取ってやった人が覚えた」という、地道なことでしかないことがほとんどだと思います。
わたしもそうだし、わたしの周りで語学習得した人たちも、「近道を知っている」「コツを知っている」わけではなく、結局は「やった」ということでしかありませんでした。
わたし自身のことで言うと、英語は大好きだったので、中学までは自分なりのやり方を編み出して、「たくさんの量」勉強していました。「やれと言われたこと」ではなく、「自分ができるようになるまで」やりました。好きだったし、できるようになりたかったからです。
中学までは、日頃のそういう勉強の中で目にしているだけで単語は覚えられました。高校になり、英検や受験が絡んでくると、「英単語を覚える」という過程が必要になりました。すると、必要なことは「そのための時間を捻出する」ということでした。わたしは、学校の休み時間を英単語に充て、1日の目標を自分で決めてこなしました。目標量を休み時間だけでこなせなかったときは、仕方がないので、放課後の勉強時間を英単語に充てなければいけません。他の勉強もいっぱいあるのに、たかが英単語にゴールデンタイムを使うのはもったいな過ぎて、なんとか学校内だけで済ませるように必死でした。
わたしは大学の外語学部に進学しましたが、語学を専門に学んでいる子たちは、最低でもこのくらいのことはやっています。「必要なことは自力でやったから」しゃべれるようにもなるし、専門家にもなります。
中学生たちに英語を教えていて、レッスンの時間内には興味を持って話を聞くのだけれど、「単語をいくつ覚えているかどうか」が差になる場合には、レッスン中に集中しているかどうか、理解度が高いかどうかより何より、「家で覚える時間を取っているか」が違いの肝になります。(レッスン時間内には、他に教えることがいっぱいあり、「さぁ、今から覚えましょう」という時間を取ることは困難です)
わたしは、学生時代に家庭教師や塾のバイトをたくさんしました。ピアノの個人レッスンや英語クラスも何年も担当しました。
「勉強がいまひとつ伸びない子」や「ピアノが上達しない子」は、能力が低いとかやり方を知らないとか、教える方法が悪いとか、そんなことより何より、もっとも大きな要素は「家でやるかやらないか」なんです、結局は。
なので、同じように個人のレッスン時間や家庭教師の時間を取っても、内容にどんな差があるかというと、こんな感じ↓です。
同じ先生でも、レッスン内容に差が出ます。後者は、もしかしたらピアノの先生じゃなくて、励ましの上手なトレーナーでも良いかもしれません。
では、後者には意味がないかというと、そうとも言えません。
この子は、もし習っていなかったら、ほんの少しでも弾けるようになるということは難しかったでしょう。
大人もまったく同じです。ビジネスセミナーや英会話、ダイエットなど、「ただ隣にいて、個人的にやらせる」という部分に数十万も支払う人がいるのはなぜかというと、それだけ「当たり前のことを実行し続ける」ということのハードルが高いからです。
自分ひとりで実行し続けることのできない人にやらせ続けるためには、「個人授業」が必須だということは、上記の大人向け事業でも証明されていることでもあります。
ですから、本気で「やる気もないし、やり続けることが困難な子に英単語を覚えさせる」ためには、個別に隣で「さぁ、今から覚えるよ」という時間を管理してあげ、励まし続けるトレーナーが必要です。
つまり、「コツでも何でもなく、ただやる」ということが、「できない人」の最も大きな課題なんです。
逆にいうと、コツというのは、ある程度自学自習によって基本的なことを習得している人が、たとえば「語源が同じものをまとめると、意味の共通性が見いだせ、理解が深まる」というようなことを指すのではないかと思います。
基本的なことを覚えていると、たとえば「re」という言葉が頭に付いている単語の共通点などを興味深く面白く感じることができ、より一層、定直も深まります。ですが、そもそも「re」のつく単語を全然覚えていない子が、今から覚えようという時点で共通点を教わったところで、飛躍的に興味を持って短時間で覚えられるでしょうか。
結局、英語のレッスンを長くやり続け、英単語量の少ない子は、「ある時点で覚えるための時間を取らせることが必要」ということが、わたしの導き出した答えです。
勉強に対するモチベーションが高く、「もっとできるようになりたい」と思っている子は、これを自分でできます。できない子には、この部分(時間を取る)をサポートすることが必要です。
このことを、親が理解できないケースが多くあります。「まさか、やっていないということだけが原因だとは思わない」わけです。
早朝、短期間で集中的に時間を取る
