じょうずな体験レッスンの受け方
浜松市で0才〜18才の子どもたちにリトミックを教えています。
わたしの教室には、1年を通して、たくさんの親子がひっきりなしに体験レッスンを受けにいらっしゃいます。みなさんは、何を目的に、何をしに体験レッスンを受けに行かれていますか?
今日は、先生の立場で見たじょうずな体験レッスンの受け方をご紹介します。0才〜5才くらいまでの子についておはなしします。
何をするか分からない初めての場所で楽しめる?
みなさんは、これから何をするか分からない場所に連れて行かれ、「さぁ、好きなら楽しめるはず!」ってポーンと知らない人の中に放り込まれて、楽しむことができるでしょうか?
「子どもが楽しむかどうか」を見るために体験レッスンに連れて行くとは、そういうことなんです。
たとえば、わたしが教えているリトミックの場合。
音楽に合わせて自由に動きます。もちろん、最初からとても楽しくできる子もいます。でも、その子は「ならいごととして、これからもずっと続けられそう」と判断しているわけではないんです。テレビの前で、楽しそうに動く子っているでしょう?それと同じです。ただ、今、ご機嫌が良く、あんまり人の目も気にならずに愉快な音楽に合わせて喜んでいるだけ。
お膝に座ったまま、じーっと何もせずにいる子。ニコリとも笑わない。でも、もしかしたら心の中に素敵な音楽がじんわりと響き、「いい音だなぁ・・・、なんだか心があたたかくなるなぁ」と味わっているかもしれない。知らない子が愉快に動いているのを見て、「楽しそう。何をやってるんだろう?」って、観察しているのかもしれない。
今日たまたま、なんだか疲れていて、おとなしく見ていたいのかもしれない。今日たまたま、興奮状態ですっごく楽しそうにはしゃいでいるのかもしれない。
わたしは初めての場所、初めての人も割合平気な方ですが、それでもやっぱり緊張はします。最初から100%、1年通ったのと同じ状態で楽しめるってことはありません。
みなさんはどうですか?
わたしは、子どもだって大人と同じように、「何をするか分からない場所で見知らぬ大人と見知らぬお友だちと、ほら、仲良く楽しく!」なんて言われても、できなくて当たり前、って思っています。
だから、どうぞ、体験レッスンを「子どもが楽しむかどうか」を確認する場にしないでください。保護者様がそう思ってしまうと、わたしたち講師は、「今、この子を楽しませるレッスン」をしなくてはいけなくなってしまいます。
体験レッスンは誰のため?
「今日はリトミックの体験レッスンに行くからね。もしやりたかったらちゃんとやるんだよ」なんて言っても、子どもは本当には理解できません。
ましてや、「今日、あなたが楽しそうだったら、これからずっと続けるんだよ?自分でやるって言ったんだから途中で辞めるのはナシだよ。毎週、同じ時間に教室に行って、機嫌がいい日も悪い日も、先生の言うことを聞いて、リトミックをやるんだよ。いい?自分で言ったんだからね?わかった?」なんて言われたら?
・・・大人でも「・・・やめとく・・・」って言いたくありませんか?
