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臓器も骨髄も角膜も血液も~25歳 ボーナスと一緒に生肉が配られる会社~

■25歳 今から25年前
ミラクルでファンタジーでミステリーな体験からこの会社に来て、そろそろ1年がたつ。

新入社員が私たった一人だけというのはさみしいものである。
しかし、みんなの愛情を独り占めできるのもこれまた特権である。

だがしかし、翌年、新入社員が3人入ってきたではないか。
男子1名、女子2名。

男子は、名前の漢字を尋ねたら、「リュウタ」のリュウの字を
「ウーロン茶のロンです!」
と元気よく答えていた。

わかりやすいような。わかりづらいような。

そんな新入社員。
私でさえかわいく思うのだから、一気に注がれていたほかの先輩方の私への愛情は、その3人に少しずつ流れてゆくのは当然である。

なんだか急にさみしくなってきた。
人ってさみしくなると考えることがいろいろ出てくる。
本当にやりたかったこと、とか、とか、とか。

何度も言うが、私は中学の頃からCMが作りたかった。

そのことを父は
「そんなにその仕事に就きたいのに今現在就けていない。
それは縁がなかった、という事だ」
といった。

いや、違う。
縁がないのではなくて、私がその縁に出向いて行っていないからだ!!
と、私は思った。
強く。

というわけで、なぜかそのことを東京本部で一番偉い本部長に相談してみようと思う。それほんとはダメだけど。

その本部長は「四角い仁鶴がまぁーるくおさめまっせぇ」の仁鶴師匠に似ている。そして私と同じくらいのお嬢さんがいる。
なので、私のことを娘のようにかわいがってくれていて、いろんな所に連れて行ってくれた。

職場が銀座だったので、おいしいお店はたくさんある。
ふぐを生まれて初めて食べたのも、
松茸の土瓶蒸しを食べたのも、
カウンターでおまかせでお寿司を食べたのだって、
全部本部長に連れて行ってもらった。

本当に父親のようだ。

私だけではなく、社員のみんなも本部長を慕っていた。

うちの会社は冬のボーナスは現金で支給される。
その現金は、なんと新入社員の私が大きな袋を担いで銀行におろしに行くのである。

もちろんその時は、いつものようにチャリでふらぁ~っと行くのではなく、運転手付きの社用車に乗って行くのだ。当時は携帯もそんなに普及してなかったから、電話付きの社用車に乗ってお出かけなんて、なんだか偉くなった気分だ。ちなみに運転手はめっちゃマッチョなおじいさんだ。

で、会社に戻るとサンタクロースのようにたんまり現金の入った布袋を、マッチョなおじいさんと二人で担ぎ、役員室へ直行である。

この作業中は誰も見てはならず、入ってはならず、鶴の恩返し状態だ。
秘密の部屋と化したこの役員室で、総務部の課長とふたり、
いちまぁ~い、にまぁ~いと現金の仕分けである。

まず、床にばぁ~っと個人名の書かれた封筒を並べる。
わお、毛筆で書かれている。
まるで決闘書のようだ。

その上にそれぞれの金額に応じた現金をおいてゆくのだ。

封入後、封筒が立つ人もいれば、倒れちゃうくらいの人ももちろんいる。
まぁ、この時に上司のボーナスの金額を知って、
「え~あんなに上の役職になってもこれだけなのか~」
とショックを受けて、のちのち、同じ会社に勤める旦那様に転職をすすめることになるのだが。

で、本部長からこの現金の入った決闘書のような封筒を「お疲れ様」と渡される。
そうすると、どうなるか。

そう、
お父さんたち喜んで、帰りにその大金で飲みに行ってしまう。

当然の流れである。

そこでだ。

生肉ですよ。

現金と一緒に、すき焼きセットが配布されるシステムになったのである。

生の「高級すき焼き用肉(野菜付き)」を渡せば、
お肉が悪くならないうちに家に帰らなければならない。
そして、さあ!!家族みんなですき焼きを囲むがよい!!!

という趣旨らしい。

とはいえ、一緒に食べる家族のいる人はいい。
独身一人暮らしはどーするんじゃい!
ってことで、ここで「四角い仁鶴がまぁーるくおさめまっせぇ」の本部長登場である。

大阪が本社のうちの会社。
本部長は大阪から単身赴任で来ているのである。
そしてその社宅は銀座から歩いていける距離。すてき。

と言うわけで、ボーナスが支給された日は、

本部長の単身赴任の社宅で、
いただいたお肉と野菜を持ち寄って、
みんなですき焼きパーティー!!
ドンドン!!パフパフ!!

が恒例なのである。

なんか、こうなると家族のもとに帰る人の方がさみしいんじゃないかって気がしないでもないが。

話を戻そう。
そんなみんな大好き本部長。
その本部長に「CMが作りたいです。」と言ってみたところ
なななんと、

「大阪のクリエイティブではTV-CM作っとるで。
ほな大阪いくか?」

えーーーー

大阪?!
さぁ、どーする?

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