Cadre話譚:不浄の証(1)
古来よりこの世では奇怪な病が蔓延っていた。
肌が黒い痣で染まっていくというものだ。
その痣がある者は見えない何か、"シャドウ"が見えるようになる。
シャドウによって死ぬか、黒く染まって怪物化…俗に言う「シャドウ化」するのか。
何も出来ない人々はそれを待つのみだった。
そんなある日、港口世界"ポータル"にて、
怪物化した者達が自我を失って暴れ回る中で、ある男2人が戦っていた。
2人は四芒星のシンボルマークがついた腕章を着けていた。
世界を股に掛ける特殊機動部隊"チームIF"だ。
1人は剣士のラルス。
青緑に光る目で動きを捉え、走りながら目にも止まらぬ速さで剣を振るう。
そして動きを止めると斬られた者から、まるで花が咲いたようにブシャアと黒い液体が飛び散り、
そのまま倒れた。
もう1人は機械仕掛けのエルバート。
片手を拳銃に変形させ、
何故か壁や地面を狙って撃っていた。
しかし不思議な事にその場が蜂の巣にならず、跳弾もせず。
何も無い場所から黒い塵が飛ぶばかりだった。
そして数十分程してから、剣と銃を収めた。
怪物を倒し終わったらしい。
エルバートは人々に向かって
「バケモノ共の掃除、終了したからなー!」
と呼びかけてきた。
人々は最初は唖然としていたが、わあああああと歓声を上げた。
しかし、ラルスは人々に目もくれず
自分で斬り倒した人達と周囲をじっくり見回して、
「この地区…感染者がやけに多い。」と呟く。
そしてエルバートを引き連れてそのまま真っ直ぐと、
細い路地へ向かっていった。
…彼らには、この世界がどう見えているのだろう。