My favorite things〜私のお気に入り〜SHOWA (1)3枚のレコード

 私の生まれ育った、昭和年代。その時代に誕生した映画、音楽、本に関して「私の好きなもの」を記していきたい。

 個人的な嗜好なので、ぜひ、見聞き・拝読して欲しいと推薦するものではない。ただ、世間的にも評価されているものも多々あるので、もし、未見・未聴・未読があって、本稿から少しでも興味を惹かれ、観たり聴いたり読んだりする機会を持っていただければ、幸いだ。

 最初は「3枚のレコード」と題した。昔からの「好きな音楽は何?」の例え話で「もし、無人島に持っていけるレコードを選ぶなら」の問いへの答えだ。もっとも、無人島でレコードを聴くなら、レコードプレーヤー、そして電源も必要となる。まあ、野暮な詮索は無しにて、自分にとってのベスト・アルバム(オンデマンド時代の今、レコードはおろか、CDも旧態然としてるので一般呼称として)3枚を選んでみた。

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最初の一枚は、言わずと知れたビートルズの名アルバム「SGT〜サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド(1967/昭和42年)」。今こそ、自他ともに認める熱狂的なビートルズ・マニアであるが、実は、「サージェント〜」を手にする前は、喰わず嫌いどころか、ほとんど無視していた。来日の際の、女子たちの異様な熱狂に辟易していたせいもある。それが、友人から「これ、凄いよ! 聴いてみて」と渡された「SGT〜」を、聴いて、文字通りブッ飛んだ!   

当時、レコードは主にシングル版(ドーナツ版とも呼ばれていた)、LP版(今日でいうところのアルバム)があった。LP版は、正直、シングルにならなかった凡作が集められ、それにシングルのヒット曲が数曲追加させられたものが大多数だった。ところが、「SGT〜」は違っていた。冒頭から、コンサート会場の音が入り「これはライブ?」と錯覚させる。続けて聴いていくと、ライブでは無いのが分り、また、音楽自体も単にロックというより、幅広い音楽ジャンルを聴かせてくれる。アルバム全体を意図して作りあげたものとして、後に「トータル・アルバム」呼ばれていくのだか、そんなことも知らず、最後の「ア・デイ・イン・ザ・ライフ」(観客のガヤ音も)を聴き終え、まさに呆然自失した。

その後、レコードを友人に返して、その足でレコード店に向かい「SGT〜」をなけなしの小遣いをはたいて、購入した。当時、LPレコードは2000円して、今の物価から比較すると1万数千円相当もする贅沢な高級品だった。そこで、朝から晩まで(親からはボリュームを下げろと何度も言われ)聴き続けた。最後には、レコードがすり減り、聴けなくなるまでだ。このデジタル時代から思えば、なんとも幼気ないことだが、あの時期、あの時代であればこその体験だったと記憶している。

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その次の一枚は、これまた名作中の名作の誉れ高い、ピンク・フロイドの「狂気(1973/昭和48年)」。ピンク・フロイドの名前を知ったのは、映画『砂丘(1970)』で、彼らの楽曲が流れるラストシーンの映像と音楽の美しさのコラボに魅せられた。早速、レコードを購入した。それが「原子心母1970/昭和45年)」で、「SGT〜」とは別の衝撃を受けた。クラシック音楽とロックとの融合。当時、すでにムーディー・ブルースなど先駆者もいたが、それでも、斬新な音楽として聴いた。そして「狂気」となる。これは、もう「別次元の音楽」としか思えなかった。正直、「原子心母」など、今、聴くとやや荒削りで、古臭ささえ感じてしまう。それが「狂気」はどうだろう。古くさどころが、非の付けようない、音に満ちている。

そして、聴くたびに、歌詞に込めた「現代人の疎外感と孤独」が胸に突き刺さる。「タイム」から「虚空のスキャット」のくだり、ふと都会で孤独を感じた時に無性に聴きたくなり、iPhoneに入れた曲を再生して聴いている。

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 さて、もう一枚は、スティービー・ワンダーの「シークレット・オブ・ライフ(1976/昭和51年)」だ。こちらは「狂気」とは反対に、気分良い時、癒しが欲しい時に聴いている。無論、スティービーには、名曲が多々あり、このアルバム全てが名曲揃いとは言えないかもしれない。しかし、全体を聴いたあと、不思議な幸福感に包まれる。それは、スティービーが、このアルバムに込めた、平和や隣人への愛といったメッセージにあると思う。

さて、無人島に持ち込みたい、アルバム3枚。実は、これら、いずれもAmazon musicにて聴くことができる。なんと凄い時代になったのだろう。まあ、その分、有り難みも薄れているかもしれないが… 今宵も、これら3枚を気兼ねなく聴いていこう。


      



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