「RUDDERLESS」「君が生きた証」映画レビュー
◆「RUDDERLESS」「君が生きた証」
◆ 2014年10月17日 アメリカ
◆ UーNEXT
難しい題材でした★★★★☆
あらすじ💫
広告代理店に務めるやり手営業マンのサム。離婚した元妻との間には一人息子のジョシュアがいたが、大学での銃乱射事件で失ってしまう。
自暴自棄になったサムは、お酒に逃げ、職も失って海沿いの街で肉体労働をしながらボート暮らしをしていた。
2年後、元妻が息子の遺品を整理し彼のもとを訪れる。息子はギター好きなサムの影響で作曲をしており大量の曲をCDに遺していたのだった。曲を聴き口ずさみながら少しづつ息子のことを想うサム。ある日街のライブバーで歌ってみたところ、一人の若者から声をかけられる。クエンティンと名乗る若者は、彼の曲に感銘を受け一緒に歌ってみたいと言い出す。彼の熱意に負け一緒に舞台に立つサム。やがてドラムとベースも加わり彼らの曲はライブバーで大人気を博していくのだった。
演技派俳優ウイリアムHマーシーが制作、監督した作品。
<ネタバレあり>
初めはお涙頂戴のストーリー展開なのかと思いきや、なんともいえない展開に。
息子の事件の場面が淡々と描かれ、それだけに家族や周りへの打撃の大きさを伺わせ彼の人生から全てその記憶を消し去りたい辛さを表現されている。
親子の絆、葛藤、断絶、色々な形があるが彼らのそれはあまりにも非常で無惨でつらい物だったのだ。別れた妻から「逃げるな」と言われながらも耳を塞ぐサム。
そんな彼が息子の音楽を通して若者たちと交流し、彼らの熱さと才能に触れ浄化され少しだけ前向きになっていくのだが、息子の犯した罪が晒される時彼の現実が目の前に長い長い航海となって現れてくる。
ラスト、一人となってアコースティックギター1本で歌うサム。息子の名前と彼の罪とを観客に伝え、それでも私の息子であると歌う姿。若者たちは未来へ向かい、彼はもう逃げずに息子と共に生きていく静かな決意を感じさせる。
原題は「RUDDERLESS」舵のない(船)という意味なので、サムのボート生活とこれからの長い人生(航海)が暗示されている。サムのこれからの人生が少しでも穏やかにゴールに辿り着けるように祈る気持ちになったラストでした。
よい作品でした。
相棒とも言えるクエンティン役を演じたアントン・イエルティンはなんとこの後27歳という若さて事故死されていました。しかも元々かなり珍しい難病に犯されていたとか。非常に繊細で澄んだ若者を素晴らしく演じていたのでとても残念です。
RIP 💫