ですから、この英単語マラソンの一番の目的は、「短期間、英単語のためだけに勉強時間を強制的に取り続ける」ということでした。
どうしたらできるかということは、わたしの教室の中学生たちを思い浮かべ、「早朝しかないだろう」と考えました。ならいごとや部活で忙しい中学生たちが毎日決まった時間に1時間(本当は2時間欲しい)を捻出し続けることができるのは、朝しかないだろう、と。
そこで、登校準備前の6:00-7:00に設定することにしました。
また、そこにトレーナーは必須(そもそも、トレーナーがいなくてもできる子は既にやっています)ですので、Zoomを利用し、チューターとして「人がいて、今から何をやるか、毎日提示する」という状況を作りました。
顔出し必須としたのは、このくらいやらないと強制力がなくなってしまい、「やっといてね」と同じ結果になると思ったからです。
ピアノを習わせていて、ご自身が習ったことのない方は、まさか、レッスンに二種類あるとは思わないでしょう。
もう一度言うと、
二種類があります。前者の場合、先生は「パーソナルトレーナー」の役割となります。
英単語に関しても、「英単語の面白さ(たとえば語源など)」を教えるためには、「基本的に自分で覚えている」という基礎が必要で、
このニ種類があります。
前者に必要なのはトレーナーなので、「チューター」として2人が担当することにしました。後者に必要なのは、語学専門講師です。
「英単語マラソン」などの、単語用のレッスンを受けないと覚えない子には、前者のレッスンが必要なんです。どんなジャンルにおいても、「うちの子に必要なのは何か」を冷静かつ客観的に理解することで、「感心する/がっかりする」という親の受け取り方が変わってくるのではないかと思います。
英単語トレーニングに役立つサポート
次に、「英単語を自力で覚えられない子」に必要なサポートを洗い出しました。
ほとんどの子が「視覚優位」なので、昔ながらの赤シートで覚えるのが効率が良いでしょう。聴覚優位の子は、音声をスマホに入れて、しかも2倍速などにすると効果的かもしれません。(今回は全員、視覚優位でした)
この時点で、「ただやる」だけの認知テストをやっていない子もいたと思います。「やる」ということには、本当にハードルがあります。認知タイプを知り、それを意識し続けて覚えた子は、とても効果が高かったと思います。
「自力で勉強や仕事ができる人」は、ポモドーロタイマーのように「集中できるしくみ」をうまく活用しています。Zoomで、このポモドーロタイマーをチューターが計って指示を出すようにしました。
(1)から(6)のうち、もっとも効果のあるサポートは、(6)です。
チューターのふたりが、毎日、「どうしたら頭を覚ますことができるか」「どうしたらモチベーションが落ちている子を励ますことができるか」「たとえ残り3分で入室してきてもバツが悪いということはなく、それでいいということをどうしたら伝えられるか」ということなど、情報交換をして、工夫を凝らしていました。
個人名を出し、ひとりひとり、どういう状態か、細かく報告を受けていましたので、どう指導するかということを提示しました。
週に一本、わたしから子どもたちへアドバイス動画を送りましたが、ここでももっとも大事なことは、「どんなに日数が少なくてもやり続けることが大事」と励ますことでした。この動画は、できるだけ保護者を介さずに子どもたちに見せました。「ちゃんと見なさい!」と親に言われるのではなく、子ども自身のことですから、「つまんないし興味がないから見ない」というのも子ども自身のことにしたかったからです。
単語を覚えるために、「意味を覚える」に特化し、しかも30日分に仕分けのしてある、以下の教材を使いました。
あまたある英単語の本の中で、「自力で覚えることにやる気が出ない子」「まず第一歩目の子」に、どんな教材を用意するか選ぶこともとても大切な「コツ」のひとつです。
この本は、1単語あたり意味がひとつ、横並びに配置されています。順序も覚えやすいようになっています。
もうひとつ、わたしが「勉強する気を上げるか下げるか」ということに重視していることは、「教材の装丁」です。表紙が硬すぎないか、360度開きやすいか、フォントや文字サイズはどうか。
以上のような視点で、さまざまな「中学生初級用英単語教材」を検討し、上記のものに決定しました。
視覚優位の子は、「どこに書いてあるか」という順番などがヒントになっていることもあるので、ランダム表示する確認テスト問題を作り、チューターが子どもたちの様子を見ながら難易度を変えて出題しました。正解不正解についてはこちらで評価はせず、あくまでも「自覚」に任せました。
「ただやること」の価値とハードル
「英単語マラソン」を始めるとき、「ただZoomを繋いで自分で覚えるだけか」という質問を受けました。
