熱中症の画像

恐るべき熱中症

ニュースなどで熱中症についての注意喚起が行われていますが、まさか自分がなんて思うことありませんか。

「今日も暑くなり、30℃を超えるところが多いでしょう。熱中症には十分お気を付けください。」ラジオから聞こえる天気予報を聞き流しながら、朝ご飯の準備を終えたたる子。リビングに行き、ちゃぶ台のような白いテーブルの上に準備したカレーライスを置いた。

・アイスコーヒー

・卵焼き

・マンゴープリン

今日は少し豪華目だわとあぐらをかいて食べ始めた。たる子があぐらを難なくかけるようになったのはつい最近である。それまではテーブルで食事をしていたので、あぐらをかく機会がなかったのである。初めてちゃぶ台のような白いテーブルを人気インテリアショップで購入し、食べたのは1年前だった。

(ちゃぶ台って、どうやって食べるんだっけ?)

これがたる子の最初の感想である。まず座り方が分からない。最初の頃は、三角座りをして食べていた。しかし、とても食べにくいのである。5分もしないうちに坐骨も痛くなってきた。これはいけないと思ったたる子は、まさか使わないだろうと思っていた、お気に入りのぶ厚めクッションを敷いた。アジアン雑貨で奮発して買ったものだったので、少し気が引けたが、インテリアよりも機能性だと実感したものだ。

不思議なことに厚めのクッションの上に三角座りをしていると、当然足裏がだるくなってくる。それを崩したら、自然にあぐらをかいたのだった。(あぐらって、こんな風に生まれたのかもしれない。)それからというもの、クッション&あぐらスタイルで食事をするようになったたる子だった。

その日は、いつになく食が進まない。大好きな香辛料いっぱいの香り高いカレーだったにもかかわらず、飲みこむことすら苦痛に感じてしまうほどだった。なんとかして食べきったたる子だが、どうも脚の感覚がいつもと違う。やっとのことで、あぐらを解きほぐしたたる子、しびれて感覚がないのだった。しばらくそのままにしているとしびれがなくなった。テレビではツボ押しの番組が流れていた。くるぶしから指3本くらいのところにあるツボを押すと朝の不調が改善されるとのことだった。早速足首押すために、久しぶりに自分の足首をみてみた。なんと、靴下上部締め付け部分の毛細血管が紫に浮き出ていた。くるぶし近くの毛細血管は、内出血を起こしており、ぶどう大のような赤紫に丸く変色さえしていた。

(だるい。)たる子は、いつもの朝の不調だと思っていた。しかし、昨日の夜のことを思った時、少し気になることがあった。今まで一晩寝れなかったことはなかったのに、昨日の夜は何度寝返りを打っても寝られなかったのだった。昨晩は汗だくという熱帯夜ではなかったが、30℃くらいはあっただろう。

開け放した窓からは、ゆるい風がなんどもカーテンを小さくゆらしていた。いつのまにか朝になっていた。閉めたカーテンと窓の隙間から、駐車場からでる車が縮小されて天井に映し出される。そんな細長い万華鏡のような光景を目を凝らし眺めながら、妙なハイテンションになっていた。胃から腸にかけて心臓のようなパンピングがある。(あれ、お腹に心臓ってあったのかな?)同じことは大腿部分にも起こっていた。腹部とふとももにも心臓なんてあるわけがない、しかし、その疑問さえリアルに思えるほど体はパンピングしていたし、半分眠っていたのかも知れない。真上を向いて寝ていたが、身体がだるくなったので、横向きになった。うとうとしていたが、しゃっくりともいえない喉からの空気のかたまりが出たと思ったら、心臓が40度くらい一瞬傾き元に戻った気がした。(心臓発作の可能性あり?)しかし、いつまでたっても意識がある。多分、心臓あたりの毛細血管レベルで詰まったものが排出されただけなのだろう。30~40代の女性に多い症状で、大きな血管がつまる動脈硬化まではいかないが、横を向いて寝た時などに毛細血管に何かが詰まり小さな発作が度々起こるそうだ。まるで余震のようだと思ったものだ。この事は最近知ったたる子だった。それまでは、小さなエコノミー症候群のような発作が起こる度に、大昔に健康診断でひっかかった不整脈がひどくなっているのだと小さな恐怖におびえる日々を過ごしていた。

