作家インタビュー:花田一郎——キャラクターたちと一緒に物語を作っている
すでに作家としてスタートを切っている方々に、作家生活についてのさまざまなお話を聞く「ネオページ・インタビュー」。
今回は、キャラクターたちと一緒に物語を作っていると考える「花田一郎」さんにお話を伺いました。
——まず、自己紹介をお願い致します。
花田一郎 初めまして、花田一郎と申します。
おそらくですが、このインタビューを読んでくださっている方の9割は「この人誰?」と感じてらっしゃると思いますので、私のことは『二次創作小説を書くのが大好きな人』と考えていただければ大丈夫です。
具体的には『溶鉄のマルフーシャ』というゲームとその続編をメインに活動してまして、今も二次創作は継続しております。最初に宣伝っぽくなって申し訳ないのですが、私の二次創作小説も読んでくださると嬉しいです。
——小説家を目指したきっかけは何ですか?執筆活動で影響を受けた作家や作品はありますか?
花田一郎 そもそも私は自分がまだ小説家だとは思っていない(いつかなれたら嬉しいと思います)ので、『小説を書くようになったきっかけ』をお答えいたします。
すでに書いたように私は二次創作が好きでして、絵が描けないことから好きな作品のファンフィクション小説を書き始め、思いのほか読んでくださる方が増えたこともあってずっと書き続けております。
溶鉄のマルフーシャに出会う以前も二次創作はしていましたが、ブランクもかなりありまして、合計だと15年?くらいは書いていると思います。
執筆活動に影響を受けた作品ですが、正直に申し上げますとWeb小説はほぼ読んだことがなくて、そんな中で影響が大きいのは『安達としまむら』です。つまり百合ですね。
アニメや漫画も含めていいなら『やがて君になる』や『桜Trick』の影響が大きいと思います。
百合以外ですと『魔法少女まどか☆マギカ』や『ぼっち・ざ・ろっく』の影響もあります。
そして何より、『溶鉄のマルフーシャ』は私が小説執筆に復帰することになった、間違いなく一番大きな影響を与えてくれた作品です。このゲームに出会わなかったら多分今は小説を書いていなかったと思うので、このゲームを作ってくださったhinyari9先生には感謝の気持ちでいっぱいです。
——これまでにどれくらいの作品を書かれましたか?特におすすめの作品とその理由を教えてください。
花田一郎 実は私、オリジナルはほとんど書いてこなかったんです。なのでオリジナルという意味では現在ネオページ上で掲載させていただいている『魔法少女の反逆』くらいしか紹介できなくて、そうなると必然的におすすめもこれだけになってしまいますね…。
そんな中、二次創作も混ぜていいなら大体90本くらい書いてきました。
そのうち溶鉄のマルフーシャの小説は67本(2024年8月15日現在)、文字数は多分そろそろ合計で100万文字くらい書きまして、一番文字数が多い作品はおよそ18万文字の『その門の向こう側であなたを待っています』となります。文字数が多いだけでなく自分の集大成として書いたので、二次創作でのおすすめはこちらになります。
とにかく『重くて面倒くさく、だからこそ果てしなく美しい女性同士の特別な感情』を全部詰め込んだつもりです。
——作品の魅力を表現するために、通常どのような技法や要素を取り入れていますか?
花田一郎 技法については、全然意識してないです。というよりも勉強したことも一度もなくて、今になってもっとそういうのを勉強したほうがいいのかな…とすこしだけ悩んでいる最中です。
強いて言えば『とにかくキャラが勝手に動いてくれるので、その状況を書き残す』というスタイルで書いています。書く前は大体「うーん、どうしよう」って思うのですが、少し書き始めるとキャラクターが勝手に話し始めていい感じに動いてくれますから、私はそれを観察しながらできるだけ忠実に文字として残しておく…という役割だと思います。
要素については、今はとにかく『百合』でしょうか。
恋愛というのはどんな組み合わせでも繊細で味わい深いと思うのですが、私の中だと百合は『重くて面倒くさい』という認識があり、それが小説の題材として非常に魅力的だと考えています。
女性同士だからこその悩みや葛藤、そもそも恋愛かどうかもわからない強い感情、そういうのは要素として大事にしたいです。
念のために補足しますと、重くて面倒くさいというのは最大限の褒め言葉です。
——今回の連載新作で、読者に特に注目してほしい点は何ですか?
