松井稼頭央監督休養によせて
5月26日、ライオンズはバファローズ相手に鮮やかな逆転勝ち。カード勝ち越しを決めるとともに、今季初めて3試合連続で5得点以上を記録し、課題だった攻撃力に光明が見えたかのように思えた。
フラッグスで買い物を済ませ、帰宅途中にそのニュースを目にするまでは浮かれ気分だった。
「松井監督休養、渡辺GMが監督代行就任」
何と言っていいか分からない。何も言葉にできない気持ちで日曜の夜を過ごしている。
個人的な思い入れの話からしたい。
西武沿線に生まれ育ち、小学生の頃ライオンズファンになった。キッカケはルーキー・松坂大輔だったが、走攻守で華やかなプレーを見せる松井稼頭央のこともすぐに好きになった。
2001年にA.カブレラが加わるまで、ライオンズ打線は得点力不足に喘いでいたので、野手と言えば稼頭央さんだった。当時の少年ファンは全員稼頭央さんのファンだったと言ってもいいくらいだ。友達と野球をする時は稼頭央さんのゆらゆらとしたフォームをモノマネし、学校では稼頭央さんの下敷きを愛用していた。
稼頭央さんは2002年にトリプルスリーを達成。2003年を最後にMLBへ旅立っていった。
それから15年後の2018年、イーグルスを自由契約となり稼頭央さんがライオンズに帰って来た。
とても嬉しかった。オーセンユニを即決で購入した。オープン戦で15年ぶりに応援歌を歌った時には震えた。
しかしその年のライオンズは山賊打線全盛ということもあり、42歳の稼頭央さんの出番は限られていた。そして9月27日に引退会見を行った。その時の言葉を振り返りたい。
「ここで生まれ、ここで育った」選手が旅立ち、帰ってこないことが多かったライオンズ。悲しいことに2018年のこのコメント以降も旅立つ選手が相次いでしまったけど、この言葉が本当に嬉しかったのだ。
時は流れ2023年。辻監督に代わって一軍監督に就任した稼頭央さん。どんな監督ぶり、采配ぶりを見せてくれるのか楽しみだったけど、正直に言ってしまうと采配以前にチームの戦力が整わなかったという印象だ。
2022年を最後に正捕手が移籍、2023年WBCで源田が負傷し出遅れ、極めつけは戒めだ。監督に責任がない範囲での誤算があまりにも多すぎた。
若手を育てられなかったという意見もあるかもしれないが、確固たるレギュラーは外崎・源田と栗山・中村のDHコンビくらい。今季奮闘している金子や炭谷を除けば他はほぼ育成中という状態だ。こうなると勝敗を分ける大事な場面でも若手に頼ることになる。
2018年リーグ優勝時の栗山・中村対談の一節を引用したい。
時代も違うし、喩えが極端かもしれないけれど、栗山が4打席連続初球打ちを出来たのは、後ろに中島裕之・カブレラ・和田一浩というクリーンアップが控えていたからではないか。
今のライオンズは残念ながら確固たる軸がないので、若手もチームの勝敗に対する責任を負わないといけない環境にあると感じている。そして1試合の中でチャンスが何度も作れる環境ではないので、そんな若手選手に代打を出さざるを得ないこともある。もちろん「責任感を持つ」という意味ではプラスかもしれないが…。
ところでこんなデータを見てほしい。2023・24年それぞれの先発・救援登板数上位6人、打席数上位12人とその入団年次をまとめたものだ。
まず先発投手は2014年ドラフト1位の髙橋光成以降、ドラフト1位が多くを占めていることが分かる。また近年のドラフトからも隅田や武内が戦力となっている。
そして救援はベテラン増田と先発経験もある佐藤隼を除けばドラフト中位・下位で入団してきた選手が多い。多くのイニングを先発が賄うことを考えれば、先発と救援のバランスはとてもよく見える。
そして先発・救援ともに入団年次のバランスが取れているように見える。
一方で野手だ。ベテランの中村、中堅の金子・外崎・源田と外国人を除くと、昨年は2021年ドラフトの古賀、今年は2018年ドラフトの佐藤龍がトップとなっている。そしてランキング下位に2020年前後に入団した選手たちが並んでいる。正直に言ってしまうと外崎・源田以降のドラフト組が物足りないのだ。
色々と要因はある。2018・19年は超打高投低だったので、ドラフトが投手に偏るのは仕方ないことだ。現にその頃指名した平良・與座・松本・森脇らが立派に育ってくれた。
またその頃指名した野手があまりランクインしていないことについて、誰が悪いと言うつもりもない。選手本人の要因かもしれないし、一軍戦力と照らし合わせた時に出場機会を得られなかったとか、怪我とか、指導が上手く行かなかったとか、もちろん辻前監督・松井監督を始めとする首脳陣にも要因はあるかもしれない。ただ原因を一つだけに特定することはできないし、特定する必要もないと思っている。
ただ現在のチーム状況が事実として目の前に横たわっているだけだ。
こういうチーム編成の偏りはどこのチームでも起こりうる。ドラフトは年1回だけだし、戦力化するまでに何年も掛かるので、それ以外にはFA・トレード・外国人の獲得が偏りの是正手段となる。
しかしライオンズはFA獲得のハードルがとても高いのは言うまでもない。そして外国人は様々な要因により、野手の活躍が困難な状況になっている。
となると残された手段はトレードとなる訳だが、今の状況で「商談」しても足元を見られるのは明白。やれるとしたらオフに一軍クラスの投手を出して、野手を引っ張ってくるトレードくらいか。
渡辺GMはじめフロントもそんな状況は理解しているだろう。松井監督に満足な戦力を与えられなかったからこそ、渡辺GMが自ら泥を被りに行ったという見方がしっくり来る。
また来季は誰が指揮を執るのか?「監督候補」がたくさんいるチームではない上に、最低限の戦力が整わないと外部招聘もハードルが高い。
そして球団は近年組織作りに注力し、指導者に対する講習も行ってきた。当然今後もその路線は継承したいはず。となると内部昇格の方が話は早いが…。それとも渡辺GMが来季以降も監督を務めるのだろうか。
いずれにしろ今季残り98試合、というか来季に向けてどのように戦力を整え、どう戦っていくのか?しばらくは茨の道が続くだろうけど、しっかり見届けていきたい。
そして最後に。稼頭央さん本当にお疲れ様でした。どんな形でもまた笑顔の稼頭央さんと会えることを願っています。まずは文字通りゆっくり休んでください。
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