ネオ・ディグ・モード vol.21 「ヴォートレイト(VAUTRAIT)」
東京を拠点にフリーランスで海外ブランドのPRをしている𝐡𝐢𝐫𝐨𝐤𝐨が、気になる海外ブランドを深堀りする新連載!
私が2023年元日からvol.110まで公開した「ディグ・モード」のリニューアル版です。
vol.21は、ヴォートレイト(VAUTRAIT)!
2024年度LVMHプライズのセミファイナリストに選ばれた、ヴォートレイト。そのエレガントなデザインに興味を持ちました。
ヴォートレイトってどんなブランド?
ヴォートレイトは、ヨナサン・カーメル(Yonathan Carmel)が2021年に立ち上げた、イスラエル拠点のブランド。
ブランド名は、ヨナサンの先祖の名前から付けられています。
この記事では、デザイナーのバックグラウンドにスポットを当てながら、デザインのインスピレーション源についても深掘りしていきます。
イスラエル軍で見つけた写真がきっかけ
フランス人の父とイスラエル人の母の間に生まれたヨナサンは、写真が大好きです。彼は最初、ファッション業界で働くとは思ってもいませんでした。
ファッション業界で働きたいと思ったのは、彼がイスラエル軍に所属していた頃。
2018年、ヨナサンはフォトグラファーとしてイスラエル軍に入隊。義務のため、2年8か月ほど勤務しました。
写真を撮る目的でガザの戦場に派遣され、トラウマになったヨナサン。彼は軍のやり方に強く反対していました。
どうにか、軍の新聞社にグラフィックデザイナーとして異動。そこで、コンピューターグラフィックを習得しました。
コンピュータの前に長時間座っていたヨナサンは、Pinterestで写真を見るように。
そのとき見つけた写真が、ファッション業界で働くきっかけになりました。
衣服の品質は構造から生まれる
ヨナサンがPinterestで見つけた中で、印象的だったのはニック・ナイト(Nick Knight)が撮った写真です。
ニック・ナイトはイギリスのファッション フォトグラファーで、ヨナサンは彼の写真に心を揺さぶられました。
とくに印象に残ったのは、山本耀司とタバコを吸っている女の子を撮影した写真です。
その写真を見て、「この世界の一員になりたい」と感じたヨナサン。
それをきっかけに、本当は禁止されていましたが、秘密でファッションのコースを受け始めました。
軍の新聞社は、夕方には帰宅できたため、17時から19時の間に受講。
コースを修了した後は、モデルメーカーと一緒に仕事をし、新しいテクニックを習得しました。たとえば、衣服の「脱構築」のテクニックです。
「3Dの衣服を作りたいなら、内部構造をマスターしなければならない」と気づいたヨナサン。
構造こそが実は最も重要な部分で、衣服の品質はそこから生まれる、と彼は考えています。
一見シンプルなものが好き
学生時代、ヨナサンはロンドンに住んでいたことがあります。そこでインターンをしたデザイナーが、彼にとって最初のインスピレーション源です。
彼女はロニ・イラン(Roni Ilan)というイスラエル人で、彼女のファッションはとてもミニマル。
ヨナサンは、ニュートラルな色調、一見シンプルに見えるものを好んでいます。
彼が好きなブランドは、ザ ロウ(THE ROW)のようなミニマルなブランド全般。
その一方で、ダナ キャラン(DONNA KARAN)やカルバン クライン(CALVIN KLEIN)のような90年代のアメリカのブランドも好きです。
彼は、これらすべてが交差したところに、自分の世界が存在していると感じています。
頭より手を動かしてデザイン
ヨナサンは、頭より手を動かすタイプ。デザインのインスピレーションは、手を動かしているときに自然と浮かんでくるものです。
また、ストリートにいる人々もインスピレーション源となっています。
ストリートで、人々の写真をたくさん撮るヨナサン。
ファッション業界の人よりも、リアルな人からインスピレーションを得る方が、彼にとってずっと面白く、本物です。
気になったらチェックしてみて!