花田一郎 魔法少女の反逆ですが、こちらは私の好きなものをできるだけ盛り込みながら書いています。つまり百合ですね。
ただ、これまで書いてきた作品に比べるとバトル要素が強くなってまして、それに四苦八苦しつつも戦う少女たちを書くのは楽しいですから、そういう部分を見てもらえると嬉しいです。
それとしつこいようですが、溶鉄のマルフーシャに影響を受けた私らしくディストピア要素を盛り込んでおります。
これは『厳しい環境の中でも自分を見失わずに強く生きる少女たちの美しさ』を描くには最適だと思っておりますので、そういった点も是非注目してください。
——この小説の番外編である『魔法少女の反逆 ~番外編!~』も執筆されていますが、その背景にはどのような考えや意図があったのでしょうか?
花田一郎 まず、私自身にまったく知名度がありませんので、少しでも露出を増やしたかったというのがあります。
今は本編共々あまり注目はされていないのを理解していますが、それでもエピソードは多いほどいつかは誰かに見てもらえるかな…と期待しています。
ただ、それ以上に大きいのは『本編の制約下にない自由なエピソードを書きたい』という衝動でした。
本編はWeb小説らしい展開が求められますので、どうしても日常的な些細なエピソードは盛り込めなくなります。ただし、そのおかげでテンポの良さが維持できます。
一方でそういう日常的なシーンを通じて少しでもキャラクターたちの魅力が伝わり、いわゆる『推しキャラ』を見つけてもらえたら…と考えております。それと私は登場人物たちを相棒やパートナーに見立てて一緒に話を作っていると考えておりますので、書けば書くほど愛着が湧いた結果、「もっとみんなといろんなものを見に行きたい」と考えて番外編を書いています。
本編をご覧になった方は、是非読んでみてください。番外編はとくに『私が大好きなもの』を詰め込んでいます。
——初期に「ネオページ」とやり取りをしていた際、どのように感じていましたか?
花田一郎 すごく失礼を承知で申し上げるなら、詐欺の可能性も疑ってました。本当にすみません。
理由としては「なんで無名の私にこんな話が?」としか思えなくて、その一方で小説を書く人間としてはやっぱり魅力的だから、とりあえず個人情報が犠牲にならない範囲であれば…みたいな感じでお話を伺ってました。本当にすみません…。
ただ、お話を聞いていると私のような無名の人間にも丁寧に対応してくださったので、比較的早く警戒はなくなっていたと考えております。
インターネットの広大な海から私のような小さな存在を見つけてくださった皆様に、この場を借りてお礼申し上げます。
——「ネオページ」と契約する決め手となったものは何ですか?
花田一郎 私は二次創作メインで活動していましたが、それでも小説のお仕事をしたいという気持ちはどこかにあったと思うので、それを叶えられるかもしれないという期待がありました。
もちろん現実はそこまで簡単ではないですし、本業にできる可能性は今もかなり低いとは思っています。
ただ、作家に寄り添いたいというお気持ちは早い段階から伝わってきましたので、私にできることで新しい一歩を踏み出すべく契約させていただきました。
——契約した現在、「ネオページ」との契約の形についてどう評価していますか?もし以前に不安に感じていた点があれば、現在はどのように感じていますか?
花田一郎 私はプロの小説家ではないので相場などもわからないのですが、特に大きな不満はありません。
むしろ契約に際してこれでもかと質問させていただいたのですが、すべてにきっちりと答えていただき、たくさん配慮していただきました。
正直に申し上げますと、やっぱり「なんで私みたいな無名の人間にもここまで根気強く付き合ってくれるんだろう…」と不思議に思っていたくらいですね…。
不安な点というか、以前教えていただいたプライバシーポリシーや契約内容に不明瞭な部分や不安な部分があったのですが、こちらは本契約に際してかなり細かく修正されていたり、あるいはわかりやすく変更されていたりしてましたので、編集部の皆様のフットワークは相当軽く柔軟だと思っております。
——執筆中に直面する主な悩みや課題は何ですか?逆に、最も楽しいと感じる瞬間はいつですか?
花田一郎 悩みや課題についてですが、「どうすればもっと読んでもらえるか?」だと考えております。
現在連載させていただいている小説もそうですが、私は『人気のある流行ジャンル』にほぼ興味がないので、基本的には読んでもらえるチャンスが少ないです。
だからといって興味がない作品の世界やキャラクターに愛情を持つこともできないので、このあたりにどう向き合っていくかが大事だと思っています。
楽しい瞬間については、今は『自分の好きなキャラクター同士が百合百合しているシーンを書くとき』ですね。魔法少女の反逆本編は現時点でそういうのは控えめなのですが、番外編でその辺はカバーしていけたらなぁ…と思っています。
ただ、どんな小説でも『いきいきとキャラクターが動いているとき』は書いていて本当に楽しいです。本編でも徐々にキャラクターが増えて世界が広がっていますので、書き進めるほど楽しくなっています。
——「ネオページ」からどのような支援を期待していますか?現在、「ネオページ」の編集者との交流で感じていることは何ですか?
