読書記録#013 AI監獄ウイグル(ジェフリー・ケイン 著)
今日は、ビジネス書ではなく衝撃のルポタージュをご紹介します。
1.概要紹介
ニュースで耳にしたことがある「新疆ウイグル自治区」。
新疆ウイグル自治区にて強制労働で生産された綿花を利用したユニクロ製シャツがアメリカで税関で差し止め、とか、新疆では中国政府によって深刻な人権侵害が行われている、とか、断片的な情報は聞いたことがあるものの、実際に何か起こっているのかはあまり知られていないと思います。
本書は、中国政府が新疆ウイグル自治区で行っている人権侵害やジェノサイド(民族大虐殺)について、当事者であるウイグル人少女への取材を通して明らかになった衝撃の事実が綴られています。
2.どんな人に読んでほしい?
新疆ウイグル自治区で起きていることをよく知らない人
3.本から得た学び・エッセンス
新疆ウイグル自治区の弾圧に至る経緯は以下の通り。
地の利(石油)によるウイグル繁栄
→中国政府による搾取
→ウイグル人暴動
→「テロ対策」としての監視と支配
この「監視と支配」の手段として、デジタルやリアルによる行動監視、AI予測による危険因子抽出、再教育(という名の監禁)、強制労働が強いられ、それが激化している。
中国政府は、ウイグル人が持つ「心のウイルス」を矯正するという名目で弾圧を続ける。「心のウイルス」とは、①テロリズム、②分離主義(中国からのウイグル独立志向)、③ウイグル人が進行するイスラム教の宗教的過激主義の3つとしている。
ファーウェイをはじめとする中国のテクノロジー企業は、「民間企業」との建て付けながら、もはや国家機関に成り代わり、AI技術・スマートシティ技術を他国の独裁政権に提供して外貨を獲得している。
4.さいごに
第一の感想は、主人公のウイグル人少女も著者のジェフリー・ケインも無事でこの本が出版できたことに安堵した、ということ。物語ではなく、ルポタージュであるがゆえに、緊張感の伴う読書体験でした。
ウイグル人強制労働、米のファーウェイ排除等、断片的には知っていたものの、これほど酷いことが現代に行われているなんて考えも及ばなかったです。AIなどのテクノロジーが悪用されるとここまでのディストピアが形成されると知ると、ゾッとします。厚い本ですが、あまりの衝撃内容にどんどん読み進められました。興味のある方は、ぜひ。
読了日:2022/6/5