くつしたを脱ぎたがらないときはどうしたらいい?
おさんぽリトミックの活動では、くつしたを脱ぎます。子によっては、これを嫌がる子がいます。初めてのお子様でどうしたらいいか、とまどうママもいるかもしれないので、わたしの考えを書いてみます。
くつしたを脱ぐのはなぜ?
リトミックでは、部屋の中を音楽に合わせて走ることがあります。0歳〜2歳のお子様方はまだ頭が重く、大人に比べて重心のバランスが上の方にあり、滑って転ぶと簡単に頭を強くぶってしまうことがあります。また、足も短くて走り慣れていない子も多いので、絡まって転ぶことも大人より多くあります。
まず第一の理由は、「危ないから」です。
もうひとつの理由は、「皮膚が敏感だから」です。
幼児の発達段階で、皮膚がとても敏感なので、はだしで活動することで自分の体重移動や床をつかむ感じを味わうためです。
わたしは大人なので、リトミック活動のときはバレエシューズを履きます。講師の研修でもそれが一般的です。
けれど、数年前にジュネーブの研修会に参加したとき、世界中からいろんな立場で参加している方々がみんな裸足で、誰もシューズを履いていませんでした。外国なので、日本と違って、元々は外履で活動する部屋です。最初はかなり抵抗がありましたが、2日目くらいから「わたしも裸足になろう〜っと!」と思って、思い切って裸足で活動してみました。
そうしたら、なんか、すご〜く解放され、足のつまさきでグッと地をつかむ感じで軽やかに動けたんです。難しいことは抜きにして、裸足でリトミックをするの、おすすめです。もちろん、ママも裸足でOKです!!
自分で方針を決める
「なぜか」はこれで分かったので、次は、どうするか、考えてみてください。
「先生が言ったから」じゃなくて、ママ自身はどう思いますか?どんなことも、一旦、自分で考えてみるといいですよ。その方がずっと、いろんなことに納得しながら子育てできるし、ものごとの考え方ができていきます。
その結果、「脱がなくていい」という方針を選んでもいいと思います。ただし、おさんぽリトミック講師の立場では「わかりました、脱がなくていいです」とは言えないんです。危ないから。その場合は、アイミティ浜松を選べば、絨毯敷きですから、靴下を履いていても大丈夫です。どんなことも、そんな風にして、自分の決めた方針と、折り合いをつけていけばいいと思います。
ここで大事なのは、「相手の方針を変えさせない」ということです。
行動する
自分で方針を決めたら、次は、そのように行動しましょう。
つまり、「脱がせよう」と思うなら、脱がせる、ということです。
「どうやって?」というのは、もう、本当に、それぞれ、いろんな方法でやればいいと思います。
脱がせる
たとえば、淡々と「脱ぎなさい」と言って、強行して、その日1日、子どもがわぁ〜ん!と泣いて、喧嘩したって、わたしはいいと思います。親子なんだから、思うようにやればいいと思う。
子育ての教科書には、「子どもの意思を尊重して」とか「子どもが納得するまで言って聞かせましょう」って書いてあると思います。けど、教科書通りにやろうとすると、いつか、「このケースはどうしたらいいんだろう?」って迷う日が来ます。だったら、思うようにやってみて、何が起こるか、自分の目で確かめた方がずっと早く親として成長できます。
みなさんは、無理やり脱がせたら、自分の子がどのくらい泣き続けるか、知っていますか?知らないから、「泣いたらどうしよう」って思うんですよね。くつしたを脱ぐことくらい、命には関わりません。いっぺん、やってみたらいいんですよ。案外、ケロリと次の活動に参加するかもしれません。
もしかしたらその日のおさんぽリトミックは、泣いてぜんぜんできないかもしれないけど、この子の一生の中ではたいしたことではありません。ママに自信がついて、親子の関係がグッとやりやすくなるなら、その方がずっと価値があります。
お子様がわーんと泣いても、おさんぽリトミックでは肩身の狭い思いをする必要はないし、恥ずかしくもないですよ。親子の関わり優先で大丈夫です。
履いたままやらせてみる
「転ぶと危ないから脱ぎなさい」と言っても、「いや!転ばない!」って言う子もいますね。子どもは「転ぶと危ない」という先のことを予測して行動を決めるのが苦手だから。大人みたいに理屈では済まないんですね。