子どもから大人まで、「ただ◯◯するだけ」がいかに難しいことか、本当に多くの方は知らないと思います。
「ただ◯◯するだけ」のハードルを知らないから、自分や子どもの出来に不満を抱くのです。社会で成功している人も、勉学で優秀な成績を収めている子も、誰でも知っている方法を、ただひたすら地道に実行し続けたことによって成し遂げています。
大人の世界では、「実行できる人」は1割に満たないということが定説です。「ただ◯◯するだけ」です。
では、実行できない9割の人は社会ではどうしているかというと、数十万のパーソナルセミナーに参加したり、何か強制力のある団体に参加したりして、なんとか「実行」に向けて自分を鼓舞するか、もしくは、「セミナー難民」「英会話教室難民」「ダイエット難民」となり、あちこちのやり方をただ渡り歩くということになっています。それでも「やろう」としている意味では一歩であって、もしかしたらほとんどの方は問題視もしていないかもしれません。
わたしはたくさんのお母さんたちと接していて、この「ただ◯◯するだけ」のハードルを知らない人が多いのはなぜかと考えてきました。
子どもたちを見ていて感じるのは、女の子は男の子に比べて「言われたことをきちんとこなす子」が多いということです。
おそらく、わたしと接触があるような、どちらかというと教育熱心なお母さんたちは「言われたことをちゃんとやること」が当たり前にできていた、むしろ「やらない子がいるとは知らない」のではないかと思うのです。
一方で、「言われたことをきちんとやったのに、(特に成績に関して)思ったような成果が出なかった」という実感があった方は「やり方が悪かったのではないか」と考えがちです。
もちろん、そういう要素もあるでしょうが、「言われたことをちゃんとやったのに成果が出ない」子の中に、「やること」が目的になってしまっていて、「なんのためにやっているのか」「どこにつながるのか」を自分の頭で考えていない子がいるんです。「あれ」と「これ」が繋がっているとは思っていないし、先生からも見逃されてしまいます。
たとえば、「英単語の書き取りを100回やってきなさい」と言われたら、きちんとやるので、問題視はされない。けれど、長文読解で意味を取るのはとても苦手だとすると、「実際には覚えていない」ということになります。「英単語」と「長文読解」が繋がっていないことには先生は気づかず、「ただ腕を動かして書いてはいるか覚えていない」ということに手も打てないし、本人も「なぜだろう」「困ったな」と思ってないから、気づかない。
優等生の中には、案外こういう子がいて、「ただ言われたことをこなす」だけでは太刀打ちできない過程に入った途端、急にできなくなるということがあります。
ですから、わたしは、この初級の「英単語マラソン」であっても、「自分ごとだ」ということは大きなテーマとして、プランを立てました。
たいへん厳しいですが、「やらなかったら自分の力にはならない」、この当たり前のことも実感として感じて欲しかったのです。
とはいえ、それでも「ゼロ」ではない、ということに価値をちゃんと見出さないと、自分を諦めてしまう。「みんな同じ」ではなく、「自分なりの一歩」を重ねていかないと、「言われたことはきちんとこなしているのに力にならない」ということになってしまいます。
親の期待と子どもの実際
わたしは、子育てに関するLINEメルマガを長く発行しています。そこで、このようなアンケートを取りました。
こちらがアンケート結果です。
半数以上の方が「半分以上の子は、30日間完走したのだろう」と考えていらっしゃいます。みなさんはどう思われますか?ぜひ、予想してみてください。
一方、こちらが実際の実施データです。
30日間遅刻もせずやり切った子は、1割にも満たない(8%)です。遅刻もOKとしたとしても、12%で、1割ちょっとです。これは驚きでもがっかりでもなく、「世の中、こういうもの」なんです。「ただやるだけ」を実際に実行できるのは、1割に満たないのです。中学生はそれでも大人より真面目ですから、1割を少し超えたのだと思います。
ここで理解していただきたいのは、「こんなにダメだ」ということではなく、「やり続けることがいかに難しいことか」「いかに少数か」ということです。
やり切った子は本当にすばらしく、この子達はたまたまわたしの英語クラスの生徒ですが、実際に30日後、中3になっていない子でも公立高校入試問題の長文読解が、それまでと比べものにならないくらいスラスラ読めるようになりました。ですので、覚えたかどうか評価はしなくても、成果はちゃんと出ています。
