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視る、刈る、つなぐ、春。
草が芽吹くのをみるのが好きです。
一昨日、近所の市民の方が管理されている花壇を見たのですが、人の手で植えられた園芸植物の隙間がびっしりハコベやホトケノザで緑一色になっていました。
完璧に手入れた花壇では、常に花をつけた苗へと植え替えるので、園芸植物と園芸植物の間には土が見えます。様々な種類の園芸植物を植えることで、その余白をバランス良くなるようにデザインするのが、庭師の仕事なのかもしれません。
一方、活動日が限られている市民花壇は、雑草が顔をだす隙間があります。
それは、庭師からしたらスキを狙われた不覚の現れなのかもしれませんが、私はこの緑でびっしり覆われた花壇が好きです。
こんなふうに書くと、小さな命も大切にする聖人のように見えるかもしれませんが、一方で私が土との交わりで最も「生きている」と感じるのは、草整理と里山整備。人間の求める秩序の境界を越えた命を「刈る」仕事です。
確かに、命を愛でるのは至福です。
一昨日も畑の片付けで、肥料袋の底で身を寄せ合う二匹のナメクジを見てほっこりしましたし、もう少し待とうかな、とまだ固い頭をギュッとつぼめているフキノトウにもグッときました。
けれども、それは人間としてまっとうする他ない生命体としての自分の業を離れる「束の間」の視点。 行けるのは意識だけで、そこで人間として生きられるわけではありません。
他の生命体と自分とが不可分につながっていて、存在する生命全体で一なるもの、個人と個人の間にも、人間と他の生命体にも境界を置かない視点から全体を感じられたとしても、人間として生きる以上、人間が人間としてはたらくためには、その境界は守らなくてはなりません。
一体である視点と、分離し続けるための活動は、表裏一体。どちらか一方では、生命は成り立たないのです。
一体として見がちな自分には、この「刈る」活動は、自分が生命体であることを思い出させてくれる、不可欠な営みだな、と感じています。
鎌や鋸を手に取り、生きている芯を掴んで、グッと引き切るときに感じるワクワクとした生の躍動感。
刈った篠竹の葉を落とし、支柱に仕立てて積んでいくときの充実感。
刈った草を更に細かくし、畝横に並べ終わったときの満足感。
そのワクワクした感じ、ジワーッと広がってエネルギーが放出されていく感じは、その出所を辿っていくと、溜まって一気に噴射するときには破壊的にもなる、「暴力性」と同じです。
それは大病の病み上がり期に、あらゆることへの執着を失い、何をしても怒りを感じず、仏のような気分だったのに、健康が取り戻されると徐々に、生きようとする力、ワクワク、そして怒りが戻ってきたときに気づいたことです。
そのときは、大病の底でずっと瞑想状態になったときにいわゆる行くところまで行った感も得ていたので、これが悟った後の世界の見え方なのか〜、なんて浮ついたことを思っていたのが、とんだ勘違いだったわけです。
生命力と暴力性は地続き。
暴力性は、放出できなかった生命力の現れなんだな、と思いました。
抑圧と暴力がセットなのは、歴史が教えてくれます。個人の人生でも感じたことがない人はいないだろうと思います。
けれども、そのケア方法は「お互い正直になって話し合おう」とか、「ジャーナリングしてみよう」とか、「瞑想してみよう」とか、人の世界に閉じた活動が目立つように感じています。
でも、人間が自然の一部であることを考えるとき、その暴力性でもある生命力って、人間と人間の間に向けられるようにセットされたものなのかと考えると、ちょっと疑問です。
先日竹林の整備で、先端が見えないほど聳え立つ竹を切り落としたのですが、ゆっくりと竹が傾いて、ドーン!と地面に倒れる瞬間は本当に爽快でした。
人間と人間の間で同じ爽快感を得ようと思ったら、とんでもないことになるでしょう。
生きようとする力、ワクワク、抑圧によって暴力へと充填される生命力。
そのエネルギーは、人の間というより、自然と人間の境界を守るためにあるように私には思えるのですが、どうでしょうか?
どんなにあらゆる生命につながりと尊さを感じても、生きている限り、聖人にはなれないことを思い出させてくれる「刈り」。
物理的な距離の問題があるので、呑気すぎる妄想ではありますが、仮に日頃人間界で抑圧されている人がみんなで荒地の草や放置林の竹を刈るようになったなら、メンタルヘルスと里山問題は同時に解決されるのでは?と思ったりしています。
なんて思いながら、今週も春の草を愛でつつ、篠竹刈り。
刈った命は大切に、人間の世界へと、つなげさせていただきます。
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