子どもが本物のお金でお買い物ごっこをしたらどうなるか
子どものための教育活動家、坪井佳織です。浜松市で音楽教室を20年間やる中で、子どもの教育について日々模索しています。
お買い物ごっこのはじまり
毎年、子どもたちが主催でお買い物ごっこをやっています。かれこれ15年くらいになるんじゃないかなぁ。最初は、衣類やおもちゃの「ご近所お下がり文化」を復活させることが目的でした。それから、近所のお兄ちゃんお姉ちゃんが持ってた、使いかけのシール、錆びついた超合金など、子ども心に「いいなぁ」と憧れたものをもらう場にするため。ペットボトルのキャップが通貨でした。
コロナ前はこんな様子でした。
現金を使うこと
2022年から、「本物の現金を使う」ルールに変更してみました。
現金に変更した理由は、最初はただの「子どものお楽しみ」だったお買い物ごっこですが、子どもも大人も、ガチで「不用品を見直す機会」「自分の持ち物を見直す機会」「交渉する機会」「物欲をコントロールする機会」などなど、教育効果がどんどん高くなっていったことと、日本はお金のリテラシー教育がとても乏しいことを感じていたので、この限られた空間で、お金の使い方を経験させてみようと思ったからです。
現金にすることにより、子どもたちはもっともっと真剣に取引や商売について考えるようになりました。「何が人気か」「どうすれば売れるか」ということを考え、失敗した子は「来年はもっとこうしよう」と考えるようになりました。
保護者様へは、以下のようにお願いしました。
企画は実行委員がやります。ポスターを描いたり、申し込みフォームを作ったり、各クラスに出向いてプレゼンしたり、買い出しに行ったり、やることはいろいろ。先輩が後輩にノウハウを受け継ぎます。
税金を徴収する
今年から、税制を導入してみました。わたしの提案です。
耳を傾けると、売上を推測し、そこから税金を推測し、トータルの税収を割り出して税率を決めているようです。なるほど。そっちか。「じゃあ20%ね!」とか聞こえてきますw
最終的に「計算のしやすさ」から10%に落ち着きました。
わたしの目的は、「%に対して、身近なものとして感覚を養って欲しい」というものでした。
学校で%を習うと、架空の設定で紙の上で計算をし、合っているか合っていないか、誰かに採点されます。計算方法は厄介なので、たとえば「500円のノートがありました。30%引きで売っていました。値段はいくら?」みたいな問題で、計算間違いの上に「530円」などと平気で書いてしまう。それに対して「テストの点が引かれた」という痛手と感じてしまいます。
けれど、実際の%はもっともっと生活に密接に結びつき、間違えると大変なことになります。500円のノートが安売りされているのに、自分の財布から530円が出ていくなんて、子どもでも「違う!」と気づくはずです。こんな風に、合っているかどうかじゃなくて、%を身近なものとして本気で捉えてほしいと思いました。
また、手にしたお金が全額自分のものにはならないこと、自分で計算して納税すること、そのお金の使い道には目を光らせることなど、本来、当たり前のことを実感として体験させ、「自分のことだ」と感じること、また、商売の基本を体験して、「ぜんぜん怖くないこと」を知って欲しいと思いました。
いろいろなお店
さまざまなお店が出店されました。実行委員は、お昼ご飯として、カレー屋を企画しました。自分たちもお店を出すので、調理はOBOGと保護者様に依頼していました。
事件発生
事件が起きました。(小さな事件はいっぱいw)カレー屋さんに利益が出てしまいました。5,000円弱でした。
このお金の使い道について、思いもよらないことが起こり、わたしも咄嗟の判断ができず、ちょっとゴタついています。こういうことが起きること自体が学びになります。まだ解決していないので、わたし自身も考えていきたいと思っています。
また、税金の使い道はとても安易に「次のミューレのイベントに使う」と言っていましたので、「そんなのじゃダメだ」と言いました。なぜ「ダメ」と言ったかというと、使い道がダメなのではなく、明らかに「考えること」を放棄していたからです。自分のお金じゃないから。こういう風に、徴収した税を安易に使ってしまうんですね、世の中の仕組みというのは。
税金の計算方法は、利益に対してかかるので、「売上」と「利益」の違いを最初に説明してあり、小銭を視覚的に10に分けて、そのひとつを納税するように伝えました。
税を徴収された子は、死んだ魚のような目をしていたらしいです笑。わたしたち、そういう目で納税してますよね〜、いつも。だからこそ、有効活用して欲しいですよね。
そして、高額納税者が出てきまして、様子を聞いたところ、「売り上げも高いが、それ以上に自分も使っていて経済を回していた」ことが分かりました。この辺も、実際の社会の縮図で面白かったです。
「お金をどう考えるか」ということには、「正しい道」はありません。昔に比べて、生活水準にも差が出ています。100円をどう感じるかは、各家庭の水準によってまちまちなので、一律の教育には意味がありません。
また、5円10円の駄菓子屋はもうほとんど姿を消し、子どもの買い物の額が上がっています。学年に応じたお小遣いを上げたとしても、結局は親が別枠を追加しないと回らない状況も多く、実際の生活につながるお金の教育が難しくなっています。
価値基準を設けず、各自で考えて設定して、実際にやらせてみる機会として、とても面白い結果になりました。
反省点としては、みんなお店がやりた過ぎて、あまりお客さんがいなかったこと。次回から、ミューレ以外にも解放してみようかなと思っています。
続編はこちら。