では、残り9割は落第かというとそうではなく、この「英単語マラソン」の成果は一体どこにあるかというと、「ほっといたら1分も英単語を覚えようとしなかった子が3日、つまり3時間は英単語に費やした」という事実です。
誰も監督しなければ5日だったはずの子が、チューターの励ましによって7日になったとか、英単語にまったく興味も関心もなかった子が、「お気に入りの単語ができて付箋を貼っていた」とか、「子どもそれぞれの今ココ」から進んだかどうかが、成果というわけです。
まずは「我が子の今ココ」を正確に理解しているでしょうか。
そこからの努力、進歩に感心し、褒めているでしょうか。
「完走した子は何割か」という質問に対して、「2割以上」と答えた親が85%ですから、「85%の親は実際の姿よりも子どもに期待している」と言えます。
「無遅刻無欠席の1割」を全員が目指すのではなく、「無遅刻無欠席の1割」がいかに稀有で困難なことかを知ることがとても大切なんです。これは英単語をどのくらい覚えたかという成果ではなく「ただの実行」ですから、能力には何の関係もなく、「ただやるだけ」です。それでも1割です。「やればできる」のですが、「やること」がどれほど難しいか。そのことを知ってほしいと思います。おそらく、他のことも全部そうだからです。
それが今の現状
30日間終了し、参加された保護者様に以下のようなメッセージを送りました。
親の評価
実施後に、アンケートを取りました。まず、保護者様(親)のアンケート結果をご覧ください。
英単語マラソンを終えて、いかがでしたか?
時間はどうでしたか?
個々の事情はあるかと思いますが、総じて、6:00-7:00が最適な時間だったかなと思います。これは全国的に見てもそうでしょうから、この英単語マラソンに限らず、中学生対象の朝型オンライン勉強講座は、この「大多数の時間帯」を採用するでしょう。
それ以外は、個別対応の範囲になるかと思いますので、さらに我が子に合う効果を狙うならば、「個別オンライン家庭教師」を考えてみるのも手かもしれません。(ちなみに、こういうことも「やらせてみた」成果のひとつです。こうして、我が子に合う方法の精度をどんどん上げていくと効果が高くなります)
料金はいかがでしたか?
1日あたり1時間、「人」が見てくれて100円ちょっと、缶ジュース1本と同額ですから、わたしの感覚では早朝の勉強分野ではかなり格安だと思います。
また開催されたら参加しますか?
記憶は忘却曲線と共にまた薄れていきますから、単語の話だけで言うと、何度も参加して、長期記憶として定着させるのが効果的だと思います。ですが、「早く起きて参加する」というところには個人ごとのハードルがあるかと思います。いずれにせよ、半数以上の方が「また参加する」とお答えくださり、おおむねよい成果があったのかなと思っています。
機会があったら、お知り合いにすすめますか?
こちらも「強くすすめる」「すすめる」が80%でした。おおむね、このやり方で満足いただけているということなので、ご不満があった方もいらっしゃるかと思いますが、それはもう「個別対応」の範囲であると判断できるのではないかと思います。
感想・ご意見をお聞かせください。
「効果がなかった」とお感じの方へ
厳しいご批判もいただきました。
まず、今回の教育方針は「参加した子ども本人の力がつく」ということで、「外的な強制によってなんとしても実行させる」ということではありませんでした。説明にはそのように書いたつもりだったのですが、誤解させてしまったかもしれません。
ですが、もう一度わたしが送ったLINEと、上記記事をよくお読みください。ボッタクリというのは、暴力的かつ詐欺的に金銭を奪う行為で、個人の満足度の差はあるにせよ、この点については明確に否定させていただきます。どの子に対しても、「できるようになるため」の工夫はたくさん凝らしています。
「合う/合わない」はあると思います。わたしが20年間の経験と3年間の構想を経て、現実的に実現できるやり方を考案しましたが、「やってみないとどの子に効果が出るかはわからない」んです。これはどんな講師でもどんな方法でも同じだと思います。結局、模索するしかありません。
そこで、もし、今回、「このやり方ではうちの子に効果はなかった」とお感じであれば、以下のような方法をご提案します。
「覚えるかどうか」と「朝起きられるかどうか」は、どうあってもたいへん個人的なことで、もしこれを強制的にコントロールするとしたら、「罰を与える」「ご褒美を与える」「誰でも面白く興味深くなるようなエンタテイメント要素を加える」など、さまざまな方法が考えられます。
わたしの持っているリソース(人材や仕組み、予算など)では、今回のやり方が限界ですが、世の中にはきっと、もっともっとすごいやり方をしてくれる先生や塾、アプリなどがあると思います。
子どもの感想は?