体験レッスンは、「今後、数年に渡って、ある程度習得するまでしっかりレッスンを受けるかどうか」のテストではありません。
子どもが楽しそうかどうかをテストしないでください。
体験レッスンというのは、子どものためにあるのではありません。実は、選ぶ大人のために行うものなんです。
「ならいごとを親が選ぶなんて、親のエゴじゃない?」って不安に思うかもしれませんね。そうですよ、ならいごとなんて、どうしたって最初は親のエゴなんです。親が「この教育を受けさせたい」とポリシーに従って選んだものを受けさせる。そういうものです。だから、親として、責任を持って、しっかりアンテナを立てて大人の目で選ぶ。そのための体験レッスンです。親としてエゴに自信を持つために、しっかりと自分の目で確認しましょう。
わたしの立場で、100発100中、子どもに「やりたい!次も来たい!」って言わせる方法があります。それは、レッスンの途中でお菓子をあげること!(笑)もちろん、そんなことしませんけど・・・。「あそこに行けばお菓子がもらえる」、子どもに決定権を渡すと、そんな風に基準は子どもの視点になってしまいます。
そんな風にだまされてはいけないから、みなさんは、教室が発信している指導方針をよく読んで、実際にその通りのことが行われているか、しっかり確認してください。テストを受けるのは子どもではなく、教室側です。
いつ芽が出るか
わたしの教室では、保護者様が「ミューレで学ばせたい」と思ってくださり、お子様が窓際でじーっと見ているだけでも、根気強く「それでもいい」と連れてきてくださる方がたくさんいらっしゃいます。
これまで見てきた子どもたちは、だいたい3ヶ月くらいで場所やわたしに慣れます。リトミック教育を受けた成果が出てきたなと感じるのは、本当に個人差があります。
2才から来ていて、おひざから出たのが4才という子が18才まで続けることもあります。5才まで何もやっていなかった子が、中学高校まで吹奏楽部で大活躍する音楽好きに育ったこともあります。3才から5才まで教室に入れなかった子が、ステージでソロを取るまでになった子もいます。
いつ芽が出るかは本当に分からない。
「この子は本当に興味がなくて、かわいそう」という場合はわたしの方からお伝えすることもありますが、ほとんどの場合は、保護者様の教育方針と合致している場合は、いつか必ず芽が出ます。
体験レッスン1回でその兆しがあるかどうかで判断するのは本当にもったいないことなんです。
体験レッスンで何を見たらよいか
では、体験レッスンでは何を見たら良いのでしょうか。
わたしの経験から、たったの1回でも分かることをご紹介します。
教室の雰囲気
清潔感や備品などのしつらえ
先生の雰囲気(顔や声など、第一印象)
あなたをお迎えする準備が整っているか
来ている保護者の雰囲気
来ている子どもの雰囲気
HPやSNSの印象と相違がないかどうか
「雰囲気が分かるかしら・・・?」と不安に思わなくて大丈夫です。必ず現れます。もし分からないとしたら、それを重視していないだけです。
これらは、「教室の価値観」です。体験レッスンで確認するのは、webや広告で発信されているものと相違がないかどうかです。
たとえば、「教室の雰囲気」や「清潔感」でいうと、「ものすごく綺麗かどうかを確認しなさい」、ということではないんです。わたしはわたしの価値観で教室をしつらえています。同じように、他の教室ではその教室の価値観で整えてあります。「自分が居心地が良いか」「好きか」の判断で大丈夫です。全然片付いてないけど、なんだか居心地良く、ワクワクする空間ってありますよね。ミニマリストのようにすっきりとしているのが好きな人もいますね。「どんな空間で子どもを教育したいか」を独断で判断していいんです。
あまり良くないのは「何も考えてない」ってことです。「人が良いって言ってるから」もNGです。それで選んじゃうと、いつか「なんだか違うな〜」って思う日が来るし、何より、子どもに定着しません。
「なんだかここが好き」って大事ですよ。同時に「なんだかしっくり来ない」もとても大事。妥協せずに、ダメなら次。「これだ!」と思うものに出会えると、親子ともども、どんどん成長していける、素晴らしい体験になります。
有料か無料か
体験レッスンは、教室によって無料も有料もありますね。
わたしの教室では、一律、1,100円をいただいています。実は、レッスン料としていただいている金額ではありません。
