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バイクのデザインはどのように出来ていくのか?「インダストリアルデザイン」におけるバイク

初めまして!5月からNeoriders Projectに参加しています、伊藤です!
武蔵野美術大学・デザイン系の学科で、インダストリアルデザインコースを専攻しています。

今回は自己紹介を兼ねて、自分の大学で専攻しているインダストリアルデザインについて、そして、バイクのデザインがどのように出来ていくのかについて、自分のこれまでの経験を交えて紹介していこうと思います!

まず、インダストリアルデザインとは?

そもそも一口にデザインといっても、平面のグラフィックや立体(プロダクトやパッケージ、様々な空間)、UI、UX、カラーなど、その分野は多岐にわたります。
もちろん、デザイナーが分野を超えて複数の仕事をする場合がありますが、デザイナーによって得意とする分野などが違います。

インダストリアルデザイナー(=工業デザイナー)は、デザイナーの中でも、大量生産を前提としたプロダクト(製品)をデザインする、基本的にメーカーなど企業の中で働いているデザイナーです!
一般的にデザイナーと聞いて想像する、広告代理店で働くようなデザイナーとは少しイメージが違うかもしれません。

(上段)Dieter Rams TP 1 / 柳宗理 バタフライチェア / Richard Sapper エスプレッソコーヒーメーカー
(下段)YAMAHA YA-1 / TOYOTA 2000GT

バイクをデザインするデザイナーはこのインダストリアルデザイナーに含まれ、もう少し広義なことばで表現すると、プロダクトデザイナーに含まれます。
文具や家具、家電、電子機器、自転車などもこの分野になり、世の中に売られているほとんどのものにはプロダクトデザイナーがデザインを施しています。
僕は今このような、モノを中心とした様々なデザインについて大学で学んでいます!

バイクデザインの流れ

今は技術が発達して様々な機材が介入しているため、バイクデザインのプロセスは様々なものがあると思います。

そこで、今回は一般的にバイクのデザインがどのようにしてできていくのか、僕が去年の夏に参加してきたホンダ・ヤマハ・カワサキ・スズキ・GK Dynamics合同開催の二輪デザイン公開講座でお聞きしたこと普段の授業課題で制作したクレイモデルなども交えて紹介していきます!

1. スケッチ

デザインをする上で、まず最初に始めるのがスケッチです。
デザイナーの中のイメージやアイデアを紙に描き、自分の理想とする形態を探っていきます。近年ではアナログでもデジタルでも行っているようです。

アナログなら紙と鉛筆・色鉛筆・パステルカラー・コピックマーカーなどを用いて、デジタルだとPCや液晶タブレットなどを用いて、何枚も良いアイデアが出るまで描き続けます。

MOTOROiDのスケッチ(上)とその他様々な実際に販売されているバイクのスケッチ(下) (二輪デザイン公開講座より)

既に世に出ているバイクのスケッチや画像から消したり描き足したり、全く新しいバイクをスケッチから描き出したりして、デザインを考案、方向性を決めていきます。
二輪デザイン公開講座では世に放たれた様々なバイクの始まりのスケッチがたくさん飾られていました!

バイクは車や電子機器などと違って、剥き出しになっているパーツが多かったり、人が乗って初めてデザインが完成したり、とにかく描く要素が多くとても難しいと思います!
本当にすごすぎる.....!

<大学の授業課題>

こちらは私が大学の授業で挑戦した、用途や機能を持たない自由な立体を、クレイを用いて美しく造形する課題です!
具体的なプロダクトに落とし込む課題ではありませんが、一つの立体デザインの練習の課題になります。
僕の場合、ニホンジカのツノのもつ緩やかな曲線を参考にして制作してみました!

大学の授業課題、自由形態の初期のスケッチ・図面

完全に持論ですが、動き移動するもののデザインを考える場合、同じく移動する動物はとても参考になると思います。
今回はシカのツノをモチーフに制作したこともあってか、動的なデザインに仕上がりました!

