【ドラゴンクエストユアストーリー】ターゲット迷子の作品だけど、感じたゲームの可能性
みなさん、スクウェアエニックスから再び炎上作品が世に送り出されました。(LeftAlive以来 4か月ぶり2回目)今年のスクエニさんはすごいですね。スタンディングオベーションを贈りたいです。ネット界隈で叩きに叩かれまくっているこの映画を観てきたので感想を書き残しておこうと思います。本筋を知っていることを前提に書くのでネタバレが嫌な人は、ここでお別れしてください…
このnoteではゲームレビューだけを書こうと思っていたのですが、ドラクエというゲームがテーマなので良いよね。
◆そんなにひどい内容だった?
映画の満足度は60~75点位で、特筆して面白くはなかったけれども、つまらなくもないという感じでした。僕がこのレビュー記事で伝えたいのは「そこまで叩く内容ではないのでは?」ということです。
これで作られたゲームがあったら絶対やりたいと思う位、映像のクオリティはとても高かったです。せっかく作ったんだから是非リメイクなり新作に使って下さいお願いします。
本編については特に触れる事はありません。『ドラクエ5の超高速ダイジェスト』でしかなかったから。僕はドラクエ5を自分でクリアしたことはなくて、友達のプレイを後ろで見ていた程度。あらすじを知っていたのでギリギリついてはいけたのだけれど、正直知らない人は置いてけぼりの酷い内容だなとラスト直前まで思っていました。結婚シーン周辺は手厚くゆっくり表現されていたのでダイジェストの中では唯一楽しめました。名曲と言われるBGMを何でもないシーンでも乱発していたのは悪い意味で印象的でした。
◆今回も最も悪いのは売り方
left aliveのときも思ったけどスクエニのマーケティングって炎上商法推奨しているのでしょうか?劣悪なマーケティングによって表立って名前が出るクリエイター達にヘイトが集まる状況を何度作るんですかね。クリエイティブな会社なのに酷い組織ですね。「人生のすべてはドラクエが教えてくれた」みたいな宣伝文句だってこの映画につけたらそら反感買いますよ。
◆誰向けの映画なのか分からないのも問題
正直なところこの作品がどんな人に向けて作られたのか、未だに分かりません。少なくとも『ドラクエが大好きな人』向けでは無かったと感じました。今の状況の原因の大半がそこにありそうです。また、物語の締め方はある程度年齢の高い人でないとポジティブに受け入れるのは難しいだろうなとも思いました。
エンディング以外はドラクエ5をプレイした人でないとついていけない内容だったので、終劇後一番思ったことは「これ誰向けに作ったんだろう?」でした。ドラクエというテーマで一見子供向けでありファン向けであるように見えたのに、実際はドラクエ像に固執しない、ある程度人生経験のある人でないと咀嚼できない内容だったと思います。
◆いつか体験したい未来のゲーム
「あ、これ未来のゲーム体験だわ。」映画終盤でずっと感じていました。
バーチャル空間にダイブして遊ぶゲームを体験していた本作の主人公。彼は実際に遊べばクリアまでに早くても20時間は必要だったゲーム(ドラクエ5)をものの2時間弱で体験していました。特に素晴らしいのは『プレイ中は現実の記憶を一時的に失う』ということ。なんて安直な設定だろう。安直すぎるが故にこんなに真面目に想像することがありませんでした。その設定下でのゲーム体験が、こんなにも期待や希望に満ちたものだとは思っていませんでした。毎回初見プレイなんて最高じゃないか。
記憶を失った自分が体験するバーチャルな人生を想像してください。きっと眠っている間に見る夢と同じ感覚に陥るでしょう。通常時であれば違和感しかない異常な時間軸や体験の数々も、一切疑問に感じることはありません。ゲームは人生であり、現実の人生も一種のゲームです。現実の記憶を切り離し体験するゲームは、現実の人生としてプレイヤーに刻まれることでしょう。不意に夢から現実に引き戻されそうになった彼は、まるで寝ぼけているように現実と夢の区別がつかない状態でした。だからこそ自分の人生を否定するラスボスに必死になって反抗したのでしょう。もしかしたらまだ眠っていたいと駄々をこねただけかもしれませんが…いずれにしてもゲームが終わって『夢』から覚めたとき、どんな体験をしても「ナンダァ夢かあ」で終われる人生って良いなと思いました。帰ってこれなくなりそうだけど。
ここまで映画を観ていた第三者の自分が感じていたおいてけぼり感も、主人公の立場であればないのだろうな、羨ましいなと強く思いました。
ドラクエである必要は全く無いんだけど。
◆歳を取ったからこそ感じるゲームの可能性
「もっと勉強しておけばよかった」に代表される「あの時こうしておけば」という後悔は、多くの人が現実の人生での失敗を体験し感じているものです。もしユアストーリーで描かれたようなシステムがあれば、その体験を自分のものとして経験することだってできる。本来一生に1つしか体験できない人生を短時間にいくつも体験することができる。なんてすばらしいシステムなんだ。実現したらいいのになあと思った。実現性は限りなく無いと承知の上だけれど、ゲームによって人類が何段も上のステージに上れるような可能性を感じました。
現実の記憶があると、どうしても第三者として受け取ってしまう。これはフィクションなのだと。それが排除された世界で体験する『ゲーム』に物凄い可能性を感じませんか?そんなワクワクを感じることができたので、僕にとっては本作の締め方はとても良かった。単なる夢落ちとは違うと思いました。
ドラクエである必要は全く無いんだけど。
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以上が僕のユアストーリーレビューです。これは僕が勝手に解釈しただけで、制作陣が意図したものではないかもしれません。ただ、本作をこんなふうに解釈して僕と同じようにゲームのひとつの可能性に胸ときめかせてくれる人が居てくれたらいいなと、そう思ってこの記事をかきました。最後まで読んでくれてありがとうございました。
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