子どもたちにもアンケートを取りました。
英単語マラソンを終えて、いかがでしたか?
時間はどうでしたか?
チューターの対応はどうでしたか?
英単語を覚えた実感はありますか?
また開催されたら参加しますか?
機会があったら、友だちにすすめますか?
感想・ご意見をお聞かせください
子どもたちはとても素直だし、ポジティブだと思いました。「楽しかった」「覚えられた」と言う子の大半は「全部は参加していない子」です。
わたしの生徒で実際に会った子たちに「自分なりにがんばったという実感があるか」と聞いたところ、ほとんどの子が清々しい顔で手を上げていました。どのくらい参加できたか、どのくらい覚えたかには関係ありませんでした。
「実感がない」と答えた子に「なぜか」と聞くと、「自分がもっとできるはずなのにサボったという自覚がある」と言っていました。
子どもたちのコメントを読んだり、実際に聞いたりして、「中学生はまだまだ自分を信じているし、自己肯定感は親が思うより高いんだ」と感じました。一方で、小学生までのかわいらしい姿とは変わり、自我が芽生えるからか、親の目には中学時代がいちばんのらりくらりしていて、ヤキモキしているように思います。(高校生になるとガラッと変わります)
偉そうになったり、反抗的になったり、あまのじゃくになったりするように見えるかもしれませんが、中身はまだまだ、子どものまま変わっていないんだなと思うと、アンケートを見ながらあどけない「楽しかったです!」という言葉に涙が出そうになりました。(親の方は「ちゃんとやらなかった」という厳しい指摘も多かっただけに)
「次の一歩を踏み出そう」と思えるような勇気や自信が身につけるためには、結果は結果として受け止め、「自分にはこれが精一杯だった。自分なりによくやったと思う」とか、「これをやらなかったら今も覚えていない単語を3つ覚えることができた」など、「今ココ」を認めることが大切だと思います。
それには、このマラソンの最中もしくは終わった後にどんな言葉をかけられたかということも、大きな要素になるのではないかと思います。まだ中学生ですから、やっぱり、親からガッカリされることはショックなんじゃないかな。
「うちの子はもっとできるはず」と思っていると、小言が出たり、イライラしたり、がんばったとは思えなかったりするかもしれません。
子どもの頃からどういう子だったか、また、「朝起きる」とか「継続する」とか「地道に勉強する」ということに対して、どんな特徴があるかを考えたら、1日でも2日でも「この子なりによくやった」と思えるのではないかと思います。(1日2日で辞めた子はいませんでしたが)本来、すべてやる気を出して30日間頑張り抜くタイプの子が、英単語マラソンに関して「だけ」1日2日で挫折するということは考えにくいからです。
大切なことは「どこがスタートラインか」を見誤らないこと。また、日頃、「こうしろ、ああしろ」ではなく、「自分軸」を強化する教育を施すことだと思います。子どもを伸ばすための、すべての勉学や道に共通していると思います。
あれから3ヶ月・・・マラソンを完走した子はどうなったか?
補足
実は、この英単語マラソンが始まったとき、すぐに申し込んでくださった方からキャンセルのお申し出がありました。
わたしは、年齢的にピンときて、「お母様が良いと思って申し込んだけれど、本人が嫌がったということですか?」とお聞きしたところ、「その通りだ」とのことでした。
そこでわたしは、強制はできないが、親があなたに良いと思ったという姿勢は見せるチャンスではないかと思う、淡々とZoomは繋いではどうですか、とご提案しました。
毎朝6時に、なんなら誰よりも早く、繋ぎ続けてくれました。毎日、お部屋にポンと置いておいたそうです。
「ただやり続けることができない」というのは大人も同じですから、「子にやらせよう」と決断し、どんなに起きなくても参加しなくても、毎日同じ時間に繋ぎ続けた。張り切って参加する子の姿も画面の中で見続けたことでしょう。参加しない我が子の部屋に、どんな思いで置き続けたのでしょう。小言も言わず、ただ淡々と。これを30日間やり通すことは、誰にでもできることではありません。
最後には誰よりも真っ先に「親の姿勢は見せられたと思います。ありがとうございました」とお礼のメッセージを送ってくださいました。とても感動しました。何よりも「やってよかった」と思った瞬間でした。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?