2. クレイモデル

スケッチによって方向性が決まったら、専用の道具を用いてインダストリアルクレイと呼ばれる粘土を図面やスケッチの立体に近づけていきます。

モデリングを専門としているプロモデラーの方が図面やデザイナーのスケッチをもとに立体にしていくことが多いです。
道具はこのようなものを使います。

道具と実際のバイクのクレイモデル(二輪デザイン公開講座より)

<大学の授業課題>

まずスケッチをもとにして手に収まるサイズのクレイモデルを作り、それを図面におこします。
さらにその図面をもとに完成品と同じサイズに拡大しました。

大学の授業課題、自由形態のクレイモデル

私がこの授業で学んだプロセスは、デジタルの技術がまだ進んでいなかった頃の手法になりますが、この図面を起こしたりする作業はとても勉強になりました。

その時代のバイクや車は同じことを実際に販売されているものと同じサイズでやっていたので、そんな血の滲むような努力の末できたデザインだと考えると、また違った見え方がしてきます。

3. モックアップモデル

クレイで造形されていたものをさらに実際の質感や色に近づけます
エンジンなどはついていない場合もありますが、ほぼ売り物と同じ状態のモックアップを作ります。

下の写真の例では、左右で別の色に塗装し、効率よく色を確認しています。

スズキのハヤブサに塗装するカラーの見え方を確認するためのモックアップ(二輪デザイン公開講座より)

CMFデザイン

CMFとは、Color(色) Material(素材) Finishing(表面処理)のこと。

フォルムだけでなく、色や素材、表面処理などのサーフェイスを決定づけます。
このデザイン次第でそのモノを欲しくなったり気に入ったり、購買意欲を高めることにつながります。

近年ではテキスタイルデザイン専攻からこのデザイナーになる学生も多いそうです。
二輪デザイン公開講座にいらっしゃっていたCMFデザイナーの方も学生時代は服飾の勉強をされて、今はバイクのCMFデザインに携わっているそうです。

二輪デザイン公開講座では、「どこで・何をしている・誰なのか」というテーマをそれぞれくじ引きで決め、配色と形、フォントなどを考えました。
そのテーマに沿ったグラフィックをデザイン用のカッティングシートで貼り付け、色を確認します。

二輪デザイン公開講座でのCMFデザインのワークショップ(二輪デザイン公開講座より)
二輪デザイン公開講座でのCMFデザインのワークショップ(二輪デザイン公開講座より)

<大学の授業課題>

今回は石膏でクレイモデルの型を作り、できた型の中にまた石膏を流し込み、石膏モデルを制作しました。

石膏モデルの型取り〜塗装〜完成

この課題では車用品店などで販売されているキズ・へこみ修復用のラッカースプレーで塗装しました。本当は発注してから届くまで数日かかる特注色を使いたかった.....
けど、結果的には良い色でした!

4. 製品として人びとのもとへ

コンセプトモデル「MOTOROiD」(右上)とその他過去に実際に販売されてきたモデル
ホンダ リトルカブ、ヤマハ ビーノ、スズキ GSX1300R Hayabusa、ヤマハ ドラッグスター250、カワサキ Ninja H2R(左上から時計回り)

こうしてデザインされたバイクなどのプロダクトは、工場での量産を経て世に送り出されていきます。
どんなにすごい技術があってもそれが形になって人びとが手にとって使ってもらったり、買ってもらえたりしないと、その真価を発揮できません
デザインというものの持つ力は、そのような部分にあると感じています。

また、私もデザイナーを志す一人の人間として、プロダクトデザイナーという仕事がどのようなものか少しでもわかっていただけたら幸いです!


この記事はNeoriders Projectメンバー、伊藤(@_r_ito)が執筆いたしました。最後まで閲覧いただき本当にありがとうございました!!

Neoriders Projectは今後も、さまざまな切り口でバイクの魅力をお伝えしていきます。ぜひチェックをお願いします!


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