花田一郎 支援ですが、個人的な要望で言えば『ジャンル関係なく露出の機会がもらえること』でしょうか?
先ほども書きましたが、私の作品は流行ジャンルからはほど遠い要素で構成されていますので、Web小説の主流作品以外もプッシュしていただけると嬉しいです。
それと編集者様との交流ですが、こちらは本当にありがたいです。
これまで一人で好き勝手書いてきたのですが、編集視点でのご意見は『自分が読めたらそれでいいという部分を指摘してもらえている』と感じております。
そもそも私は『連載前に最初に提示してもらったテーマを速攻で拒否した』という背景があったのですが、その際も怒られるどころかすごく親身に、それでいて『少しでも私が楽しく書ける題材』を提示してくださって、あたらめて今の連載が奇跡的なスタートだったと思っております。
何度お礼を伝えても足りません。
——一日のうち、どれくらいの時間を執筆に割いていますか?「ネオページ」の契約作家になってから、日常生活と執筆活動のバランスはどのように取っていますか?
花田一郎 私は専業作家ではないので、今は1日2時間くらいでしょうか。Web小説は1話あたりが短いので、1日1話を目安に進めている感じです。
契約作家になってからですが、まずは魔法少女の反逆を書いて、その後に別の仕事を済ませる…というスタイルが多いです。
なので小説執筆以外の時間を少し削って割り当てていますが、そこまで無理はしておりません。調子がよければ1話あたり1時間以内に終わりますしね。
——周囲に執筆活動を支えてくれる、または応援してくれる人はいますか?応援してくれるファンに向けてどのような言葉を贈りたいですか?
花田一郎 驚きのことに、私にも応援してくださる方はいらっしゃいます。
実は私はFANBOXにてご支援の募集をさせていただいているのですが、そちらにて1年以上継続して支援してくださる方もいらっしゃいまして、本当にありがたくて何度も泣きそうになりました。
もちろんそうした場所以外でもたくさんのお褒めの言葉をいただいたり、家族に支えてもらったりしてまして、完全に一人だとここまで楽しくかけていなかったと思います。
今一度、私を支え続けてくださる皆様に心より感謝いたします。
本当にありがとうございます!
——今後どのような作品に挑戦したいと考えていますか?
花田一郎 実は私は異世界ものやファンタジーものにはあんまり興味がないので、できれば現実世界ジャンルに挑戦したい…と考えております。
もしくは、よりディストピア要素を押し出したSF?(SFの定義には詳しくないんです。すみません)に挑戦したいとも思っています。
どんなものを書くにせよ、とにかく百合を極めたいと強く考えております。
どうしても異世界ものを書く場合、一応は百合要素が強い作品のアイディアもあります。ただ、こちらは日の目を見ることがないかもしれません…。
総じて、『一般的に主流じゃないものを書きたい』と考えていただければと思います。ひねくれてますね。
——小説家としての活動で達成したい目標は何ですか?今回の契約がどのような影響を与えたと思いますか?
花田一郎 まずは『魔法少女の反逆を完成させる』に尽きます。私の初の商業連載作品なので、堅実に完結に向けて日々努力します。
そして可能であれば、小説を本格的に仕事にしたい…と思っています。
ただ、そうなると流行ジャンルに興味がないのは大きなハンデなので、先行きは不透明だとも自覚しています。
それでも『好きなことで人を楽しませつつそれを仕事にする』のは最終的な目標にしたいです。
今回の契約はそうした夢を叶える大きな一歩だと思いますので、改めて今回のお仕事に関わってくださった皆様、そして応援してくださる皆様に感謝申し上げます。
——「ネオページ」の今後の発展に対してどのような期待を抱いていますか?
花田一郎 Web小説の掲載サイトは多く、後発組にとっては険しい道のりかもしれません。
ただ、ネオページ編集部の皆様はフットワークが軽く作家の方々に真摯に寄り添ってくださっていますから、そうした方針を大事にしたまま大きくなって欲しいです。
そして可能であれば、私のような『流行ジャンルに興味を持たない作家でも活躍できるサイト』になってもらいたいです。そのためにも、私は私の方針で少しでもお力になれたら、と考えております。
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