最近はずいぶん減ったけれど、「ではそうしてみなさい」と言って、転んで頭を打って、わーんと痛い思いをして泣かせてみる、そういう骨のある育て方をしても、わたしはいいと思うんですよ。(わたしがママだったら、そんな勇気はないと思うけど)
ただし、教室の床材によっては、ひとりの子が滑って転ぶことで、他の子も危なくなる可能性もあるから、そこは見極めた方がいいでしょう。なるべく他の子と接触しないように、隅っこの方でやらせるとか。
また、最後には脱がせるのだとしたら、その「お試し」はほどほどにして、次の一手を考えてみてください。
選択肢を与える
2歳前後のイヤイヤ期に有効なのは、「本人に選択をさせる」という方法です。
相手は2歳ですから、難題を与える必要はないんです。子どもは基本的にはよい子でいたい、親に笑っていてほしいと思っているから、かんたんな2択を与えるといいです。
たとえば、「くつしたを脱いで、ママと楽しくリトミックで遊ぶか、くつしたを履いたまま、ここに座ってみんなのことを見ているか、どっちにする?」など。
ここでは、方針として「脱がせよう」と決めたなら、それ自体は曲げません。「脱がずに楽しくやる」という選択肢は与えないんです。
「履いたまま見てる」と言ったら、選択権を与えたからには、それ以上はしつこく言わないで、言った通り、見ていましょう。ママは「できなくて残念」と思うかもしれないけど、子どもは、自分で選択したことだから、きっと満足していると思います。リトミック的には、音楽を聴いているし、動きも見ているから、無意味ということはありません。
脱がない理由があるかも
それでもなんでも、異常に嫌がる場合、もしかしたら、何かくつしたを脱ぐことが強烈なストレスになっているケースもあるかもしれません。
わたしも知らない、何かがあるかもしれない。それが分かるのはきっとママだけなので、よくよく観察して、勘を働かせてみてください。もし何かあったら、ぜひ、教えてください。いっしょに安全な策を考えましょう。
選択権は誰にある?
子どもとママとで意見が違うとき、「この選択権は誰にあるのか」ということを考えて行動してみてください。
子どもの育ちを見ていると、やさしいママも厳しいママも、育ちにはあまり関係なく、それより、「迷うママ」だと子どもは不安定になったり、意欲がなくなったりすることがあります。
選択権が自分にあるなら、諦めないで、試行錯誤を続けてみてください。
子どもの意思の尊重か、言いなりか
おさんぽリトミックでは、ママが付き添って活動することが多いので、便宜上「ママ」と書きましたが、もちろん、「パパもママも」と読み替えてくださいね。
考えること、試行錯誤することがとても大事。
「たかがくつしたのことで」と思われるかもしれません。でも、これが、徐々に難しい問題になっていくんです。「徐々に」です。ママもパパも、子どもの成長とともに親として成長していきます。だから、「たかが」と思っていられるうちに、ぜひ、「自分で考えて自分でやってみる」練習をしてみてください。
子どもはね、思ったより手強いですよ〜。迷ってオロオロしている親をすぐに見抜いて、「どこまで自分の言う通りになるか」試します。2歳でも3歳でも、です。もっちろん、悪意はありませんから、相手を苦しめるためでも嫌がらせするためでもありません。だから、大人の判断で通していいことかどうか、判断して教える必要があります。
たとえば、赤信号で車がビュンビュン走っている中を、どうしても今渡るんだと言ったとしても、しかたないわね、と渡らせることはしないですよね。一度で分からないかもしれないけど、根気強く教えるでしょう?それを毎日、繰り返しているんですよね、子育ては。子どもが自分で自分の身を守り、生きていけるために。
だから、どうぞ、「たかがくつした」から、やっぱり、子どもに向き合って、一緒に考える練習をしてみてください。
「子どもの意思を尊重する」という子育て方針がすご〜く流行っちゃって、「言いなり」との区別が難しくなっているように思います。
わたしはね、子どもたちはみんな「より良く生きたい。自分を好きでいたい」と思っていると信じています。
ですが、小さな子どもは「先を見据えて行動を決め、自分を好きでいられるように振る舞う」ということをまだ知りません。だから、「こっちだよ」と大人が教えたり導いたりすることが必要です。
裸足でリトミックをやると、とても気持ちがいいし、皮膚感覚も発達します。よりリトミックの効果を得られます。何より、安全です。ぜひ、子どもたちに教えてあげてください。