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ただそこに在る

家の近所を散歩すると桜が咲いている。鳥のさえずりも聞こえる。天気は雲一つない晴れで空は淡く青く、遠くの山は鮮明に見える。空気は澄んでいてとてもおいしい。平和な気持ちになる。今の日本の現状は嘘なんじゃないか、そう勘違いさせられるほどに自然はただそこにどっしりと在る。自然からするとそんな大した問題じゃないのだろうか。いや、人間に分からないだけで自然も何かしらの変化に悩まされているのだろうか。そんな答えのない想像をしたりする。

僕は人間だから世界中の人間が今の事態にパニックになっているのは分かる。自分自身も毎日不安だ。自分もいつか感染者になるのか、それを誰かに移してしまわないか。そういう不安は心のどこかしらに常にある。みんなもそうかもしれない。

今日も日本の会社員たちはスーツを着て駅へ向かう。駅はいつものように混み合い、何本もの満員電車が行き交う。それをみるとまた今の日本の現状は嘘なんじゃないかと思ったりする。普段からある日常の風景。あるところはとても日常的で、あるところはとても非日常的だ。そんな空間がごちゃ混ぜになった世界にいる。

今、自分は何が出来るだろう。ふと思う。したいことはたくさんある。でもうまくできない。そういった自分がただそこに在るだけだ。

あと1ヶ月も経つと桜は散る。ただそこに在った景色は突如として消え、変化していく。今の世界もそうかもしれない。この現状もいつかは消え、また新たな景色が現れる。この現状を前にただ時を過ごすのではなく、どっしりとそこに在ること。そうして来年の桜を清々しく眺めたいと思う。

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