昔は無料にしていました。でも、あるときから全部有料にすることにしました。
なぜかというと、有料にすると、必ず来てくれて、真剣に考えてくださるからです。そしてそれは、すでに来てくださっている方々のために場を守ることにもなるんです。
無料で受け付けていると、中には、「1回みてみたい」というだけで、最初から入会する気はなく受講される方もいらっしゃいます。それを受けつけるかどうかは教室の考えでいいと思いますが、わたしの教室では、そうだとしても、普段から来てくれている子たちは「ぜひ入ってね!」という感じで、ものすごく親切に分からないことは教えてあげ、「次からお友だちになれる?」と楽しみに迎えます。どんなときも、新しいお友だちにワクワクして「やったー!!」って言います。辞める子がいるととても寂しくお別れします。
来た子どもだって、「次からいっしょにできるのかな?」って楽しみにします。
たとえ一瞬の出会いでも、子どもの心が動いたことには変わりはありません。わたしは、子どもたちの貴重な出会いや想いを、「単なる大人の興味」で翻弄したくないんです。
実際に、有料にしたことで、本当に真剣に考えてくださり、親子ともども、とても良い雰囲気でお客様としてていねいにいらしてくださるようになりました。
そんなわけで、わたしの場合は、場と子どもたちの心を守るために有料にしました。必ずしも無料が良心的とは限りません。
同じ理由で、できたら体験レッスンの前にご夫婦で話し合って、実際に来られるのかどうか曜日や時間を確認しておいていただけたらいいなと思います。子どもの方は「みんなが優しかった!またあの子たちと会いたい」「また来てね!」って思っても、完全に大人の都合で「通えません」となるのは、ほんとうにかわいそうだからです。だったら知らない方がよかったな・・・、とわたしは思ってしまいます。
来ている人々の雰囲気はいつの間にかできていく
おさんぽリトミックを始めたばかりのころ、お母さんたちのおしゃべりに悩まされたことがありました。子どもをほったらかしにして、時間内、ずーっとずーっとおしゃべりしてる。全然いっしょにやってくれないんです。
それでどうしたかというと、「おしゃべりしないで」って注意するのではなく、受付方法や教室の雰囲気、レッスンでの声かけなどを見直しました。「おさんぽリトミックで大切なことは何か」を講師とスタッフが見直しました。
すると、いつの間にか、「おしゃべりするために来るお母さん」はひとりも来なくなりました。
「おしゃべりをするお母さんがダメ」という話ではないんです。それを楽しみにする場があってもいいと思うし、そういう目的のならいごともたくさんあります。
おさんぽリトミックに「おしゃべりするお母さん」がいなくなったのは、その方々にとっても「おさんぽリトミックの居心地が悪い」と思われたからです。お互いにとって、「合う相手」とレッスンすること。それがとても大切。
だから、体験レッスンに行って、「この保護者さんたちの仲間になりたいかどうか」、それもとっても大事です。誰が申し込んでくださってもいいのに、やっぱり、いつの間にか価値観って揃っていくんです。
わたしがおさんぽリトミックの雰囲気でいいなと思うのは、「他のお子さんを見る、保護者様たちのまなざしがとても温かいこと」と「子どもに手出し口出ししないこと」です。こんな世の中で子育てができたらなと思う、わたしの理想が具現化しています。やっぱり、そういうのって、不思議に講師がどう考えているかが表れるんですよ。
だから、ご自身の好みを信じて、「この中に入りたいかどうか」を感じてみてくださいね。
見学でもいいかも
子どもの心を思うと、わたしは、ひょっとしたら体験レッスンは受けずに、親が見学に来るというパターンでもいいかもしれないと思います。
そうして、「通う?通わない?やりたい?」と子どもに聞くのではなく(だって、子どもからしたらプレッシャーですよね)、「とっても素敵なところを見つけたんだよ〜、絶対、○○が好きになるって思った!今度、いっしょに行ってみよう!!」そして、入会を決めたら「今日からここに来ようね、また来ようね」って最初から伝えても良いかもしれないな、と思います。
1回で来なくなるのだとしたら、どんな状態であっても「あぁ、楽しかった、お母さん(お父さん)は来てよかった!」と言って、それで終わりにしてもいいかもしれませんね。