気を取り直して眠ろうとするが、なぜかテンションはますますだるさと共にハイになっていく。だるさがハイテンションを上回った時だった。足のだるさに我慢できずたる子は、タンスの上に足をあげてじっとしていた。干上がった魚のようになっていた。いつものように、ガチガチになった筋肉がひっぱられる痛みはなく、逆にふくらはぎや太腿の筋肉がどこまでも伸びる様な、身体がペランペランになっていく気がした。痒い首に手をあてて掻いてみる。首だけが2周りも太く成っている気がした。さらにポヨポヨしている。多分、甲状腺が腫れだしたのだろう。たる子は日にあたると甲状腺が腫れる傾向があるのだった。だから、あまり驚かなかった。驚いたのはその後だ。まるで、垢すりでもしたかのように、少し首をかきむしっただけで、表皮がポロポロ出てきた。顔も同じことが起っている。表皮がもろくなり始めた。(日焼け止めに当たったかな?)たる子は敏感肌なので、合わない化粧水を使うといつもポロポロと表皮がピーリングする。それにしても今までにないすごい量だ。たる子はどちらかと言えば、几帳面にボディーウォッシュや洗顔はするほうだ。その時は、表皮が皮膚の乾燥で、皮脂が分泌しすぎて剥けすぎていることも気付かずに、軽く面白がってポロポロしていた。

美味しい朝食の後だったのに、一睡もできていない昨晩を思い出し、とにかく目や頭の奥が痛かった。昨日寝られなかったせいだとフツフツ思いながら、横になってみる。やはり体中がパンピングしていて、心臓がいくつもあるようだった。シルクの靴下を履いて寝ていたのだが、新しい窮屈な靴を履いてつま先が靴擦れになったような痛さにも襲われた。(蒸し暑い。)天気予報ではお昼から真夏日になるとは言っていたが、まだ朝の8時前である。なぜか、たる子はメニエール病の原因は耳に蕁麻疹ができるからだという話を思い出していた。たる子は内側の手首から肘にかけて、夕方になると蕁麻疹がよく出ていた。(それが耳にできるなんて。)少しぞっとした瞬間、今の自分の症状もアレルギーなのかもしれないと思い始めた。たる子は意を決して今年初めてエアコンをつけた。設定温度は25度である。面倒だったので、窓は開けたままつけた。試運転だと思っていたからである。できればエアコンを使わず、扇風機だけで夏を乗り切りたかった。実際、今まで扇風機だけで過ごしてきた。

身体に妙な変化がおきてきた。あんなにしんどかっただるさ、筋肉痛のような痛み、身体にいくつも心臓があると思うくらいのパンピングが一気にスッと引いたのだ。さらに、太かった首がすんなりし、モロモロピーリングしていた皮膚もピタッととまった。(もしかして熱中症?)それからはエアコンの効いた部屋で8時間くらい爆睡できた。途中、3時間くらい経過した時に、水分補給のために炭酸水を飲んだが、頭が痛くはきそうになった。(水分を摂取しているのにおかしいな。)続けて眠りについた。起きてからも、頭痛と空の吐き気は続いた。しかし、筋肉痛やこむら帰りや心臓バクバクがなくなったので満足していた。あぐらをかいていた時の筋肉痛や毛細血管の浮き出は、多分たんぱく質が流出したために、軽い血液凝固(エコノミークラス症候群のようなもの)が起っていたのだろう。

ふと、そもそもなぜ昨夜眠れなかったのかと考えてみた。たる子は日差しに弱く、夏場は少し外出するだけで倒れたこともあった。外出先から戻った次の日は、皮膚の中に存在していたホクロがいっぱい出てくる。我ながらこんなにもホクロが多かったのだとびっくりするくらいだ。まるで潮の満ち引きのように現れてくるのだった。そう、クーラーで意識がはっきりしてきた時に思い出す。身体にいくつも心臓があるようなパンピング、夏場の外出からの帰りはいつもそうだったのだ。

そう言えば、昨日は夕方16時くらいから車の運転をしていた。最近、UVカットガラスにしたので、いつもかぶるマスク、サングラスや帽子もしない状態で試運転したのだった。(そんなことくらいで、こうなるんかい?)ショック感がぬぐいきれなかった。結局、3日ほど頭痛や吐き気がおさまるのにかかった。熱中症って、喉が渇いて熱があるだけじゃないんだと実感したたる子だった。自分の体質の弱さを再認識したことは辛いことだが、しんどさの原因が分かったという点においては収穫のある日だった。冷え症や熱中症は寒さや暑さという気温の高低に対してのアレルギー反応かも知れない。今まで冷え症の自覚はあったたる子だが、熱中症という自覚も芽生え対策をしよう身構えたたる子であった。

疲れだと思っていても、実は熱中症だったということもあります。だるさ、吐き気、頭痛、筋肉痛、しびれがクーラーをつけた途端、楽になる場合は熱中症になっていると思ったほうがいいでしょう。

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